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ヴォーパルバニーと要塞おじさん  作者: ベニサンゴ
第35章

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1796/2101

第1797話「羽ばたく蜂」

「首首首ィィ! 首はどこですかァ!」


 斬撃が天を裂く。トーカの持つ特大の大太刀"妖冥華"はその威力を遺憾なく発揮し、空間を斬った。透明なヴェールが風に舞い上がるようにして目の前の距離が切り取られ、物理的な隔たりを一息で飛び越える。


「何回見ても、この移動方法だけはよく分かりませんねぇ」


 ぴょんぴょんと霧の上を駆け抜けながら、レティが首を傾げる。トーカの〈切断〉スキルによる空間切断は、世界の壁すら破壊したレティにとっても不可解な代物だった。そのあたりは距離という概念をどう捉えるか、という考え方の違いに起因するのだろう。


「でも、おかげで楽できていいね。敵も出てこないし」


 並走するシフォンは楽しげだ。

 白月が展開している足場の霧は、当然ながら障害物がなにもない。ただの平坦な土地を走り抜けるのは、ちょっとした爽快感があった。バブルが襲いかかってくることもなく、ただ目の前にある開拓司令船アマテラスを目指すだけでいいのも楽だ。

 とはいえ、ずっと同じような景色が続くと距離感も麻痺してきて気持ち悪くなるのだが――。


「はえーーーーーっ!?」

「シフォン!? カミル、気をつけろ!」


 そんな矢先、さっきまで楽しそうに走っていたシフォンが爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ。俺は急いでカミルに防御徹底を指示し、周囲を見渡した。


「レッジさん、何かが飛んできます!」

「あれは……機械の蜂!?」


 レティたちが見つけた。

 それは宇宙空間を猛烈な勢いで飛翔する、メタリックな蜂のような機械だった。羽ばたきの代わりにスラスターの青い炎を引き、躊躇なくこちらへ迫ってくる。それは突き出した針の先端から、細長いレーザーを吐き出した。


「ほわーーーっ!? な、なんですかあの蜂!」

「くっ、これでは首を斬ることが……。先にあの蜂の首を斬らねば!」


 突然の敵襲に、レティとトーカが戦闘態勢に入る。ミカゲたちも同様だ。

 俺はカミルとシュガーを守りつつ、指揮官たちの様子を窺う。T-3たちも後方で立ち止まり、状況の把握に努めているようだった。


「T-3、あれは!?」

『ふむ……。どうやら、T-1の仕業のようですね』


 機械蜂は、アマテラスから射出されているようだった。どうやら、ここから先には近づけさせないという意志が働いているらしい。


『調査開拓団規則の一部改訂を実行します。T-2による賛同を得て、多数決による採決を確認。現時刻をもって、一部のNPCに対する攻撃的行動を解禁します』

「話が早いな、T-3!」

『時には愛の鞭も必要ですからね♡』


 T-3による迅速な対応により、レティたちが走り出す。迫り来るビームを軽やかに避けながら肉薄し、その機体を叩き潰した。


「ふははっ! この程度の敵、どうということはありません!」

「私に斬られたくなければ、もっと頭数を揃えてくるべきでしたね!」


 勝ち誇るレティとトーカ。

 シフォンが尻尾の先を焦がしながら復帰した、直後。


「はえーーーーーっ!?」


 雨のようにレーザーが降り注ぐ。

 次々と立て続けに爆発が起こり、シフォンが再び吹き飛んだ。


「うおおおっ!? T-3、なんかいっぱい出てきたぞ!」

『うふふ。T-1もこちらが調査開拓団規則を改訂することは折り込み済みということでしょう。調査開拓用機械人形の製造ラインを流用し、このNPCの増産をしていたようですね』


 楽しくなってきた、と微笑みを増すT-3。

 眼前に、空を埋め尽くすほどの銀蜂が殺到していた。


「これは流石に……」


 こちらの人員はほとんどがアタッカーだ。遠距離からのレーザー攻撃は防戦一方にならざるを得ない。レティたちは回避に精一杯で、反撃を繰り出すこともできないようだった。

 視界を埋め尽くすほどの銀の雨に、絶望感に包まれる。

 その時、


「――『煌めく万華の綺羅鏡』」

「『屈折する純氷の大城壁』ッ!」


 突如、宙に無数の光が瞬いた。それは次々とレーザーの進路上に出現し、その軌道を変える。数百を軽く超えるレーザーのすべて、ひとつも漏らすことなく集め、一点へ。

 束ねられた銀の光の正面に、巨大な氷の壁が立ち塞がる。それは光を吸い込み、内部で曲げて、束ねる。そして、氷壁の背後に黄金の盾を構える少女が立っていた。


「『我が身を焦がせ、不屈の盾よ』ッ!」


 高らかな声と共に黄金盾が光り輝く。

 集められたレーザーが、全てその盾に注ぎ込まれる。

 凄まじい衝撃と熱が、容赦無く盾を叩く。だが、スパイクを深々と突き刺した重厚な特大盾は揺らぐことなく、それを受ける。

 激しいせめぎ合い。

 熱気は周囲に広がり、シフォンが悲鳴をあげる。

 そして――。


「ワカバ、まとめて落とせ」

『デスワッ!』


 一発の砲弾が放たれる。

 それは宙で弾け、機械蜂に引火する。次の瞬間、それは群れ全体へと広がり、七色の花火となって宇宙を照らす。

 アマテラスから飛び出してきた蜂の群れは、わずか数十秒のなかで全滅した。


「ラクト、エイミー……。来てくれたのか!」


 駆けつけてくれたのは、頼れる〈白鹿庵〉のタンクと機術師。彼女たちは不敵な笑みでこちらを見る。


「げぇっ!? おかあさ――光さん!?」

「うわぁっ、とおさ、カエデ!?」


 レティとトーカも、突然現れた助っ人に驚きの声をあげている。

 窮地を救ってくれた〈紅楓楼〉の青年は、傍らのバブルの頭を撫でながら、そんな二人を見渡した。

Tips

◇警備NPC-EX"シルバーエイラ"

 特殊環境下における重要拠点防衛のために設計開発された特別な警備NPC。内蔵された特殊高性能BBリアクターによる高出力長時間のパワー供給により、単独での高速高機動飛翔が可能であり、尾部先端に高出力熱破壊レーザー砲を備える。

 相互通信式高度戦略行動が可能であり、群体として有機的な連携行動を取る。


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