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思考

もう外が明るい。何日寝れてないだろうか。しかしドレッサーに映る自身

は普段となんら変わりのない。

目の下のクマはまるで自分の心から染み出たかのように色濃く黒い。このクマはいつからあっただろう。おそらく小学生くらいだったか。

もう思い出せない









のっそりとベットにもどり煙草をふかす

ふと隣を見れば見慣れた顔が寝息を立てている



彼は相良裕翔。

そしてたばこをふかす彼女は

松井千奈美。


千奈美は考えていた。

眠れない理由を


ただ単に考え事と一括りにしてしまえば

それまでなのだが、ある出来事がおきてからその’考え事”にとらわれていた


その出来事を語るには6年さかのぼる。

千奈美が12歳の冬での出来事である


当時千奈美は今はとある事情で離れて暮らす妹と母の3人家族であった。いや正しくは2人家族とも言える。

若くして千奈美を産んだ母は子供を

放置し彼氏と遊び呆けていた。


世間でよくある不幸。ただどんな事にも

見方を変えれば当人にとってはその逆でさえあり得るのが人間である。


現に千奈美もそうであった。確かに周りから

みれば育児放棄は子供の自身にとって

不幸に変わりはないだろうがイコール子が親を憎んでると言えば実はその逆の方が

多いのではないだろうか。


千奈美は母を愛していた。

愛。それ以上の言葉が見つからないほど

母を愛していた。




考え事に耽っていると裕翔が目を覚ましたようだ

「おはよー。千奈美。また寝れなかったのか?」

「んー。ちゃんと寝れたよ。ちょっと昔の事思い出してた。てか仕事おくれるよ。」


千奈美がそう誤魔化し仕事へいくように促す。


裕翔は時計と千奈美を見比べるといそいそと支度をして仕事へ出た。



彼氏彼女にしては随分素っ気ないが

彼等は別に恋人ではない。

「カーテンめくれてる。最悪。」

千奈美はめくれてるカーテンの隙間から

差し込む日差しに眉をしかめる


急ぎ足でシャワーヘ向かった




キーンコーンカーーコン



自転車を漕ぎながらチャイムを聞いて

千奈美は落胆した





「千奈美ーーー!!」

後ろから聞き慣れた声がした

「遥ー!おはー!」

千奈美は人付き合いが得意な方では

なかったが自然と人が寄ってくるような

不思議なふいんきを持っていた


敵は多いが味方が硬い

そんな人間関係を

千奈美は柄にもなく居心地よくかんじていた



容姿端麗で勉強ができるわけじゃないが

賢くみんなから一目置かれる存在


そんな自分の立ち位置をよく千奈美は

心得ていた


「千奈美 今日放課後あそびいこ!」

「いいよ どこいく?」

「一旦帰って着替えていつものBARとかど?」

「あーね いいよ 彩もすきだね!」

いつものBARとは会員制のクラブの様なもので芸能人が良くいることで有名であるが

それなりの容姿と紹介が備わってないと

会員にもなれない事から内装すらその辺の人たちは知らないだろう。



人間には3パターンいる。


自身が何をしても好きでいてくれる人間。

自身が何もしなくても嫌う人間。


両方兼ね備えながら都合良く利用する賢い人間。



千奈美は最後の方であったが彩も

最後の方の人間だった。


「千奈美連れてくと喜ばれるしあたしも中入れてもらえるし本当ありがたい」


普通隠すであろう下心を悪びれもなく

言うあたり千奈美は彩と言う人間は

普通ではないがそれが好感をもち

千奈美は仲良くしていた。




夕方一旦ふたりは家に帰り着替えて

駅に向かった

「今日だれいるかなー?久々だし

たのしみー!今日もお世話になりやーす!」


「はいはい 彩のそういうとこ割と好きだよ、うまくやるね」


「なにそれー 彩は素直なのー」


きゃーきゃーしながら電車がくるのを

まつ



ある人がみれば千奈美が引き立て役として

彩を連れてる様にみえるだろう


それも間違ってない



またある人が見れば容姿がよく異性に

困らない千奈美のおこぼれを彩が

待ちわびている様にも見えるだろう



利用し利用する


賢いがゆえに2人は一緒にいる時間が長かった。


ただどんなことよりも千奈美の心を占めるのはもう遠い記憶の母の温もりと引き離された自分の半身香奈美の存在だった


そして今日千奈美が焦がれ愛してやまない

己の半身を巻き込み母へ会いに行く計画が回り始めた。千奈美の思想が。



千奈美と彩は約束通りBARへ来ていた


美しい千奈美の周りには沢山の男が

寄って来た。

有名人でさえも彼女を

今晩の恋人にしようととりどりの

愛の言葉をのべていった

ただ今日はおかしい


「なんか今日すくなくない?よってくる男」


「んー、なんだろうね。もう年?」


おこぼれが少なく不服そうな彩に

千奈美は腑に落ちない様にでも

おちゃらけた様に返す


千奈美も腑に落ちない

自分の容姿には自信があったし

なによりも奥の方が騒がしい


「彩 あっちみてみよ?騒がしくない?」

「うん」


ふたりで騒がしい男達をかき分け

進んだ先そこにあったのは焦がれてやまない己の愛しい半身



「香奈美」

「千奈美」


声があたかも元々一つの言葉だったのかの様に重なる


横の彩は驚いていた

声がでない

なにこれ

彩はどうにもなら無い恐怖ににた感情を

おぼえていた



香奈美と呼ばれた少女がいた


ああまま

やっぱり貴女は女神

香奈美が私の愛しい半身が

もどってきた


顔の似てない麗しい双子

卑しい男たちがざわめきたつ

妬む女共が感情に顔を歪める



「香奈美、いつ戻って来たの?」


「ひと月前よ、千奈美に会うのを

制限されていて居場所を探すのもたいへんだったの、行きつけのBARがあるって聞いてしばらく通いつめたわ」


「制限?おばさんね、許せない」


「千奈美だめよ、あんまり怒りっぽくなっちゃ」


ふふっと香奈美が微笑めばまるで花が

綻ぶかのようだ


どっちがよ


千奈美は心の中で毒づいたつもりだったが

「あら失礼ね、唯一の双子なのに」


まるで心が通じてるかの様に香奈美は

千奈美の考えてることが分かる様だった

















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