第6話
「こんにちは。」
「よお、今日は早いな。仕事大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫じゃ無いかな。」
「・・・・・・。」
でも今日はバレンタインデー、昨日睡眠時間を少しだけ削ってやっと手に入れたバレンタインイベント限定超レア・チョコレートケーキ(本命)を、いつもお世話になっているまさとにプレゼントする。だから、少し無理をしてもログインした。
「まさと来るにはまだ時間があるな・・・どっか狩りに行くか?」
「ううん、多分プレゼントして少ししたら落ちるよ。まだ帰宅してから着替えてすらないし。」
「社会人は大変だな。」
「今が特別な時期なだけだよ。あ、ギルマス。」
「どうした?」
「はい、チョコレート。」
「・・・チョコレート(試作品)、ドロップ率異常に高いカスアイテムじゃねーか。俺の扱い酷くないか?」
「気のせいだよ。」
そうしてしばらくギルマスと“世間話”をしていた。
〈Masatoがログインしました〉
「まさと、おつかれ。おかえり。」
「うん、ただいま。あおば。」
「・・・よお、まさと、インしてくれてありがとう。もう少しで心折れるかと思った・・・。心の底から感謝する。」
「うん・・・?」
〈しぐさ〉で泣くを連打するギルマス。何よ、ただ話していただけじゃないの。私はギルマスを無視してまさとを呼んだ。
「はい、ハッピーバレンタイン!」
私は〈荷物〉欄のチョコレートケーキ(本命)をクリックし、出た項目の〈渡す〉をクリックする。渡す相手を選択するために友人リストが開かれた。私は〈Masato〉をクリックする。
「ありがとう、ホワイトイベント無いからお返しは今するな。」
まさとがそう言ったと同時に画面に〈プレゼントが届きました〉との文字が表示された。まさとからのチョコレートケーキ(本命)だった。受け取りをクリックすると画面に何か写し出された。〈コメント欄〉と書かれていた。そこには【好きです。美味しく食べてください。】と書かれていた。私は思わず口に出して読んでいたらまさとと被った。それは同じ内容だった。
「テンプレメッセージか。」
「みたいだね、びっくりした。」
「俺の方がビックリだよ。急に二人揃って変なこと言ってんだから。」
ギルマスが、少し咎めるようで呆れたような声を出していた。そっか、ギルマスはチョコレートケーキを受け取っていないからこの画面が出ることを知らないのか。
「……来年はチョコレート、貰えるといいね。」
「おい、誰に言ってんだ。」
「……。」
あ、ギルマスに攻撃された。プレイヤー同士だと攻撃当たらないのに、何故か私のアバターに向かって〈隼斬〉を繰り返している。
私とまさとは2人でチョコレートの選択画面の〈食べる〉をクリックした。すると、アバターの背景にハートのデコレーションが出てきた。まさとのアバターも同じ仕様だった。ギルマスが、爆発しろとか言ってたけど無視。
来年は貰えるといいね、ギルマス。