じ、時間が足りないよぉ…………一日に使える時間をもう少し増やしてほしいなぁ…………
「それでは、折角なので自己紹介でもしませんか?」
「じゃあ、最初は俺様からだな!」
弓を背負った少年が自己紹介を促すと、最初に立候補したのは大剣を背負った大柄の男だった。
「俺様の名前はミクロだ!見ての通りの大剣使いで、普段は一人で活動してる!」
ミクロと名乗った男は自信満々に自己紹介するが、優斗としては大剣使いが一人でクエストを行っていることに驚く。
何故なら、大剣とは強力で一撃の破壊力が強い武器ではあるが、その分取り回しにくく、機動力に欠ける武器であるからだ。一体の強力なモンスター相手ならいいかもしれないが、一体だけを相手にすることは少なく、大体は多対一を強要される筈だからだ。
だが、裏を返せばそれを強要されても生き残れる強さを持っていることの証明でもある。今回のダンジョン探索でも強い味方になるだろう。
「では次は自己紹介を促した僕が。僕はジャック。弓を主に使っていて、遠距離からの敵の確認やパーティの指揮を担当してるよ」
弓と合わせての指揮官役。となれば指揮系のスキルを習得している可能性も高く、指揮によるステータスのバフも期待できるだろう。
「そして、僕のパーティメンバーが」
「………アル」
ジャックがフードを被った男に視線を向けると、フードの男は静かに自分の名前を名乗る。
「あはは。ごめんね。アルは、ちょっと自己主張が少ないだけなんだ」
と言われても、何を得意としているのかわからなければ意味が無い。現に、あくあも困惑している。
「おいおい!自己主張が少ないって言っても限度があるだろうよ!そいつの得意なことはなんだ!?」
「アルはアサシン系のスキルを幾つか習得してるから、奇襲や探知が得意だよ。後は、威力はあまり高くないけど〈中級魔法〉も使える。戦力としては心強いよ」
見るからに短気なミクロが吠えた事で、ジャックも改めてアルの説明をし、アルも小さく頷く。
(それにしてもアサシンか………)
斥候の役割をしていたエレンと似たようなものだろうか。
「それで、僕の最後の仲間が………」
「それがこの僕!名前はユリウス!デゼスローンの貴公子とは僕のことさ!」
「いや聞いたことねえぞ。嘘ついてんじゃねえよ雑魚が!」
「それは酷いなミクロくん!僕はこんなにも麗しい貴公子なのに!ねっジャックくん!」
「僕も、君からしか聞いたことないけどね」
ユリウス。見た限りお調子者という訳でもなさそうだが、ナルシストが入ってるのかもしれない。装備はバックラーと槍を扱う様で、ジャックたちのパーティの前衛だと思われる。
「「それじゃあ次は私たちだね!」」
次に声を上げたのは似たような顔の少女二人だった。恐らく姉妹だろう。
「私はルチア。魔法使いです!」
「私はフィーナ。双剣使いです!」
名前こそ似ていないが、顔も殆ど同じだし、服も似ている。強いていえばルチアが赤を基調とした服に加えて杖を持っている。そしてフィーナは青を基調とした服を来ていて腰には2本のショートソードが刺さっているのが見える。
「あくあと申します!剣と魔法を使えます。よろしくお願いします!」
「優斗と言います。普段はあくあとパーティを組んでて、俺もあくあも神聖魔法を使える。怪我の心配はしなくてもいい」
あくあと優斗も無難に自己紹介を終える。
「神聖魔法を使える?それは期待出来るな!」
ミクロは本当にありがたそうに声を上げる。
実際、ミクロみたいな重戦士系の冒険者は怪我が付き物だ。それをカバーするための立ち回りはしているだろうが、1人なので怪我をする時はどうしてもしてしまう。
ミクロにとって、回復魔法を使い手は、喉から手が出るほど欲しい人材だろう。
「へぇ。それは僕としてもありがたいね」
「そうだねジャックくん!この麗しい顔に傷がついてしまうと、世界の損失だからねっ!」
「………誰も貴方の顔を麗しいとは思ってない」
「辛辣だねっ!アルくん!」
なんだか賑やかになって来た。あくあも、緊張しているからか優斗と後ろに隠れてはいるものの、目を輝かせながらミクロ達を見ている。
