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第3話:孤軍奮闘

「E戦地点…E戦地点…」

地図を片手にあっちに行ったりコッチに来たり落ち着かない乱童。

E戦地点が、小さく探しにくい物では無い。むしろ、今居る廃墟がE戦地点なのだが…

「良い天気…こんな日は、ピクニックをしたいですね~」

のほほんと歩きながら、エリスは空を見上げた。

「陽が落ちかけてるけどな…」

イリスもまた空を見上げた。



イリス組の依頼は、E戦地点での敵との交戦だった。作戦はそれだけ…。相手が何人だとか、どの様な敵とか情報は無し。

とにかく、情報を聞いた所で特に乱童やイリスは気にしなかった。

敵が攻めて来るのは、陽が落ちた夜。暗闇での戦闘に、イリスは慣れて居なかったが…その分、乱童は何回も経験してるらしいので、少しは気が楽になった。


「それでは、皆さん!夜までアチラの小屋でお休み下さい」

一人の兵士が近寄ってくると、小さな小屋を指差した。豪華とは言えないが、車輪と馬までついてる素敵な小屋であった。

「あれは、小屋って言うより馬車じゃ…」

「まぁ素敵!みんなでお茶でも飲みましょうよ!お馬さんも居てまるで夢の中の家だわ!」

イリスの言葉を遮りエリスが馬車に向かって走り出した。

「なんで、馬車に乗る必要が…」

「俺!寝るぞ!まだ、昼寝してないからな!!」

今度は乱童が馬車に向かって走り出す。

「いや…だから……」

二人は、何も疑わずに馬車に乗り込んだ。まぁ、疑う必要も無いのだが、完全に無視されたイリスはため息をこぼした。


「ぐぁ~…すぴすぴぴぃ~…」

「う~ん…食べれないと思うよ~…でも、食べる~…」

イリスと乱童は、馬車の中で眠っていた。別に疲れていた訳では無いが、乱童が気持ち良さそうに眠っていたので釣られてイリスも夢の中へ旅立っていた。

エリスはニコニコしながら、馬車に付いていた小さな窓から外を眺めていた。

陽は完全に落ち真っ暗闇の中、何故か馬車は走っている。何故走っているのか…そんな事は気にしなかった。


プルルルル…プルルルル……


突然、エリスの持っていた携帯電話が鳴り出した。画面に表示されてるのは、如月の名前。エリスは、電話に出る。

「もしもし?あっ…アカガミ?どうしたの?……うん!まだだよ!お兄ちゃんも乱童も何か眠ってる(笑)…大丈夫!心配ないよ。乱童もお兄ちゃんも居るから…」

電話の主は、如月では無くアカガミであった。心配して電話をくれたのだ。

その時、馬車が急ブレーキをかけた。小屋は揺れて、イリスと乱童はお互いに頭をぶつけた。

「きゃっ…大丈夫?お兄ちゃん…」

寝ぼけ眼で頭を押さえながらイリスは、手を振った。

「着いたみたい!…じゃあ、またね!」

エリスは電話を切る。その電話を切った時の小さくなった音で、乱童も目を覚ます。

「乱童…お前、起きるタイミングが違うだろ?」

大あくびをして目を擦る乱童を見下ろしながら、イリスはこれ以上言った所で無意味だと感じると、それ以上何も言わなかった。

「ほらほら、二人とも!お仕事お仕事!!」

急に張りきりだしたエリスは、乱童とイリスを馬車から追い出してから自分も降りた。

当初のE戦地点とは全く違う場所に連れて来られ、右も左も分からない。更に、灯りも無く真っ暗闇に覆われていた。

乱童はキョロキョロと辺りを見回してから、自分の足元にあった丁度良いくらいの大きさの石を真上に投げた。

「お馬さんに揺られて…楽しい旅だったなぁ~」

三人を降ろした馬車は回れ右をすると、来た道を引き返して行くのをエリスは眺めていた。

「……ったく、どいつもこいつも緊張感が無いのか…なぁ?乱童…」

頭を掻きながら、一番緊張感の無い乱童の方に顔を向けると、乱童はさっき投げた石を自分の手のひらに当てようとしてる最中だった。

「虎砲!」

乱童の手のひらと手頃な石の間に小さな光が集まると、スグに弾ける。その弾けた力によって石は真っ直ぐ暗闇の中に消えていった。

イリスは、腕を伸ばしてエリスを自分の方に引き寄せながら、近くにあった瓦礫に身を隠す。

「どうした?乱童!敵か?」

「いや…なんか気配がしたから…」

手をブラブラさせて、ぼーっと立つ乱童を見てから、イリスはエリスを離して瓦礫から身を出した。

