肝試しってドキドキするよね!やっぱりデートで行きたいよね!!
アンデッド討伐を決めた日の夜。優斗たちは街の共同墓地に来ていた。
「夜の墓地って雰囲気がありますよね」
「そうだな。はぐれないように捕まってろよ?」
「じゃあ、手を繋ぎませんか?なんだか雰囲気が出てドキドキします!」
「やっぱりこの状況を楽しんでるよな?」
優斗たちがギルドで聞いた情報。最近、この墓地に怪しげな影を見かけるという。アンデッドモンスターの可能性があり、今は墓地から出ていないから半ば放置されているらしい。
モンスターなら討伐すれば?と思うかもしれないが、墓地に出るアンデッドはそうもいかない。安らかに眠った人の魂か、その体か。どちらにせよ上手く成仏できなかった魂がこの世を彷徨っている可能性があるのだ。その者達に無闇矢鱈と剣を向けては、怨みで上位のアンデッドになる可能性も0ではない。
そのため、墓地に出るアンデッドモンスターは基本的に神聖魔法が使える人、主に聖職者に頼んでいるのだが、今の時期は何やら忙しいらしく、中々アンデッド討伐まで手がまわっていないらしい。そもそも墓地から街に行かないのであれば害は無いのだ。後回しにされるのも仕方はないだろうが、遺族からしてみれば早く成仏させて欲しいと思うのも自然だろう。
そこで白羽の矢が立ったのが優斗とあくあだ。2人とも神聖魔法が使え、それでいてアンデッドモンスターの討伐を望んでいる二人。条件として都合が良く、神聖魔法で倒すという条件があってもこれほど都合がいい存在もいないのだ。
「それであくあ。〈敵感知〉に反応は?」
「反応ありません。そもそもそのアンデッドが敵意を持っていない可能性もありますし」
「なるほど。じゃあ、〈魔力感知〉は?」
「そちらは反応がありますが、夜の墓地は魔力に満ちていますので、墓地全体から反応がありますね」
月の力、というやつだろうか。そもそも魔力がないと起き上がらないだろうから当然と言えば当然だろうが。
そんなことを考えていると、優斗たちの目の前をゾンビが通り過ぎた。
「ゾンビですね。ですが………」
どうやら本当に〈敵感知〉が発動しないらしい。そうなると本当にただの迷子の可能性がある。
「一先ず浄化するか。〈ターンアンデッド〉」
優斗が浄化の魔法を唱えると、ゾンビは安らかに天へと登って行った。
「これでゾンビの浄化は終えましたね」
「いや、まだ他にもいる可能性はある。墓地を見回ろう」
ということで優斗とあくあは引き続き墓地を見回る。ちなみに浄化している時も、この時も2人はずっと手を繋いでいる。
「そういえばあくあは〈索敵〉を取らないのか?」
「確か、自分が敵意を持つ相手の居場所がわかるスキルですよね?私とは相性が悪そうですので」
つまり、あくあは害意を持つことが少ないのだろうか。生きているのだから多少なりともそういう気持ちはあるのではないかと思ったりするのだが。
「?あの、ユウト様。今〈敵感知〉が反応しました」
と、その後も引き続き二人でゆっくりと数匹のゾンビを浄化していると、あくあがそんなことを言い出した。
「〈敵感知〉に反応?ってことは、自我を持ったゾンビがいるのか、それとも」
別の存在がこの墓地に侵入しているのか、だ。
正直、優斗はその可能性も考えてはいた。ゾンビは確かに墓地では自然発生する。頻度こそ少ないものの、それは有り得るのだ。
だが、今日見つけたゾンビの数はもう5匹になる。詳しく記載していなかったが、5匹も浄化したのだ。
これは自然発生するゾンビの量としてはおかしいのだ。故に
