19話
ロキシーにバレたら大変な事を聞かされ現実逃避気味だったが、セイは残りの説明を求めた。
「で、結局俺に何の要があるんだ?」
『そうだね、それが本題だ、まずこのエリアに君を転送した理由は、君の思考、神経伝達速度を元に戻す措置の為だよ。
今の状態でログアウトすればその思考、神経伝達6倍で身体を壊すよ?
だから君さっさと制御に集中して。』
「そう言えばこんなに頭がスッキリした感じは初めてだな、そういう事だったのか、分かった。」
セイが目をつぶり意識を集中している間、ロキシーはメニュー画面を開き加速倍率を緩やかに下げていく。
「もう大丈夫だ、ありがとうロキシー。」
『本当かい?良かった、ではもう三つ要件を話そう。』
「三つ?」
『そう、まずは君、運営からのメッセージ見てないよね?
制限解除の方法のメール、そもそも制限解除をして貰ってからエアリアオンラインを楽しんで貰う予定だったんだけど、君説明書見ないでいじってしまう派の人だったんだね。』
ロキシーがジトメで見る、図星をつかれたセイは視線を外して苦笑いした。
「あはは、まあぁね~」
『最近の子はちゃんと見るんだけど……まぁいいや、今説明すると君の反射神経を制御する訓練だ。
君は思考速度と神経伝達を抑えるのは何とか強靱な精神とピヤス型の制御装置で抑えれるけど、生存本能の反射神経は無理だよね?』
「そうだな、おかげでスポーツ全般禁止だ、ボールが転がって来ただけで蹴ってしまったり、背後から近づいて来ただけで反射的に投げ飛ばしたりする恐れが有るからな。………そのせいで友達なんて出来やしない。」
動きを学習した事というのは時に無意識にしてしまうのは誰にでも覚えがあるだろう。
普通は動いてもすぐ自らの意志で止めれるだろうがセイの場合は止める事が殆ど出来ない。
セイはVR学習が出来ず、実技の授業さえ受けれず、中学までは安全確保や各種規約調整の為、家庭教師で済ませてたので同年代の知り合いがいない。
つまりセイはボッチだった。
『理屈では物が飛んで来ても意識すれば避けなくなれれば良いけど、危険度を上げてく必要が有るから現実じゃ不可能だった、けどVR内なら問題ないからね。』
「現実で刃物なんて投げてこられても避けなければ死ぬしな。」
セイは実際ゴムボールでしたことあったが、顔に当たり結構痛いと感じてからはどんなにやっても避けてしまう、この方法は逆に悪化する結果となって、何かがある速度以上で接近されると反射的に避けてしまうようになった。
その点、VR内なら痺れる程度、設定を変えれば痺れる事もない、訓練にもってこいだ。
『二つ目がスカウトの事だけど、まずは僕と対戦してくれるかな?もちろん君はキツネくんになってね。』
「良いけどなんで?」
『やれば分かるさ。』
─────────
〖ロキシーより対戦を申し込まれました、受けますか?〗
⇨YES
No
〖対戦承諾、只より開始、規定位置まで離れてください〗
──────────
対戦が始まるカウントがされている間にロキシーはメニューを操作して次々に装備を整えていく。
セイもフェアリーフォックスにトランスする。
「クー?『魔法使い?』」
ロキシーの装備はローブに指揮棒の様な杖、指ぬきグローブだ。
『惜しい、ちょっと違う、サモン!来い、〖フェン〗!』
「アオーン!!」
ロキシーのかけ声で足元に狼のマークが入った魔法陣が浮き上がり、小さな子犬が現れる。
「クー?!『召喚スキル?!』」
『そう、で僕の装備はサモナー装備、次回実装予定スキルのテストを君に手伝って貰う、ようするにテスターだね。
この召喚獣はフェンリルの子供、〖フェンリルキッズ〗僕のパートナーのフェンさ、それじゃ始まるよ!』
「ワン!!」
「クォーン!『やってやるよ!!』」
セイはロキシーの合図で迫ってくる、フェンに、アーツを発動し迎え討つがあちらも同じアーツを発動しぶつかり合い相殺される。
「クウォン?!『打ち消したそんな事出来るのか!』」
「グルーーワン!!」
当然だと吠えたフェンはロキシーが振るう指揮の元、攻撃を仕掛けるがセイは容易く避け反撃をする、攻防繰り返しす。
(うーん、何だろうねセイ君は真面目に戦ってるんだろうけど、フェンとじゃれ合ってるみたいで凄く和んじゃうな。)
ロキシーはこれはこれでと呟くと次の行動に移す。