第5話
「どうした神崎、やつれてないか?」
休日出勤の今日、オフィスに入って早々篠原さんに挨拶する前に声を掛けられた。そんなにやつれているだろうか。昨日はまさとと少しだけ狩りをした後再びソロでイベントステージで狩りをした。さすがに徹夜は出来なかったがぎりぎりまでねばった。しかし、チョコレートケーキがドロップすることは無かった。その代わりにドロップアイテムのバレンタインクッキーが所持数100を超えた。その数字を見て変な達成感と虚しさだけが残った。
「大丈夫です、すみません。」
「体調管理はしっかりしろよ。」
「はい。」
「それで、早速この書類を営業部に・・・―――」
バレンタイン当日
「篠原さん、おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
「これ、バレンタインチョコです。よろしければどうぞ。」
「・・・ああ、ありがとう。」
私は昨日、仕事帰りに寄ったコンビにで買ったチョコレートを篠原さんに渡した。篠原さんは少し戸惑っていたが、少しだけ微笑んで受け取ってくれた。私はそのまま今日の仕事の指示を聞こうとしたが、
「おはようございます。篠原部長チョコ貰ったんですか?羨ましいです!」
入社して直ぐからかってきて、私が少し痩せると態度があからさまに激変したあのコーヒー男が私と篠原さんの傍に来ていた。はっきり言おう、私はこの男が好きでは無い。仕事以外で関わりたくは無い。
「新橋、おはよう。羨ましいって・・・お前既に何個かチョコ貰っているじゃないか。」
「篠原部長、チョコは数じゃなくて誰に貰ったかが重要なんですよ。」
「そうなのか・・・」
「はい!篠原部長、神崎さんにチョコ貰っていて羨ましいですよ。」
「・・・義理だが?」
「それでも羨ましいです。」
・・・私はこの会話にどう反応したら良いのだろうか。とりあえず私は鞄から篠原さんに渡したチョコレートと少し違う包装のチョコレートを取り出した。
「新橋さん、チョコレートです。宜しければどうぞ。」
「!本当!?ありがとう神崎さん。・・・あれ?篠原部長と少し違いますね。」
「はい、篠原さん甘いの苦手だと聞いたので、ビターチョコレートなんです。」
篠原さんはいつもコーヒーはブラックだったし、同じオフィスの女の先輩方も篠原さんにチョコレートを渡す様で、いろいろと話しているのを聞いた。決して盗み聞きしたのでは無い。篠原さんがオフィスから出ている間に、周りにはっきりと聞こえるボリュームで話していたのだ。
「そうか、ありがとう神崎。」
「いえ。篠原さん、今日は何をすれば良いですか?」
「ああ、とりあえずこの資料を・・・―――」
その後、休憩時間に寄り広報部の本田さんにホワイトチョコレートを渡し、オフィスの男性の方々に新橋さんと同じミルクチョコレートを渡した。新橋さんが変な顔をしていたが、見ていないことにした。
本田さんは甘党男子です。