62話
お嬢とは多分さっき会った婦人の子供だなとセイは理解し、エリザベスの激情混じりの難解な説明をまとめると以下の通りだ。
モンスターテイマーになりたいお嬢様を騙して誘拐(子犬?子羊?のエリザベスつき)した冒険者は婦人と交換だと要求したが、失敗そして取り押さえられる間際に振り回した剣がお嬢様に当たってしまったという事だ。
あとエリザベスの勘違いの原因は誘拐した冒険者が興奮してエリザベスとお嬢様に語った内容のせいだった。
語り終わったエリザベスは期待の眼にセイは断れないなと了承した。
「メゥーン!。『ありがてぇ、頼んますセイの兄貴!これは舎弟からの気持ちでさぁ。』」
「コ、コン……『あ、兄貴ね……まぁいいけどあとこれが執事の人が言ってたのかぁぁ、聞いてたのと違うな……。』」
今のエリザベスの毛並みは仄かに青みがかった綺麗な羊毛になっている、その一部をエリザベスは渡したのだ。
「メー『まずは、お嬢にあってくだせぇ、お嬢は知らない者には怯えてしやいますんで、セイの兄貴に慣れて貰わないと話しが進みやせんし。』」
「コン。『いいけど、まずは執事の人に事情説明してからな、勝手に行ったらまずいだろ。』」
*****
まず執事に説明する為エリザベスに案内され執事がいる場所にたどりつく。
「ふむ、もう少しシャープにした方が、しかしガサル様の勇姿がいささか堕ちるのでは?ううむ。」
「メェー『 シュトル爺』」
「クー『これは凄いな、本当に執事なのか?』」
執事であるシュトルは屋敷を見渡せる大木の木陰で迫力のある戦場を画いた油絵を描いていた。
「エリザベスちゃんと……もしやセイ様ですか?ほぉほぉ、もう依頼を完遂しましたか流石でございますなぁ。」
「コン。『いや、まだお嬢様をモンスターテイマーにする約束をエリザベスとしたからそれが済んだら達成だな。それにしても執事さんは凄い絵が上手だな前は絵描きだったのか?。』」
セイがモンスターテイマーと油絵の事を言ったのに苦笑してシュトルは目を瞑る。
「油絵は趣味の一つでございます。しかしお嬢様はお父上で凄腕のモンスターテイマーであるガサル様の勇姿を私の絵を見て憧れおいででした……。」
そう言ってシュトルはお嬢様に会うことを了承してセイをお嬢様がいる部屋に案内して貰う事になった。
「セイ様になら任せられる何故かそう思えます。どうかお嬢様をお願いします。」
「クー『余り期待されても困るけど、まぁ出来るだけの事はする』」
シュトルは微笑みながら話し、セイは少しバツの悪い表情で答え部屋前に立つ。
エリザベスの真剣な思いと少し重い話しの後、部屋に案内される際出会う度にメイドに撫で回された事にげんなりしたが。
(甘く見てた女性恐るべし、嫌がるペットの気持ちが分かる日がくるとはなぁ……)
「お嬢様、シュトルでございます。是非お会いさせたい方がいるのですがよろしいでしょうか?」
シュトルが声を掛けると部屋より目付きの鋭いメイドが現れた。
「シュトル………?お会いさせたい方はどちらに?」
「ほぉほぉ、チァルそちらの小さな冒険者の方ですよ。」
「クー『言っとくが撫でさせないぞ、あと今は狐だが、本当は男の冒険者だ』。」
「メー?『気持ちいいのに、何でだろう?』」
わからないと首を傾げるエリザベスをセイはスルーする。
セイの方を見て無表情だが雷に打たれたように動かないチァルに言うとハッと我に返り、納得したとばかりに首肯く。
「成る程……ちょうど良いですね。でしたら……。」
チァルはセイにちょっとしたお願いをして部屋に招きいれた。
シュトルは先に入り微笑んで背後で見えてなかったお嬢様の姿を横にずれセイに見せた。
「お嬢様、可愛いお客様がいらしゃいましたよ。」