あなたは今嘘をつきましたね?それがなにかおわかりですか?
戦闘の後、優斗は男を拘束し、言葉を話せないように口を封じた。その後、余波で生まれたゾンビを成仏するためにゾンビ達を集めた後、一斉に浄化。これで、この事件は一旦解決となった。
男は警察に引き渡し、宿屋に戻ってあくあと合流した後、優斗は冒険者ギルドに向かった。
「ユウトさん!聞きましたよ?墓地を荒らしていた犯人を捕らえたと」
ルリナがそう言って祝ってくれるが、優斗の後ろにいるあくあは頬を膨らましている。
それはそうだろう。一緒に討伐に行くはずだったのに、寝ている間に優斗が全てを終わらせたのだ。怒るのも仕方ない。
「むぅぅ………」
「えっと、あくあちゃんは連れて行かなかったんですか?」
「そうなんです。疲れてる様子だったんで」
そう言えばルリナは納得してくれるが、あくあは納得しない。後で謝ろうと優斗は心に決めた。
「それで、なにか情報は得られました?」
「それが、確かに〈召喚魔法〉の魔力でゾンビが目覚めたのも認めたみたいですし、ハイ・レイスを召喚したのも彼みたいなのですが、動機は依頼だから、だそうです」
「依頼だから?」
つまり、この街を脅かそうとしている人物が裏にいるということだろうか。
「依頼人の情報は持っていないみたいでして………」
「まあ、こんな危ない橋渡ってるんだからそれはそうか」
元々、裏にいた人物についてはそこまで期待していなかった。
「どちらにせよ、警戒しないとダメですね」
「はい。今後、同じ人物から依頼された人が出ないとも限りませんし」
「それに、今回が初犯とも限りませんよね。俺たちが気がついていないだけで、どこかでもう被害が出ている可能性も………」
まあ、それを今考えてもしょうがない。
「ひとまず、ユウトさん達はこの街の平和を守ってくださりましたので………」
ルリナはそこで言葉を一度止めると、下から袋を取り出した。
「こちら、金50万ブカとなります」
「………え!?」
50万ブカ。それは優斗がこの世界に降り立った時の初期金額だ。そう聞くと少なく聞こえるが、日本円にして50万円。
「そんなに?」
「いいえ、これでも少ないくらいです。本当はもっと沢山報酬があっても良かったのですが、あの召喚術師が初犯で、被害もありませんでしたので報酬も少なめとなっております」
それでもかなりの金額だ。これでダンジョン探索の準備に専念できるだろう。
「それと、こちらもお渡し致しますね」
そう言ってルリナは別の袋を取り出して優斗に渡した。
「えっと、これは?」
「ライナーさんたちのお墓の代金。そのお釣り、2億ブカです」
「これは、全部墓代にして欲しいって言ったと思うんですけど」
お釣りという存在を許せなくて優斗はつい怒気を混ぜながら言ってしまう。
「はい。その通りです。ですが、どんなに高級なお墓でも、王族が使うようなお墓を使って、一人1億ブカだったんですよ」
「じゃあ、残りの金でなるべくいい場所に」
「グレンさんの希望もあって、この街の共同墓地で3人は眠ることになりました」
グレン。その名を聞いて、優斗は少し気まずくなる。
「なんで………」
「遺体が傷まないように。それと、なるべく馴染みのある街で眠らせたかったからみたいですよ。そう考えると、優斗さんがアンデッド騒動を解決したのは、運命かもしれないですね」
それが運命だとしても、優斗の答えは変わらない。
「その2億ブカは俺は………」
「このお金は、あくあちゃんの為に使うべきです」
優斗の言葉を遮ってルリナは言った。
「以前言いましたよね?あくあちゃんは貴族絡みの厄介事に巻き込まれている可能性がある、と。そして、その可能性が高い今、少しでもお金が必要なはずです」
「でも、あの3人の功績を」
「あの3人のパーティメンバーはあなたで、それを受けてる権利がユウトさんにはあるんですよ。それに、本当にユウトさんがあくあちゃんを守ると決めたのであれば、まずはお金。これは手に入る機会があるのであれば、受け取らなければなりません。四の五の言ってる余裕は、無いんですから」
あくあを守る。その事を言われると少し弱くなる。
「あなたに覚悟があるのでしたら、過去の仲間の遺したお金でもなんでも使ってあくあちゃんを守る。その程度の覚悟は持つべきです」
それが例え、望まれてなくても。
「じゃあ、無駄遣いしないように気をつけるよ………」
優斗は釈然としない気持ちを抱きながらも、2億ブカを受け取る。
(この2億は、命の重みだ)
本来ならば、遺族に渡すべき金なのだろう。だが、冒険者ギルドは規定に乗っ取り、生き残ったパーティメンバーに報酬を渡す。
ルリナは一度断られたその金を、私情を含めて優斗に渡した。
この2億だけは、無駄遣いしてはいけない。静かに、しかししっかりと心の中で刻んだ。
それはそれとして。
「むぅ〜………」
未だに頬を膨らませているあくあをどうにかしなくては。
「ごめんな、あくあ。一人で討伐に行ったりして………」
優斗は謝るも、あくあはまだ頬を膨らませている。
「なあ、あくあ………」
「ユウト様は何もわかっていません」
口を開いたかと思うと、あくあはそんな事を言い出した。
「何もわかってないって?」
「ユウト様は、何故私が怒っているのかわかってません!」
何故怒っているのか?
「そんなの、俺があくあを置いてアンデッドの元締めを倒しに行ったからじゃないのか?」
「違います!そんなことじゃありません!」
が、優斗の予想は外れてしまい、あくあは更に怒ってしまった。
「え?じゃあ………」
「私が怒っているのは、一人で危険な場所に行ったからです!」
「えっと、だから、俺が勝手にアンデッドを倒しに行ったから………」
「違います!ユウト様は何もわかってません!」
困惑する優斗を外に、あくあは涙を流しながら言う。
「危ないところだったんですよ!?依頼だって言ってたそうですし、他に仲間がいたかもしれないじゃないですか!それに、レッサーデーモンまで召喚したと聞きましたよ!?危険なことはわかってたじゃないですか!悩んでたじゃないですか!二人でも難しいってわかってたじゃないですか!それで、何故一人で行こうと思ったのですか!?」
あくあは泣きじゃくりながら言葉を紡ぐ。
そうだ。あくあの言ってることは間違っていない。仲間がいた可能性もあった。自分よりも強い敵がいた。今までのクエストよりも危険なことはわかりきっていた。解決策に、悩んでいた。
「私を、守るって、救ってみせるって言ったじゃないですか!それなのに、私を置いていくのですか!?」
「そう、だな………」
本当に、その通りだ。
「私は、今!あなたがいないと生きていけないのですから!」
これは、優斗の新しい罪だ。救うと決めた女の子を置き去りにしようとした、優斗の罪だ。
「ごめん、あくあ。考えが浅かったよ」
「………」
あくあは涙を流しながら嗚咽を零す。
優斗はそんなあくあを優しく抱きしめる。突然のことにあくあも一瞬動揺していたが、直ぐに優斗に身を委ねた。
「もう、あくあを置いて行ったりしないから」
「本当、ですか?」
「絶対に。俺がお前を救うって、そう約束したからな」
「………その約束、忘れないでくださいよ」




