第7話
「神崎、居るか?」
「・・・はい、どうしましたか?」
「明後日の打ち上げ、神崎来れるか?」
「明後日ですか?」
「ああ、新橋が俺が聞く、と言って任せていたんだが・・・遅くてな。」
打ち上げか・・・。はっきり言って行きたく無い。人が多いところなんて嫌だ。それならまさとやたけのこ兄と狩りしていた方がよっぽど楽しいし、気が楽だ。でも、もし篠原さんが幹事を務めているのなら、参加しないのは失礼だろうか。
「・・・嫌なら、無理して参加することは無い。」
どうしようか・・・。嫌、確かに嫌だ。でも、このままで良いのだろうか。このまま他人と距離を取って、他人と関わらずに画面の向こうの仲間とだけ付き合っていくなんて。画面の向こうは誰か分からないし、顔や性別すら知らない。今日や明日にでも飽きてゲームをアンインストールするなんてことは絶対に無い、なんて事は無い。不安定な関係。
「・・・行きます。」
「大丈夫か?無理する事は無いからな。」
「・・・篠原さんも参加するんですよね?」
「ああ。」
「でしたら平気です。篠原さんが居てくれるだけで安心できますから。」
「・・・・・・あ、ああ。」
参加する、そう言ってしまった。怖い、非常に怖い。でもここ数年一緒のオフィスで働いてきた人達だ。それに篠原さんもいる。大丈夫、大丈夫、大・・・―――
〈Masato〉がログインしました
「まさと、助けてっ!」
「・・・何があった?」
「会社の打ち上げに参加する事になったの。」
私は今日あったことを、まさとと近くにいたギルマス、久しぶりに会った〈キャプテン・鯨♀〉に相談した。
「打ち上げ、ね。」
なにやら考え込んでます感をワザとらしく作って呟くように言ったギルマス。「おい、聞こえてるからな。口に出てるからな。」・・・チッ。
そういえばギルマスって年齢いくつなんだろうか。毎晩のように21時にログインして日を跨ぎ、1時になるとログアウトしている。学生か?いや、滲み出ているおっさん臭からして40代か?
「あおばは打ち上げ行きたいのか?」
「え?あ、いや・・・好んで行く訳じゃ・・・」
「あれ?そうなの?」
じゃあどうして?とかわいらしい声で聞いてきたキャプテン・鯨♀。私は知っている。キャプテン(省略)が38歳男性である事を。まあ、そんなことはおいておいて。
「私、友達ってまさとやたけのこ兄とか・・・ゲーム内にしかいないの。ゲームだといつ相手との関係が切れるか分からないでしょう?」
「まあね、知らない内にフレンドから外されてたり、ログイン自体放置されてたりするよね。」
わたしもあったわー。とかわいらしい声で答えるおっさん38歳。
「・・・あまりにもきつかったら無理せず帰る事。いいな?」
「まさと・・・」
「友人としては少し寂しいけど、あおばが頑張ろうとしている事だからな。でも、覚えておいてくれ。俺は急にあおばとの関係を絶ったりしない。あおばが望むなら俺はずっとあおばの友達だ。」
「まさと・・・」
「チッ・・・爆発しろ、リア充め。」
・・・空気読めよ、ギルマスうううううう
ここまで読んで下さりありがとうございます。
今のところ毎日20時に更新していきます。