第10話:トラブル発生
戦闘が多いですね。
戦闘描写を書く訓練になるからいいんだけど、誰だこんなプロット作ったやつ!
………俺でしたorz
まぁ、楽しんでくれたら幸いです。
後、少し書き方を変えてみました。
今回の文字数はなんと6000オーバーです。
なんでこんなに書いたんだろうかw
草原から出てきたのは一匹のゲル状の生物だ。色は草と同系色の緑色でゆっくり草を溶かしながら移動してくる。―――そう、スライムだ。
感覚器官があるのかは分からないが、どうやら私たちの場所は分かっているらしくこちらに近づいてくる。ギルドの資料室で見た魔物データによると、危険度G~S評価の中のGだったのでかなり弱い部類になるのだろう。
これなら紫音に任せても大丈夫そうだ。
スライムは下級魔法を1発か打撃や斬撃でも何度か当てるだけで倒せてしまうほど弱い。
「紫音、任せました」
「任されました!」
楽しそうにそう言い、一歩前へ出る。スライムはこちらにゆっくりと前進してくる以外は特に何もしてこない。
よく観察するとスライムの中を小さな赤い石がふよふよと漂うように移動している。あれがおそらくスライムの魔石だろう。
「じゃあ、さっき試していない魔法にするかなぁ…」
「となると【ウィンドボール】か【グランドボール】の二種類ですか」
「じゃあ、【ウィンドボール】!」
紫音の手のひらに不可視の風の球が生まれる。見えないはずなのにそういった表現ができるのは、空間が歪んでいるように視認できるからだ。
おそらく【ファイヤボール】や【ウォータボール】と同じで直径10㎝の球だろう。
【ウィンドボール】がスライムにぶつかった瞬間スライムは細切れになりながら吹き飛ばされた。飛んできたスライムの破片をナイフを使い弾き落とす。先程草を溶かしていたのでなるべく触らない方がいいだろうという判断だ。弾いたナイフを見てみると溶けた様子はない。草を溶かすが金属は溶かせないのだろうか…一応、布でナイフの表面を拭っておく。スライムは絶命したようでピクリとも動かない。よく観察していると唐突に黒い物質に変わり空気に溶けるようにして消えていった。
「なに…今の!?」
「分かりません…」
何が起こったのか分からなかった。スライムの死骸が消えたのだ。何の前触れもなく消えたスライムがいた場所には小さな魔石と緑色のゼリー状のものが落ちていた。
「もしかして、咲楽が倒したブラッディタイガーも同じようにして消えたのかしら?」
「可能性としてはありますね」
とりあえず、落ちている魔石は拾い上げてポケットにしまう。ゼリー状のものは触っても大丈夫か分からないのでナイフで掬い上げてみる。強力な酸というわけではないらしく鋼鉄製のナイフは溶けなかった。試しに草の上にも置いてみたが溶けないので素手で持っても大丈夫だろう。スカートの中から小瓶を取り出すとその中にゼリーをしまう。
「ねぇ、咲楽?前々から気になっていたのだけどその便利な道具は当然のように咲楽の懐から出てくるのかしら?」
「メイドの嗜みです」
「そんな嗜み聞いたことないわよ…まぁ、薬草も取れたし魔法も試せれたから今日のところは帰りますか…」
「【グランドボール】は試さなくてもいいのですか?」
「まだ魔力に余裕はあるけどちょっと疲れたからね…」
「そうですか、肩を貸しましょうか?」
「大丈夫、まだ歩けるくらいには動けるわ」
「無理をなさらないでくださいね…」
紫音に貸そうとした手を引っ込め、気遣いながら街の方を見る。
街の方からは冒険者のパーティと思われる団体がこちらに向かって歩いてきていた。数えてみると総勢で10人の男たちだ。その中には街でナンパをしてきた男たちも混ざっていた。私達と男たちの距離はまだ200mぐらいあるが、どうも厄介ごとの気配しかしない。というか、厄介ごとだろう。ここから見ても分かるが男たちの顔がニヤついているのが見えるからだ。紫音に聞こえないようにそっとため息をつくとナイフを構え戦闘態勢に入る。紫音も私が構えたことに気が付いて、私の視線の先を見る。紫音は私ほど視力がよくないためよく見えていないようだが、顔をしかめているところから厄介ごとの気配を感じ取ったのだろう。
