第5話:胡蝶乱舞
「いや~危なかったねー」
ニコニコと笑いながら乱童は自分の頭をポンッと叩いた。
「危なかったのはコッチの台詞だ乱童!!」
イリスは乱童を羽交い締めにする。あまり効いていないのか…腕の中でいつもの様にニコニコしていた。
このG戦地点に明かりが着いた時に見えた乱童がイリスを殺そうとしていた場面だが、とりあえずリュクが上手くイリスに一発入れ、吹き飛んだ乱童に如月が近寄り、術を解除する忍法をかけた。
この如月の、眩惑の術だが…発動条件は、相手が攻撃を仕掛けにきた時、目と目を合わせないといけない。しかも、それが相手が誰かに攻撃を仕掛けてる時は、発動しないと言う欠点まである。
「しかし…一体これは、どう言う事なんだ…??」
今の現状は、ビッグ・シールドが盾を出し城壁を背に動けない状態で、敵からの攻撃を受けている。
「私達が、ケケペラードに裏切られた…?」
「そんな馬鹿な事が…?」
イリス・乱童・如月は、いつ敵の歩兵が来ても良いように、ビッグ・シールドのすぐ後ろに待機しながら、前を見据えていた。
エリスは、アカガミの治療に専念し…残った4人は、会議を始めている。
実際、この10人が集まって1つの依頼をこなすなんてとても珍しい。
「依頼を配られた時点で、おかしかったんだよ…。俺達の依頼は、囮になる事。囮になるならば、ビッグ・シールドや乱童や博士が適任だろ?」
「そう言えば、俺達もおかしかったな」
リュクの話に、イリスが乱入してくる。
「俺達は、敵陣の真ん中に落とされる依頼が多いのに、今回は暗闇の中で個人同士の戦いみたいな奴だろ?そんなのは、ルシや如月、アカガミが得意とする戦法だぜ?」
「囮にもされて…敵陣の真ん中にも落とされて…俺は、伝説のカモノハシに会えるんだろうか…」
今度は、イリスの話に乱童が乱入してきた。乱童は、遠い空を見つめた。
「考えたくは無いが、今の現状では…ケケペラードに裏切られたとしか言いようが無いな…」
誰もが乱童の話を無視し、ルシは頭を抱えた。
「今の現状…とは、変わる可能性もあるということですか?」
博士は、機械いじりに没頭しながらルシに質問をする。
「今、私の鷹の目と梟の目を使って確認したのだが…向こうの山側には、一個隊しか確認が出来ていない…って言う事は、アチラの隊長を捕まえて聞き出せば、ケケペラードが裏切ったのか、その一個隊が裏切ったのかが判別出きるのでは無いか?」
治療を続けるエリスと、カモノハシの事で頭が一杯の乱童以外の人は感心をした。
「では、作戦は『相手の隊長を捕獲する』で良いでござるな?」
如月がニヤリと笑う。
しかし今、下手に飛び出せば…敵の狙撃隊に狙撃をされてしまう。だが、今の現状を維持していても何も始まらない。
「ルシ!作戦を練ってくれ!…ここにいる、乱童・如月・俺は、一発二発くらい撃たれても大丈夫だ!だから、お前の作戦に俺達は従うぜ」
イリスがでかい親指を建てて頷いた。如月も無言で頷く。
「分かった!でも、無理はするなよ?死ぬのは勘弁だからな!」
ルシは言い放つと、博士とリュクを見た。
「まず博士だ…君は、敵が攻めてきた時の罠の発動を重視してくれ!この廃墟に入れないくらいやってくれ!……リュクは、私が合図をしたら、周りの廃墟を出来るだけ破壊をして欲しい!」
次にハナを見る。
「君は、今まで博士が考えついた罠を製作してくれ。リュクが壊した瓦礫を使用してくれても構わない」
最後に、ビッグ・シールドの後ろに構える3人を見る。
「イリスは、ここで待機。一個隊と言えどもかなりの数の敵兵が押し寄せてくると思うので、その撃退を…乱童は如月を抱えて、【鳥】を使い、一気に敵本陣を叩いてくれ!」
要は、簡単に言うとリュクが巻き起こす砂埃に紛れて乱童が飛び出すと言う作戦だが、下手してタイミングが外れれば、身体中に穴が開いた乱童が完成すると言う訳で。作戦を理解してるのかしてないのか分からないが、乱童は自信満々に頷いた。
「それでは……やるぞ!」