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因みに私の生きる理由は推しなんだって?

「………ゾンビ。3体」


「ユウトくん!」


「〈ターンアンデッド〉」


 その後もダンジョン探索は順調に、特に罠等もなく進んでいた。


「このダンジョン。モンスターとの遭遇率があんまし高くねぇな………」


「まあまあ、まだ第一階層だからね」


 ダンジョン慣れしてそうなミクロとジャックがそんな会話をしながら周囲の警戒を怠らない。


「やっぱり、第一階層が簡単だと全体の難易度も低いのか?」


「大体の場合はそうだって聞いた事があるけど………」


 優斗は気になった事を隣にいたルチアに聞くも、曖昧な解答しか帰ってこなかった。ルチアもあまりダンジョンの経験が無いのだろう。答えてるうちに不安になったのか後方にいるジャックに視線を向け、その視線に気がついたジャックが続きを答えてくれる。


「確かに、その傾向が多いのは確かだね。だけど、全部が全部そうとも限らない。実際、超高難易度の一つの第一階層はここよりも難易度が低いって聞いた事があるよ」


「超高難易度のダンジョンなのにここよりも難易度が低いの………?」


 超高難易度ダンジョンの第一階層がここよりも簡単。その矛盾している事実にフィーナが前方から疑問を飛ばす。


「なんでも、挑戦者を油断させるっつう目的があるって聞いた事あるがな。第一階層でめいいっぱい油断させて、気が緩んだ冒険者を二階層以下で仕留めるって魂胆らしいぜ」


 意外とその手の情報に詳しいミクロからの補足が入り、優斗は納得する。


(確かに、俺だったら絶対油断するな)


 幾ら感知系のスキルを持っていても。幾ら超高難易度ダンジョンといえども。歴戦の冒険者や経験者では無い限りほぼ確実に油断するだろう。


「その情報を持っているってことは、君も件のダンジョンには興味があるのかなっ!?」


「その鬱陶しい仕草を辞めろ!まあ、冒険者足るもの。いずれそういうのは挑戦したいだろうよ!その為に、俺様は鍛えてるんだ」


 ミクロは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。


「やっぱり、そういった目的はあるんだな」


「なんだ?逆にテメェは何か無いのか?なにも目的も無く冒険者やるっつうのはあんましいねぇと思うが」


 ミクロに問われて優斗も少し考える。


(目的、か………)


 元々、異世界には興味があった。冒険もしてみたかった。そしてここに来て、ライナー達からの指導を受け、先輩冒険者を失った。


(確かに、目的も無いなら教会に行った方がいいのかもしれない………)


 けど、今はそれが出来ない理由がある。

 あくあを、未だ身元も身分も何も分からない迷子の少女を無事に家に送り返すという約束を果たさなければならない。一緒にいるという約束を守らなくてはならない。


「俺は、クズなのかもしれないな」


「あ?なんでそういう話になる?」


「いや、こっちの話しだ」


 本当の年齢こそ不明なものの、恐らく自分よりも年下の女の子を生きる理由にしている自分を卑下する優斗。


(まるで、寄生虫みたいだな………)


 他人を依代にしないと生きていけない害虫。優斗は自分こそがあくあの寄生虫なのかもしれないと考えるが


(でも、約束したからな)


 一緒にいると。無事に帰すと約束したのだから。誰がためでは無く己の為にそれを成し遂げようと再度心に決める。


「………罠。最後」


「ありがとうアル。みんな、後は二階層に行くだけだよ」


 アルからの報告を受け、ジャックが全員に声をかけると目に見えない危険が排除された安堵感と共に、次の階層を見据えて心の準備を決める。


「次の階層が、例の超高難易度ダンジョンみたいに難しくないといいね」


「やめてよフィーナ!冗談でもそんなこと言わないでよ!」


 フィーナの零した独り言をルチアが拾い、苦情を言う。優斗も正直そうでない方がいいが


「警戒するに越したことはねぇだろ。幾らこの辺のモンスターがあんまし強くねぇつっても、最近この辺でアイスフェンリルが出たって噂もあんだ。このダンジョンの難易度がそれ相応に高い可能性を視野に入れるのも間違いじゃねぇだろ」


 実際にアイスフェンリルと相対した優斗にその言葉はのしかかる。


「なあジャック。あんたは何度かダンジョン探索は経験してるのか?」


「おや?ユウトくん。何故この僕には聞かないんだい?」


「仕草が鬱陶しいから」


「辛!辣!!」


 髪をファサッとかきあげる動作を続けるユリウスを無視し、優斗はジャックに視線を向ける。ジャックはユリウスの言動を苦笑いしながらも優斗と質問に答えてくれた。


「そうだね。アルは言わずもがな。ユリウスも前衛としても優秀な人だからね。何回か簡単なダンジョンの攻略には行ったことがあるよ」


「じゃあ、このダンジョンの難易度がある程度予想できるんじゃないか?」


 優斗はジャック達の経験則を元に難易度想定をお願いする。


「そうだね………第二階層の難易度にもよるけど、生まれたてのダンジョンらしく、難易度は低めのダンジョンに見えるかな」


 ここまでのアルが解除した罠の頻度。モンスターの強さ。そして感じる魔力。それらを総合した結果としてジャックは難易度はそこまで高くないと判断した。


「あくまでも今までの経験から基づいて、だけどね」


「信じすぎるのはよくねぇが、疑い続けるのも悪手だなぁ」


「確かに。私たちもダンジョン探索はそんなに経験してないけど」


「ここが簡単だからって二階層からも簡単とは限らないもんね」


「そうですね。フィーナ様とルチア様の言う通りです。現に、私たちは一階層が簡単な高難易度ダンジョンの存在を知っている訳ですしね」


 上から順にミクロ、フィーナ、ルチア、あくあの順番にそれぞれこのダンジョンについて考察する。


「なんにせよ、問題は二階層以降だな」


「そうだね。一階層は言わば間引き。本番は二階層からだよ」


 気を引き締めるように。そういうジャックの言葉と共に二階層へと続く階段を見つけた優斗達は、暗闇が続く二階層へと歩を進めるのだった。

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