「気配って…犬か猫だろ?」

いつの間にか出ていた冷や汗を拭いイリスは歩き出した。

「そうだね~」

乱童もまたニコニコしながら、一緒に歩き出す。

「ねぇタコさん?今、言うことじゃ無いんだけどさぁ…」

「今言うことじゃ無いんだったら、言わなくて良いぞ。お前の事だから、夕食は何だろうとかだろ?」

乱童の言うことは、いつもそんな物だった。前も敵に囲まれて、乱童と背中合わせに戦って居る時に、今言うことじゃ無い事を言われる事が多々あった。

「違うよ~…俺が言いたかったのは、そこ!」

乱童が地面を指差した。

「危ないよ」

イリスのデカイ体に、再度冷や汗の滝が流れた。イリスは、横に手を精一杯伸ばし何でも良いから掴み、そして自分の体を引き寄せる。

その瞬間…地面が大爆発を起こした。パラパラと砂埃が舞い地面の破片が空から降ってくる。

「乱童!てめぇ!そう言う事は、もっと早く言え!すぐ言え!」

声を押し殺しイリスは叫んだ。

乱童はいつの間にか剣を抜いており、イリスとは反対側の瓦礫に身を隠していた。

「あっ!タコさん!」

乱童は何かに気づいた様に、慌ててイリスに声を押し殺し叫んだ。

「今日のデザートって、プリンだよね?」

沈黙が流れた。イリスは、次に相手が何をしてくるか…どう動けば良いかを考えていたのだが、乱童の言葉で一瞬で考えていた事が霧散していった。

「あ…俺ね?上の黒い部分とプリンの部分をぐちゃぐちゃにして食べるのが好きなんだよね」

そんなイリスの事は露知らず…乱童の頭の中はプリンの事で一杯になってるのか嬉しそうに話を続ける。

「なぁ?エリスは、プリンは好きか?」

最初にイリスと隠れた瓦礫の後ろから、恐る恐る顔を覗かせているエリスに、振り向き様に話を聞く。

その瞬間…乱童の顔数センチのギリギリの所に、イリスの怒りの鉄拳が飛んできた。

「うわっ!タコさん!何をするんだよ!」

イリスの顔は真っ赤になっており、本当に茹でダコの様になっている。

乱童はちょっと怒りながら、伸びて来たイリスの太い腕をポンポンッと叩くと、何かを閃いたかの様に拳がある方まで静かに移動をする。

「乱童!今の戦闘の話以外は、何も口にするな!……って、何をやってるんだ?」

乱童が、自分が伸ばした拳の前で剣を抜き何かゴソゴソしている。

嫌な予感しかしないイリスは、急いで腕を戻そうとしたが…時既に遅かった。

「干支閃流!【虎】の虎爪(こそう)!」

乱童が剣に嵌めてある宝石に、魔法力を込めると宝石の中に【虎】と言う字が現れる。剣は、文字が現れると同時に光の塊となり乱童の両腕と合体する。

光が消える頃、乱童の両腕には、黄色の手甲とその先に伸びる鋭い爪が3本伸びていた。

乱童はニヤリと笑うと、必死に戻そうとしているイリスをチラッとだけ見てから、拳に手を当てた。

「極・虎砲!」

イリスのデカイ拳が、勢いよく吹き飛ばされる。先程の手頃な石を飛ばす以上の力だ。

イリスの腕は更に伸びながら、周りの瓦礫や建物を破壊していった。

「干支閃流!【巳】の蛇鞭(だべん)!」

乱童の手甲は、更に形を変え…今度は手の中に刃がついた鞭が現れた。

「乱童てめぇ!何をしやがる!」

勢いが無くなりやっと自分の所に戻ってきた拳を擦りながら、声を押し殺す事もしない程に叫んだ。

ちょうどその頃、乱童は暗闇の中に放った鞭の先を、戻してる最中だった。

「手応えあり!タコさん!一気に畳みかけるよ!!」

鞭は乱童の意思で、最初のただの剣に戻るとそのまま振りかざし暗闇の中に消えていった。

「乱童!無闇に飛び込んだら危ね……って遅いか」

イリスは、エリスにそこに居ろと言う合図を出してから、瓦礫の影から身を出した。

敵がまだ何人いるかは分からない…だが、乱童だって何人かは倒しきれないだろう。逃げてくる敵を排除するために、イリスは暗闇に向かって身構える。


しばらくすると、暗闇の中から誰かが走ってくるのが聞こえた。

きっと乱童が「終わった~」とか言いながら来るに違いないと思い、気を楽にすり。その油断が命取りになった。

暗闇から出てきた者は、イリスの体を押し倒し喉元に鋭角な物を押し当てた。

「ぐ…しまった!油断したか…」

イリスは死を覚悟し目を閉じた。





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