「このゾンビ達には、復活させた黒幕がいるってことだな。場所は?」
「墓地の中央にいるみたいです」
優斗は剣を抜き、いつでも神聖魔法を放てるように準備する。
「じゃあ慎重に行くぞあくあ。〈潜伏〉」
優斗は手を繋いだまま〈潜伏〉を発動する。これは自分の気配や匂いを限りなく0に近づけるスキルだ。透明化の魔法と違って完全に姿を見えなくする訳では無いが、匂いも消せるので隠密行動としてはこちらの方が上だろう。
このスキルを使い、優斗とあくあの姿を隠し、中央まで近づく。
そして墓地中央に鎮座する何かを見つけた瞬間
「〈ターンアンデッド〉!」
優斗は躊躇いなく浄化魔法を放った。
「アビャビャビャビャビャ!!」
「ユ、ユウト様!?」
あくあも優斗の突然の行動に驚いている様子だった。
「あくあ、いいか?大事なことを教えてやる」
「な、なんでしょうか?」
「油断大敵。先手必勝」
「それ、絶対意味が違うと思います!」
そんなあくあのツッコミを受け流しながら、優斗はもう一度浄化魔法を撃った。
「〈ターンアンデッド〉」
だが再度放った浄化魔法はその存在には躱されてしまった。
「小賢しいな」
「あの、こちらが悪者に見えるのですが………」
それはきっと勘違いだろう。そう思いながら優斗はあくあの前に立ち
「〈ターンアンデッド〉」
遠慮なく再度浄化魔法を放つ。
「サッキカラウットウシイワ!」
だが、そのアンデッド。死神みたいなアンデッドは持っていた鎌で浄化魔法を斬り裂いてしまった。
「死神?いや、俺の浄化魔法でダメージを負ったってことは、その下位互換のハイ・レイスか」
レイスの上位種のハイ・レイス。自我が気薄なレイスと違い、確かな自我を得たのがハイ・レイスだ。レイス系は主に魔法を主体として戦うはずだが。
「ユウト様。今、風の魔力をあのハイ・レイスは鎌に纏っていました。それに、鎌は刃こぼれしています。浄化魔法は通用しています!」
あくあの観察眼は流石だ。
「キサマラ、サキホドカラワガハイニウラミデモアルノカ?」
「いや。強いていえばお前がゾンビを呼び起こしてる犯人だろ?」
優斗は剣の切っ先を向けながら問いかけるが
「イイヤ?ワガハイニソノヨウナチカラハナイ。タシカニゾンビガオオクテフシゼンダトハオモッタガ、ソレハベツノモノノシワザダロウ」
このハイ・レイスの仕業じゃない?
「じゃあお前は黒幕の存在を知っているのか?」
「シラヌナ。〈ウィンドカッター〉!」
もう少し話しを聞こうとすると、ハイ・レイスは痺れをきたしたのか攻撃を仕掛けてきた。
「ユウト様!」
だがハイ・レイスが放った風の斬撃はあくあによって簡単に斬り裂かれてしまった。
「ナニ!?」
「はぁ!」
ハイ・レイスが油断した。一瞬の隙をついて、優斗は懐に入り、剣を振るう。
「ヌン!」
ハイ・レイスは何とか抵抗しようと鎌を振るうが、優斗の剣と衝突した瞬間に刃が折れてしまった。
至近距離。ここから放てば魔法は当たる。いや、それは間違いだ。油断しているが、ただ撃つだけでは避けられる。
だったらと、優斗は拳を握った。
「ユウト様!?」
「チマヨッタカ!オロカナニンゲンヨ」
油断している。その隙を優斗は全力でつく。
〈弱点看破〉によれば弱点は心臓部分。
「〈ターン………」
拳から神聖な魔力を放ちながらハイ・レイスに殴り掛かる。ハイ・レイスもそれを察して慌てるも、油断していた影響もあり上手く動けない。
「………アンデッド〉!!」
殴った瞬間に放たれた魔法は、物理攻撃と共にハイ・レイスに放たれ、ハイ・レイスを消し炭にした。