「ねぇねぇあくあちゃん!私たちと喋らない?」
「同じ女の子の冒険者同士だし、仲良くしたいの!」
そんなあくあと仲良くしたかったのかルチアとフィーナが話しかけて来た。
「ユウト様………」
不安なのか優斗の事を見てくるが。
「まあ、社会勉強だと思ったらいいんじゃないか?」
優斗は優しくあくあの背中を押した。
無論、本気で嫌がるのであれば余裕で抵抗出来る程度の力だが、あくあも心の中では話したいと思っていたのか抵抗もせずにルチアとフィーナの元へと歩を進める。
「麗しき少女たちの逢瀬は目の保養になるね!君もそう思うだろっ?」
あくあを見送った優斗に話しかけて来たのはユリウスだった。
「なんだ?そんなナルシストみたいな口調ではなしておいて視姦する趣味でもあったのか?」
「なるしすとがなにかはわからないが、いきなり辛辣だね?僕たちは初対面だろっ!?」
そんなこと言われても、ナルシスト口調の男が目の保養とか言っても、優斗的には気持ち悪いとしか思わない。
「でも、冒険者同士仲を深めるのはいいことだと思うよ?今回のクエストはダンジョンの探索だし、余計にね」
「ジャックくんの言う通りさっ!それに、麗しき乙女たちは僕が守るっ!三人一緒の方がいいって言うものさっ!」
ユリウスは髪をファサッとかき揚げながら言う。ビジュアルが鬱陶しい。
「ごちゃごちゃ話すのはいいがよ?戦闘では役にたてよ?特に魔法使いと感知系スキル持ちは要だ」
「それは俺もわかってるよ」
優斗は兎も角、あくあが足を引っ張る可能性は低いだろう。
「………あれが、入口」
アルが小さく呟くと、前を見ていたミクロと、優斗が真っ先に反応した。続いてユリウスと話していたジャックが反応し、ジャックの反応でユリウスもダンジョンの入口に気が付く。
「入口は、階段なんだな」
入口はどう見ても階段だ。地下に続く階段が見える。
「中は、真っ暗ですね」
ダンジョンに気が付いたあくあが入口まで近付くと中を覗き込む。
「ダンジョンは基本的に真っ暗なの」
「だから、光源が必要って訳」
ルチアとフィーナはそう言いながらランタンを取り出した。
ダンジョンにはアンデッドや悪魔なんかも生息している事が多い。神聖魔法の使い手である優斗とあくあは貴重な戦力だ。
「じゃあ、突入前にそれぞれの持ち場を確認するね」
ジャックは一度全員を集めると持ち場の確認を始める。
「基本的に指示役の僕は後衛で弓での援護をしながら指示を出すね」
「まぁ、指揮官はそっちの方がいいわな」
これに関してはミクロにも反対意見は無いようだ。他の全員も頷いてる。
「そして魔法使いのルチアさんとユリウスとユウトくんは中衛。ミクロくんとフィーナさんとあくあさんは前衛でお願い出来るかな?」
「「了解だよ!」」
「ま、それが妥当だわな」
「俺もそれでいいぞ。あくあは?」
「わ、私も大丈夫です!」
殆どは賛成したが、一人だけ賛成しない人がいた。
「なぜこの僕が中衛なんだい!?」
ユリウスだった。確かに、小さいとは言え盾を持っているから前衛でも大丈夫そうだが。
「君は攻撃を受けると言うよりも接近してきた敵の攻撃を逸らすことに長けてるだろ?だから、前衛と後衛のどちらも上手くカバー出来る中衛が適任だと思ったんだ」
その役割を任されるということは、ユリウスは特に忙しい役回りになるということだろう。ある意味同じパーティで実力を知っているジャックだからこそユリウスを中衛に配置したとも言える。
「君が僕に期待した結果というわけかっ!」
「そうだね。同じパーティの君なら、上手く対応してくれると判断したんだ」
「それなら!その役割を全うしようではないかっ!」
どうやら上手く纏められたらしい。
「それで、アルは?」
そこで、優斗は思っていた疑問を投げつける。
先程の配置で、アルだけは名前を呼ばれなかった。
「アルは遊撃。潜伏と暗視、感知系スキルを使って斥候みたいに動きながらそれ以外は基本的に中衛かな」
そのことに異論は無いのかアルも小さく頷いている。
「それじゃあ、ダンジョン探索。突入するぞ!」
やる気を出したミクロを筆頭に、優斗たちはダンジョンに突入した。




