01:踊り子
37XX年。技術や文化が大きく発展し出した時代。
地球には、"舞姫"と呼ばれる存在が居た。
とある大都市の中の広場。
そこには、何人もの、恐らく市民であろう人が集っていた。
「一体何があるの?」
ある婦人が誰にでも無く問う。
「知らないの?此処に、舞姫様がいらっしゃるのよ」
別の婦人が答えた。
「まぁ、舞姫様が!」
「えぇ、ほら今日は降臨記念日でしょう。だから…」
婦人が言いかけた時、周囲がわっと涌いた。
そして人々が道を作り、その道を歩く姿があった。
「―舞姫様が踊られるのよ」
空に輝く金の月に照らされて輝く噴水を背に、1人の少女が広場の中央に立った。
その姿は溜め息が出る程に美しく、神秘的で。
その場に居た誰よりも、魔力で満ちていた。
「―これより、儀を始める」
司祭の男が広場中によく響く声でそう告げる。
そうして、誓いの言葉や祝いの言葉といったものが終わり、人々は落ち着かない様子でいた。
そして司祭が、
「―最後に、舞姫による祈りの舞、」
言いかけた所で、盛大な拍手と歓声が上がり、司祭の声は書き消された。
「待ってました、舞姫様!」
「美しい方よねぇ、本当に」
「舞姫様は女神だ、救世主だ!」
次々に褒め言葉なのかお世辞なのか分からない言葉が人々から出ていく。
「…それでは、舞を始める」
司祭が半泣きで言い、演奏者に合図を送った。
暫くして、琵琶や太鼓による幻想的な音楽が流れる。
と、人々の声は一瞬で静まり、ただ、舞姫という存在を瞬きもせずに見つめた。
―音楽に合わせて踊る少女を。
くるりと回ったり、空を仰いだり。
その1つ1つの動作はどれも美しい、としか言いようが無かった。
月の光を浴びて輝く茶の髪。星空を映す黒い瞳。
その全てが美しい少女は、地球の全ての人々に崇められ、生きていた。
そしてその時、世界は、彼女を中心に回っていた。
不思議な紋様を持つ、"人間"の生まれ変わりである少女を中心に、回っていた。
長くてごめんなさい。(終わり)