「咲楽、嫌な予感がするのは私だけ?」
「私も同じですよ、紫音」
短く言葉を交わし男たちを見てみる。全員が剣や斧、杖などを装備しているのを見る限り戦闘の準備も万端なのだろう。
(これは少々本気でやらなければまずそうですね…戦闘になれば私の魔術を使うことも視野に入れておきましょう)
自身の魔術【身体能力強化魔術】も使うことを視野に入れ油断なく構える。
男たちとの距離が20メートルを切ったところで大柄な男が口を開く。
「よぉ、嬢ちゃんたち?俺のパーティメンバーが世話になったみたいだなぁ?」
低い声で脅すように声をかけてくる。男たちの中でも最も強いのだろう、取り巻きの男たちも口々にその男に賛同の言葉を投げかける。
そんな中ナンパ男たちの中の一人が大きな声で話し始める。
「親方聞いてくだせぇよ、俺らが親切にリゲルの街を案内してやろと思ったらいきなり腕をつかんできて捻りあげられたんですぜ?」
あることないことを吹き込んでいる。正直、訂正したい気持ちにかられるがどうせ面倒ごとになるだけだろうから黙っておく。というか、この男の小物臭がすごい。
「おぉ~、それはかわいそうになぁ…俺の子分をこんな目に合わせたんだ、キチッとけじめをつけてもらわねぇとなぁ」
「けじめですか…」
「そうだ!けじめだ!!」
そう言い放った後、男は私の身体を嘗め回すように見てくる。正直気持ち悪い視線だった。
「そうだなぁ、お前らの身体でけじめをつけてもらおうか」
下種な笑い声が草原に響く。私は顔を俯かせて黙りこくる。自分でも少し苛立っているのがわかる。
「おやぁ?俺たちが恐くなったのか?おとなしくしていれば命まではとらねぇから安心しろよ」
そういい、男たちはニヤニヤと近づいてくる。数人が紫音の方に向かおうと足を向けた瞬間私の中で手加減するという選択肢が消えた。
「少々痛い目を見てもらいましょうか…」
底冷えするような声で小さく告げた。私はバッと顔を上げ握っていたナイフを紫音の方へ向かおうとする魔術師風の男に投げつけた。突然の奇襲で回避できなかったのだろうナイフは男の足に深々と刺さる。
「いっでぇぇぇええええええ!!!」
「なっ、この尼!!!」
目の前の大男が吠えてくる。あまり時間をかけてもこちらが不利になるだけだろう。さらに、この体格差だ。勝てる自信はあるものの時間をかけすぎると紫音を人質に取られるかもしれない。
私は迷わず【身体能力強化魔術】を使うことにした。説明された通りにスキルを発動させる。私の周りに青い燐光が宿ったと思うと身体が軽くなった気がした。私の魔力は150…しかし、実際に使えるのはもう少し少ない…50秒以内に片をつける。
男との距離を瞬きの間に詰めると拳を握りしめ手加減など一切せずに男の腹を打ち抜く。
「げぼぁあ!!!」
汚い叫び声とともにリーダー格の男が真後ろに吹き飛ぶ。何人か後ろにいた男たちを巻き込み6メートルほど吹っ飛んだ後に停止する。ありえないほどの力だ。軟な女の拳、それもただ単に力任せの一撃で2mはありそうな大柄の男が吹き飛んだのだ。
【身体能力強化魔術】の強化倍率は2倍どころではなかった。仮に普通の状態で100mを12秒で走り切れるとしたら今の状態だと4秒ぐらいで100m走り切れるのではないだろうか…それぐらいすさまじかった。
今は確かめれないので後回しにするとして、大男が吹き飛んだ後を見る。私の奇襲でリーダー格の男とその後ろにいた取り巻き2人が巻き込まれ気絶している。先程足にナイフを貰い動けない男を合わせると計4名を片付けたことになる。
それを見ていた他の男たちは慌てて武器を取り出した。
