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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第35章

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2022/2090

第2022話「権限の使いかた」※

━━━━━

◇名無しの調査開拓員

今日は珍しく平和だなぁ


◇名無しの調査開拓員

〈キヨウ〉の近くでスタンピードが起きたくらいか。

最近はイベントも終わっちゃって寂しいぜ。


◇名無しの調査開拓員

〈ウェイド〉で爆発事故だってよ

あとマシラが脱走してヤバいらしい


◇名無しの調査開拓員

いつものことだな


◇名無しの調査開拓員

ミートちゃんまた脱走したのか

(収容室が)壊れるなぁ


◇名無しの調査開拓員

なんやかんやでウェイドちゃんも優秀な管理者ですからね

これくらい日常茶飯事だし、ちゃんと対応してくれるよ


◇名無しの調査開拓員

これが日常茶飯事なのは、管理者的にアウトなのでは(名推理


◇名無しの調査開拓員

〈シスターズ〉にミートが来たけど、ウェイドちゃんが回収していった

なんか今日のミートちゃん、やけに素直にウェイドちゃんの言うこと聞いてたな


◇名無しの調査開拓員

もしかして、ウェイドちゃんの中身がおっさんになってたりして


◇名無しの調査開拓員

どういう理論だよ


◇名無しの調査開拓員

なんでおっさんがNPCの中に入るんだよw


◇名無しの調査開拓員

それもそっか。

なんでもないわ。


━━━━━


『いいか、ミート。今の俺はいろいろ事情があってな。ウェイドの中身が俺であるとバレないようにしないといけないんだ』

『わかったよ、パパ!』

『うーん……。本当に分かってるのか……?』


 〈シスターズ〉の店内から町に繰り出すにあたり、きちんと言って聞かせなければならないことがある。ウェイドと俺の中身が入れ替わっていることは、無用な混乱を回避するため他の調査開拓員には内密にしておかねばならない。

 そのあたり、ちゃんとミートにも心得ていてほしいのだが、早速雲行きが怪しくなってきた。


「安心してよ。何かあったらわたしがフォローするから」

『ラクト……。ありがとな、助かるよ』


 こういう時に事情を知る協力者がひとり居ると心強い。

 成り行きで着いてきてくれたラクトの申し出はシンプルにありがたかった。


「ところで、ミートに何を食べさせるつもりなの?」


 歩きながら、ラクトがこちらを振り返る。

 腹ペコのミートを宥めるために、俺は管理者権限を用いるとだけ言っていた。


「飲食店から強制徴収? それとも備蓄倉庫から非常食を出してくるとか?」


 挙げられたのは、どちらも管理者権限で実行可能な選択肢だった。都市管理者は管轄する都市内の全ての施設に対して強い命令権を持っていて、その一存だけで所有物を取り上げることができる。ある程度の自由が認められているとはいえ、俺たちは巨大な組織構造のなかにある。だから、管理者の命令を拒むことはできない。

 また、都市の各地には有事を想定して備蓄倉庫が置かれている。〈ウェイド〉は他の都市と比べても備蓄倉庫の拡充に積極的で、非常食も他都市平均の二十倍以上を蓄えている。

 とはいえ、どちらも俺のアイディアとは違う。


『緊急事態宣言の発令下なら強制徴収の正当な理由にもなるだろうが、今はただミートたちが施設から出てきただけだしな。そもそも管理者本人に緊急アラートも届いていないわけで』


 これは完全に、普段のウェイドが〈マシラ保護隔離施設〉からのアラートを着信拒否しているのが悪いのだが。ともかく、


『徴収はしないし、備蓄倉庫の中は砂糖しか入ってない。ミートもさすがに、砂糖だけってのは嫌だろ?』

『甘いのばっかり、おいしくない……』


 軽く過去の記録を参照したところ、ウェイドはミートたちが空腹を訴えると砂糖を届けていたらしい。ウェイド本人ならそれで満足するのだろうが、ミートたちは正常な味覚を持っている。甘いだけの砂糖を渡されても困るようで、むゅっと眉を寄せていた。


「それじゃあ、フィールドのエネミーを狩り放題食べ放題?」

『オペレーション"アラガミ"だな、それは』


 底なしの食欲を持つミートたちを落ち着かせるために確立された、恣意的に環境負荷を高めて猛獣侵攻(スタンピード)を発生させるオペレーション"アラガミ"は、確かにミートたちマシラの満足度も高い。とはいえ、環境負荷を高めるというのはシンプルに環境に悪い。そのため、各管理者が綿密に観測し、計画を立てた上で、慎重に実行されるものだ。

 いかに今の俺が管理者権限を持っているといっても、独断で行えるものではない。

 そう言ってラクトの予想を潰すと、彼女は唇を尖らせる。


「じゃあ何をしようって言うの?」

『ふっふっふ。今の俺はウェイドと同等の権限を持っている。つまり、この都市内のありとあらゆる施設に自由に出入りできる』


 つまり、


『ウェイドに取り上げられたアレやコレや、全部使い放題ってことだ!』


 やって来たのは中央制御区域の中で特に厳重な防護措置が施された施設。周囲には護剣衆と同等の戦力を持つ専用の警備NPCが多数配置され、調査開拓員たちは立ち入りどころか外部からの一定時間の観察さえも阻まれている。

 ここは都市管理者が重要かつ危険であると判断した物品を保管しておく、最重要物品保管庫。ここに、ウェイドが俺から押収してしまった過去の名品たちが多数収蔵されている。


『待ってろ、ミート。たらふく美味しいものを食べさせてやるからな』

『わーい!』


 無邪気に飛び跳ねて喜ぶミートと共に、俺は閉ざされていた厚い鉄扉を開いた。

Tips

◇最重要物品保管庫

 各都市の中央制御区域に置かれる施設の一つ。施設そのものが最高ランクの警護対象であり、常に24以上の方法によって監視されている。その監視は外側だけでなく、内側にも向けられており、盗難、収奪、暴走、爆発などあらゆる事態に対処できるようになっている。

 収容されているものは、管理者によって最重要物品と認められたアイテム群。管理を間違えれば甚大な被害をもたらすと予想されるものであり、管理者が責任を持って管理下に置くことが求められるものばかりである。


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