人のポンを笑う人っているけど、人って大なり小なりポンコツだと思うの
「なるほど。アンデッドを呼び起こしてる存在、ですか………」
ハイ・レイスを討伐した後、優斗とあくあは墓地の事をギルドに報告に行った。
ゾンビの数が多かった事。ハイ・レイスがいた事。そして、ゾンビの大量発生の原因はハイ・レイスでは無いこと。
「それにしても怖いですね。死神では無いとはいえ、自我を持った強力なアンデッドがいて、それを今まで気が付かなかったなんて………」
「まあ、誰も調査してませんでしたからね」
今回優斗とあくあが墓地に入り、ハイ・レイスを討伐。そして、少なくとももう1匹同格以上のアンデッドモンスターが存在していることが判明した。
「ハイ・レイスが嘘を言っていた可能性もございますが」
「でも、あの戦意丸出しの状態で嘘を言う理由も無いだろ。もしあれがブラフだとしても、戦闘中にゾンビを集めないのはおかしい」
それに、帰り道にもゾンビとは遭遇している。
つまり、ハイ・レイスがゾンビを呼び起こしたにせよ、呼び起こしていないにせよ、術者はもう一人いる。
「ですが、敵対してこないのが疑問点ですよね」
「そう。それが問題なんですよ」
呼び起こされたゾンビは、多少なりとも敵対してくる。だが今ルリナが言った通り、ゾンビは敵意を見せなかった。
結局話しは一度そこで終わり、優斗とあくあは報奨金として6万ブカを貰ってから宿に帰った。そう、作戦会議のために。
「作戦会議、ですか?」
「そうだ。今夜の、討伐作戦の為に」
今は一つでも情報が欲しい。だが、ルリナは忙しい。優斗たちが離れたあとも、なんだかんだ別の人が受付に来たのだから。
「今夜。アンデッドの討伐ですね?今回は黒幕の」
「そうだ。誰がゾンビを起こしているのか。それがわからなければ話にならない」
「ただゾンビを起こすだけではあの反応は有り得ません。となると、必然的に強力な魔力に当てらて目覚めさせられたかになりますね」
あくあの言う通りだ。ならば、最悪上位のアンデッドが登場する可能性もある。
「やっぱり〈中級神聖魔法〉の使い手が1人は欲しいよな」
それを持っているだけで教会でもそこそこの地位になれると言われているスキル。〈中級神聖魔法〉。
「ですが、教会から人手を、それも〈中級神聖魔法〉の使い手を頼むとやっぱりお金が………」
「そうなんだよなぁ」
やはりこの世界では治癒魔法の使い手が限られているからか治癒を頼む時の代金はそこそこ高い。そして、更に上位の神聖魔法使いともなると、更に料金が高くなる。
もちろん優斗にそんな支払い能力は無い。わざわざ忙しい〈中級神聖魔法〉の使い手を呼ぶことなんてできないのだ。
ならば純粋なアタッカーに足止め。そして神聖魔法の連打。これしかない。
「一応、ステータス的にはあくあなら足止め出来ると思うんだけど、さすがに任せる訳にはいかないしな」
ステータスが高くても、まだまだ駆け出し。そして、相手が更にステータスが高い可能性もある。
「相手がどのようなモンスターかわかれば対策できるのかもしれませんが」
「姿を確認しないのは悪手だったか?いや、あの状態で確認に行ったら絶対に怪我していた。だったらこの選択は間違ってなかったはずだ」
でも、溢れ出す魔力だけでゾンビを呼び起こすということは、かなり高位のアンデッドの可能性が高い。それも魔法系の。
リッチー。ヴァンパイア。死神。そのいずれかの可能性が否定できない。
「いずれにせよ、俺たちの敵余る案件だし、明日ギルドで協力者を募ってみるか。街での事案ってなると協力者も多いかもしれないしな」
「そうですね。では今日はもう作戦会議は終わりにして、街に行きませんか?」
そういえば、日中はダンジョン探索の準備をする話だったなと思い出し、優斗はあくあと一緒に出かける。
出てきたのは通称冒険者通り。冒険者が生活し、活動する上で大切なものを売っている店が幾つも並んでいる通りだ。
「私、このお店を見てみたいです!」
あくあがそう言って足を止めたのは小さな服屋。
「いいけど、また服か?」
「ただの服ではありませんよ?それに、少し見てみたいだけです」
そう言って一緒に入ると、確かにただの服屋ではないみたいだ。
「エレンに紹介されたあの店は本当に動きやすいただの服だったけど、こっちは魔法の加工がされてるんだな」
「みたいですね。ここはどちらかと言えば駆け出しの街なのであまり種類は多くありませんが、その分安価でもいいものが揃えられています」
所謂ドレスアーマーと言えばいいのだろうか。一見すればただの服だが、様々な魔法が付与されており、魔法無効のローブや、防御力が上がる服までも置いてある。
「ファンタジー特有のやたら防御力のある服って感じか」
安価な鉄の防具よりもよっぽど防御力があるように見える。
しかしやはりその分高い。安価とは言っていたが、それは他の街の魔法服に比べればの話で、この店で1番安価な服も一着15万ブカだ。高すぎる。
「高いな………」
「比較的安価と言いましたが、やはり製作が難しいですからね」
あくあは一通り見て気が済んだのか優斗の元に戻ってきた。
「もういいのか?」
「はい。少し気になっただけですので」
だが、あくあは未練がましい目を向けている。
(やっぱり、欲しかったんだな)
だが、あくあには悪いが今はそんな余裕は無い。やはり二日間も引きこもっていたのが足を引っ張っている。こんなことなら真面目に働けば良かったと思う反面、あの頃に変に働いても失敗していた自信があるのでなんとも言えない。
次に来たのはポーションの店だ。この店に来た目的はやはりポーション。それも状態異常回復のポーションと魔力回復のポーションだろう。
「ポーションは比較的安価だな」
「ですがその分、効果が強いポーションは無いように見えますね。〈エリクサー〉が売っていないのがその証拠です」
〈エリクサー〉。ゲームでもよく見る万能回復薬であり、飲めば状態異常は勿論。怪我も治り、魔力も回復する優れものだ。しかし
「駆け出しの街に、そんな高価な薬を置いても買う人もいないだろうしな」
居るとしても、教育係の上級冒険者だけだろう。
「ユウト様。〈聖水〉も売ってますよ」
「〈聖水〉ってポーション屋で売るものなのか?教会の専売特許ってイメージなんだが」
何故か〈聖水〉も販売していた。優斗的には是非とも教会で販売して欲しいのだが。
「やはりそこは神聖魔法を使えない人用では無いでしょうか。〈聖水〉がアンデッドに有効なのは間違いありませんし」
〈聖水〉がアンデッドに有効………
「この〈聖水〉ってさ、どんなアンデッドにも等しくダメージを与えられたっけ?」
「確かそのはずですね。これだけで倒すのは難しいと思いますが、一定のダメージは等しく与えられるはずですね」
あくあに聞いたものの、優斗に〈聖水〉を買う気は無い。しばらく〈聖水〉を見つめた後、素直に他のポーションを一緒に見る。
「気になるポーションは幾つかあるけど、その前に金策だな」
「ですね。なので、明日もアンデッド討伐頑張りましょう!」
あくあは気合いを入れている。だが、優斗は気付いている。あくあが今日は一日中眠そうにしているのを。高いステータスと気力で抑え込んでいる様子だが、それも長くはもつまい。
だからこそ、優斗は決心する。
今日、一人で元凶を撃つことを。