「てめぇ!よくも親分をッ!!」
叫びながら上段に構えた剣で切り付けてくる。剣の側面に左手を当て反らし、右拳で顔面を打ち抜く。それで一人ダウンした。残り5人。【身体能力強化魔術】の効果時間残り40秒。
吹き飛ばした男の右側から攻めてきた斧を持った男に右手を振りかぶった勢いのまま右足を軸として後ろ回し蹴りを放つ。側頭部に命中し男を吹き飛ばす。回し蹴りの時に周囲を確認し一人の男が左から回り背後の紫音を人質に取ろうとしているのが見えた。左手に握っているナイフを手加減抜きで投げつける。ナイフは吸い込まれるように男の下腹部辺りに命中する。確認できた限り致命傷は外れている。残り3人。
「ぐぅうううう!!!」
下腹部にナイフの刺さった男が苦悶の声を上げる。構わず残った男たちを見る。私のあまりの強さに冷静ではなかったのが少し落ち着いている。いや、あれはどちらかというと怖気づいているように見える。
「私としてはこのままあなたたちを一人残らず戦闘不能にしてもいいのですが…」
一泊おき、本気の殺気を籠めて問う。普通の人なら恐怖で失禁してしまうかもしれない圧力だ。
「どうしますか?」
男たちは一歩後ずさる。
私は一歩前に出る。
再度男たちは一歩下がる。
私は腰を低くして構える。
「ま、待て!わかった引く引くから手を出すな」
そう言った男は一瞬だけ背後に視線を向けた。背後から奇襲するように目線で合図を送ったのだろう。しかし、それもバレバレだった。
私はため息をつくと背後に翻しスカートの中から新たに出したナイフを背後で紫音に近寄ろうとした男に投げる。そのナイフは男の左太ももに命中した。
「ぎゃああああああ!!!」
「バレバレですよ…後もう容赦はしません」
高速で後ろの男に近づくと掌打を浴びせ気絶させる。残り3人で残り効果時間25秒。
全力で駆け出し、男たちとの間合いを詰める。束の間に距離を詰められた男は慌てている。一番手前の男の顎、胸骨、鳩尾の順に三連撃掌打を浴びせる。―――凪枷流拳術参ノ技『三段穿ち』。正確に命中させると脳震盪、心臓停止、呼吸不全に陥らせる悪魔のような技だ。今回は命まで奪うつもりはないので脳震盪以外は起きないように当てるポイントをずらした。結果、男は脳震盪を起こし気絶した。これで残り2名。
男たちは意を決したようでそれぞれ片手剣とダガーを振るってくる。片手剣を手の甲で弾き、ダガーは親指と人差し指、中指で掴む片手白刃取りで防ぐ。呆気をとられている男たちの顎にそれぞれ掌打を打ち込み脳震盪を起こさせる。それで2人とも気絶した。
終わったことを視線を巡らせて確認し、【身体能力強化魔術】を解く。
「――っあぁ!」
途端にものすごい疲労感がやってくる。それに伴い息が荒くなる。膝が折れそうになるが気合で耐える。これ以上動きたくない気持ちがわいてくるが紫音の手前そんな姿を見せるわけにはいかなかった。なんとか立っていると紫音がこちらに寄ってきて心配そうに顔を覗き込んでくる。
「咲楽大丈夫?」
「は…い、なんとか…大丈夫です」
怪我とかは一切しなかったが疲労が凄まじい。何度か呼吸を繰り返し息を落ち着かせる。疲労はひどいが息は整えられた。
「ふぅ…少しは落ち着きました」
「そう、見る限りは大丈夫そうね」
「ご心配をおかけしました」
そう言い、私はギルドカードを見る。残り魔力がどうなっているか確認するためだ。
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名前:Sakura(咲楽) 14
職業:冒険者
ランク:G
ステータス
体力:410/410
魔力:56/155
攻撃力:D
耐久力:E-
魔法適正:E
魔法耐性:F+
総合評価:E
所持スキル
『従者の嗜み 10』『柳流武術 10』『深神流拳術 10』『凪枷流拳法 10』『御剣流抜刀術 10』『ナイフ術 10』『暗殺術 10』『簡易医術 5』『身体能力強化魔術 2』
