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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第35章

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2103/2150

第2103話「空からの警鐘」

 〈龍骸の封林〉上空。高度2,000m。

 二機の特大機装〈カグツチ〉が青空の広さを悠々と泳ぐように旋回していた。

 眼下には切り開かれたフィールドがあり、毒沼地帯でネズミの大群と格闘している〈ゴーレム教団〉の男たちの姿もくっきりと捉えることができる。


「かーっ、俺もあん中に飛び込んで、景気良くネズミに機関砲をお見舞いしてやりたいね!」


 航空用に独自の発展を遂げた特殊なカグツチは、軽量化のため極限まで肉抜きされた流線型のシルエットで、燕尾服のように後方に向かって伸びるブレードのような羽根が特徴的だ。機体中央部にて肋骨に包まれるような形で固定され、カグツチを()()している調査開拓員の一人が、暇にかまけて悪態をつく。


「まあそう言うなよ。こうやってフラフラしてるだけで給料が出るんだから、割のいい仕事だろ」


 同型の飛行型カグツチを駆る彼の相棒が、また始まったよと肩をすくめる。

 彼らは非常に操作難易度の高い飛行用カグツチの操縦に熟した優秀なパイロットだった。空を飛ぶものといえば7割の確率で墜落する戦闘機か、巨大なジェネレーターを複数積み込んで暴力的な出力で無理やり()()大型輸送機、もしくは調査開拓員を砲弾とする人間大砲くらい、という現状において、彼らは絶対的なアドバンテージを持っていた。

 すなわち、上空からの偵察と戦況の監視である。

 空のはるか上には通信監視衛星群ツクヨミが無数の目で見下ろしているとはいえ、そのデータにアクセスするには様々な手間やコストがかかる。そんななかで飛行型カグツチはまさしく革命的な存在であった。


「ラッキーなことに飛んでくるエネミーもいないみたいだしな。俺たちに任されてるのは実況中継だけだ。変な色気を出して墜落でもしたら、目も当てられねえぞ」

「んなこと分かってるさ。とはいえただ飛んでるだけってのも退屈に殺されるぜ」


 二人は〈大鷲の騎士団〉に協力し、今回の大規模作戦にも参加していた。課せられた役割は天の眼であり、安全かつ文字通り戦況を俯瞰できる位置から情報を送ることで、全体指揮の効率をあげるのが目的だ。

 現在も時折入る〈大鷲の騎士団〉の連絡員からの通信に答えながら、2000m下方で繰り広げられている戦闘をのんびりと見下ろしている。

 貴重な飛行型カグツチパイロットである二人は、その単純な仕事だけでかなり破格の報酬が約束されている。これほど楽に稼げることはない、と一人は思い切った投資の成功を噛み締めているところだった。


「ま、今回ばかりは空にいてよかったな。ハゲになってたら目も当てられない」

「むしろ空気抵抗と重量が減らせていいじゃないか。はっはっはっ」


 地上の戦闘員たちを襲った惨い仕打ちも彼らはずっと見ていた。流石に2,000mの距離を肉眼で見るには骨が折れるため、二人ともゴーグル型の望遠レンズを装着していた。

 〈ゴーレム教団〉が窮地を救い、戦線をぐんぐんと押し上げているところまでを見届けて、二人もまた安穏とした時間に戻っていたところだ。


「うん?」


 不意に、男は頭上が陰ったことに首を傾げる。彼らははるか上空におり、太陽の光を遮るものなどないはずだ。違和感を抱いて顔をあげた彼の目の前に、はらりと白い羽が落ちる。


「なん――」

「危ないっ!」


 なおも漫然と思考を麻痺させる男に、相棒が突っ込んだ。二機のカグツチが正面衝突し、薄い装甲が歪む。何をするんだ、と男が抗議しようと口を開きかけたその時、彼らよりも更に上空から白い翼が急降下した。


『びゅーーーーんっ!』

『ん、風の如く』


 真っ直ぐに蒼穹を駆ける天使がふたり。

 何か巨大な黒鉄の円筒を抱えたトヨタマとタマヨリが、二人の真横を掠めて戦場へと落ちていた。


「……は?」

「呆けてる場合か! 連絡だ!」


 あまりにも唐突な事態に反応が追いつかない男。対して友人は迅速だった。相方に鋭い声を飛ばして正気に戻し、TELを送る。地上にいる〈大鷲の騎士団〉の連絡員に。


「トヨタマとタマヨリが、妙なもん持ってそっちに飛んでった! とりあえず、衝撃に備えろ!」

『え? は? ――りょ、了解!』


 あちらも歴戦の連絡員である。

 前例のない突飛な訴えにも僅かに混乱しただけで、すぐに伝言を飲み込む。2000mという距離は、何か対策を取るにはあまりにも短い。だからこそ、その刹那の逡巡が命取りになる。


「……なんだったんだ、あれは」

「よく分からんが、猛烈に嫌な予感がする。できるだけ高度を上げるぞ!」


 歴戦のカグツチ乗りとしての勘が、警鐘を鳴らしていた。

 二人はお互いに腕を組み、回転軌道を取って高度を上げていく。そして――。


「うわ――!?」


 毒沼地帯の中心で、天に届くほどの巨大な火柱があがった。

Tips

◇飛行型カグツチ"ヒエン"

 飛行用に改造、発展された特殊なカグツチ。胸部に操縦者を取り込むような形をとり、薄い軽量強靭鋼鉄製の翼によって揚力を得る。

 非常に脆く、またバランスも特殊で、操縦するのは非常に難しい。


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