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第2話:背水の陣

「では!これより、G戦地点の説明をする」

ケケペラード国の紋章をつけた鎧を着た年輩の騎士が、整列して並ぶ若い騎士に指示を出す。

数にして30~40人くらいだろう。その一番後ろに、如月、アカガミ、リュクは並んでいた。

「これより我らは、G戦地点の城壁保護を行う!敵の舞台は、魔法系にて遠距離からこの壁を狙ってくると聞いた!そこで我らは、囮班と突撃班に分かれ、奴等を一網打尽すべきと思っている!」

如月は、頬をかきながら作戦を聞いていたが、少し不満があるようだった。

囮や守る戦いにおいて、ビッグ・シールドや乱童が適任なハズなのだが…と。


如月は、六法樹忍法の元始創立者の子孫であった。

人里離れた山に住み、平和に暮らしていたのだが、弟の子孫が開発した魔武器の試作をするために、六法樹忍法の里を消し飛ばしたのだ。

如月は、消し飛ばされる前に里の者に崖から川に突き落とされた。その時は運良く気を失うだけで済んだが、気がつくと今まで住んでいた山や里が綺麗に無くなっていた。


「いや…しかし…考えすぎか…」

もしかすれば、銃撃戦の激しい土地での開拓かもしれないし、力技だけで押しきる様な相手かもしれないし…

「如月…大丈夫か?何、一人でブツブツ言ってんだよ?」

アカガミが顔を覗き込んできた。あまり独り言をしない性格の如月を、少し心配している様だ。

「ん?ああ…何でも無い…余の考えすぎじゃ」

如月は前を向いた。一生懸命に説明をする騎士を見て、感じていた不安は少し和らいだ。

「囮班なのだが、少人数で連携も取れると言った理由で、君達遊撃隊に囮をやって欲しいのだが…」

指揮をとる騎士と目が合った。

「え…我らに囮になれと申されるのですか?」

如月が聞き返すと、騎士は頷いた。

「余は、今は無き六法樹の忍者です。余の忍法は、囮には向いていません…此方、アカガミやリュクもそうです」

「ふむ…しかし、その件については適材適所の要員として君達が選ばれた訳だが」

「なっ……んですと?我々が適材適所と申されたのですか?」

如月にさっきの不安がまた膨れ上がった。一気に仲間全員出撃の不安と、戦地点の同時出撃依頼。

仲間10人の特性や技も、全てケケペラードの上層部に伝えてあるのにも関わらず、滅茶苦茶な組み合わせ。

如月は、覚悟を決めて囮になる事を決めた。


G戦地点での作戦は、守るべき城壁を背に如月とアカガミが立ち、城壁の上からリュクが狙い撃つ。

敵が、如月とアカガミに気を取られてる間に本陣は2手に別れ遠回りして奥にいる敵本陣を叩くと言う作戦だった。

先見隊の話によると、敵の少数部隊がコチラに向かってきている。このまま来れば、陽は落ちた夜に戦う羽目になってしまう。

灯りの無いこの廃墟で、夜に戦うと言う事は…暗闇での戦いになると言う事。相手の姿も見えなければ、どんな攻撃を仕掛けてくるかも分からない厳しい戦いだ。

陽が落ちる前に、アカガミと如月はこの廃墟の下調べを済ませた。隠れる所が多いが、逆に敵も隠れる所が多い。本陣は2手に別れて陽が落ちるのを待っていた。

「他の皆は、もう終わってるかな…」

アカガミが呟いた。

「ああ…多分じゃがな…携帯電話なるものがあったの?まだ時間はある。ちょっと電話をしてみれば良かろう」

如月は懐をまさぐり、黒い小さな正四角形の電話を出した。

「ルシとエリスにかけてみるか?」

ボタンを押してから、アカガミに投げてよこす。通話しか機能の無い電話。特定の仲間に常に連絡が取れると、ルシ…ハナ…エリス…如月…リュクに与えられた。他の者にも渡したが、1日で潰れたり壊れたり改造されたりで、使い物にならないためにこの5人だけが持っていた。