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レベルが2上がっていた。それに伴い体力と魔力の最大値が増えていた。『身体能力強化魔術』の方も使用したからかレベルが上がっていた。攻撃力やその他のアルファベットは変わっていなかったため上がりにくいのだろうか…後、人を殺したわけではないのにレベルが上がっているのは何故なのだろうか…戦闘経験をレベルにしているのか?謎は深まる一方だ。
私がギルドカードを確認している横で紫音もギルドカードを確認していた。
「レベルは変わってないけど下級土属性魔法以外が1つレベルが上がってる」
「土属性以外は全て二回魔法を使ってレベルが上がっているので土属性も【グランドボール】を使えば上がりそうですね」
「そうね」
紫音との会話を終え、私は男たちに近寄る。もちろん、ナイフを回収して一応治療するためだ。いくら襲ってきたとはいえ死なれたら目覚めが悪いからだ。ナイフを抜き軽く止血をする。といっても傷口を針で縫合するだけだ。スカートの中から清潔な糸と針を取り出し男の傷口を縫う。若干苦悶の声を上げたが治療しているだけありがたいと思ってほしい。下腹部の傷と左太ももの傷を縫合する。一人目の治療を終えて次に治療する足にナイフが刺さって立てない男のところに向かう。男は気絶させたわけではないので意識はある。
「…おい、あんた何してんだ?」
男が声をかけてきた。怯えているようで情けない声だが、殺されかけた相手によくそんなに冷静でいられるなと思いつつも質問に答える。
「何って治療ですが?」
「俺らはあんたらを襲ったんだぞッ!?そんな相手をなんで治療しているのかって聞いているんだ!!」
男が叫ぶ。正直、この類を納得させるのはめんどくさいので投げやり気味に返す。
「別に、貴方達を殺して私に何の得があるというのですか?私は紫音が無事ならそれでいいのです。あ、ナイフ抜くんで痛いですが我慢してくださいね」
「いや、得があるとかないとかじゃなくて…いっでぇ!?」
「だから痛いって言ったじゃないですか、簡単に傷口を縫うのでじっとしててくださいね。別に、私が貴方達を殺す必要はないと判断しただけです。文句はありますか?」
「っつ…」
そういうと、男は黙ってしまった。素早く男の足を縫う。僅か数十秒で男の傷口を縫って終わった。治療中、男は黙ったまま何かを考えているようだった。
治療を終えたので道具を仕舞うと
「とりあえず、これで十分だとは思いますがちゃんと治療してくださいね」
「お、おい待ってくれよ!」
男に呼び止められる。億劫に思いながらも振り返る。
「何でしょうか?」
「…治療してくれて助かった。それが言いたかっただけだ」
「そうですか」
短く簡潔に告げ男に背を向けると私は紫音の傍に歩いていく。
「咲楽ってお人よしよね」
「そうですか?」
「自分で傷つけておきながら治療するなんて」
「まぁ、以前の私なら確実に殺していました。そういう意味ではお人よしというよりは丸くなったという表現が適切かもしれませんね」
「まぁ、何にしても大事にならなくてよかったよかった」
相変わらず紫音は度胸があるというか神経が図太いというか襲われたのに動じていなかった。私を信頼してくれているのはうれしいけどもう少し動揺してもいいんじゃないかと思う。
「さて、薬草採取のクエストは少しトラブルもあったけど無事に終わったということで街に帰りましょ」
「そうですね」
「私お腹すいちゃった。異世界のご飯ってどんなのかしら?」
「楽しみですね」
相槌を打ちながら黄昏時の空の下を紫音とともに歩く。
いかがだったでしょうか?
誤字脱字報告よろしくお願いします。
次回はクエスト達成と異世界でのお食事です。
次回の更新は3月18日です。