「おう…エリスか?そっちはどうだ?依頼は終わったか?」

電話の相手はエリスの様だ。アカガミは今から依頼が始まる事と言うことを告げた。

「え?……おう!……ああ…分かった…必要なら、乱童を殴って見るのも1つの手だぞ(笑)…了解!気をつけろよ?またな……」

アカガミは電話を切ってから如月の方を見た。

「エリス組も、今から依頼らしい…今は馬車に乗ってて、乱童とイリスは爆睡中だとよ」

苦笑いをして次はルシに電話をかける。夕陽が山の向こうに落ちていく…。その光景を見ながら電話を自分の耳に向けた。

「危ない!!」

如月が叫びアカガミにタックルして横に一緒に飛ぶ。電話は地面に落ちてそのすぐ隣の地面に小さな穴が開いた。

「ちっ…狙撃隊か!リュク!!」

廃ビルに隠れながら城壁の上にいるリュクに目配せをする。リュクはそのアカガミの視線を受けとると、了解の意味で手を振った。


「全く…アカガミの奴…如月が居なかったら死んでたぞ…」

頭をぽりぽり掻きながら、陽が落ちていく山の方をじっと見つめた。

逆光になって見えづらいが、確かに何か動いている。

リュクは、悪魔の口の紋章が描かれている手を山の方に向けた。当たるかどうかなんて分からない…ただ、牽制になればそれで良いと言うだけだ。

「悪魔の弓矢!」

呪文を唱えると、その魔法が具現する為に必要な体力を失う。

リュクが向けた手から、何か蠢く茶色の光が山に向かって真っ直ぐ飛んでいく。

しばらく間を置いてから、大爆発が起きた。遠くの方で砂埃が舞い…それと同時期くらいに陽が完全に落ちて辺りは暗闇に覆われた。


「アカガミ!余は、向かい側のビルに隠れる!敵が近づいて来たらサインを出す!下手に突っ走るなよ」

辺りが真っ暗になった事を確認してから、如月は走りだし向かい側にあるビルの影に隠れた。

アカガミは自分の呼吸や心臓の音が、町中に響いてる気がした。真っ暗闇に包まれたこの廃墟。静か過ぎて不気味な空気を出している。

如月が合図を出した。敵が近くに居ると言う合図だ。

アカガミは、こっそり顔を出して確かめようとするが、暗闇で何も見えない。

「如月!どうするんだ?相手が見えない!」

アカガミは声を出来る限り押し殺して叫んだ。

「爆符を使う!一瞬でも相手が見えればそこを追撃する!」

如月が懐から【爆】と書いた札を出した。六法樹忍術の1つのなのだが、魔法では無いらしい…

如月は、目を見開きその札を見ると、瞳の中に【爆】と言う文字が写り込む。そして、目を閉じて気配がある方向に手裏剣を3枚投げた。

風をビュンビュン切る音が聞こえ地面に刺さる音と爆発音が同時に2回聞こえる。

それと同時に、リュクが後ろから追い撃ちをかけた。


爆発の光に紛れ相手の姿を確認しようとアカガミは、また顔を出そうとした。だが、自分が壁にしてるビルと如月が壁にしてるビル…そして地面に、切れ込みが入った。

「ちっ…相手も攻撃をしてきたのか!」

間一髪で斬撃を避け1回体制を整えようとした…だが、相手の攻撃は止まない。

姿の見えない相手は、がむしゃらに周りのビルを破壊し始める。運悪くアカガミが盾にしているビルが崩れ始めた。

「ちっ…次から次へと…」

アカガミは、如月の位置を確認して飛び出した。その瞬間に、暗闇で見えないハズなのに、正確にアカガミの左肩に何かが撃ち抜いた。

「アカガミ!」

その場に倒れ込むアカガミの元へ如月は飛び出す。相手の剣士だろうか…勢いよくアカガミに向かって走ってくる足音が聞こえる。

如月は、一瞬で死を覚悟した。だが、簡単にやられる訳にはいかない…

アカガミを背に守りながら振り向くと、敵の剣士が近くまで来て剣を振りかざしていた。

「余は…ただでは、死なぬぞ!余の…余の目を見ろ!!」

如月が両目を見開く…金色に輝く瞳を…この目で相手の目を合わせると……






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