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つ~よく~な~れた~りゆう~をし~れた~ぼ~くを~お~いて~す~すめ~

タイトルが大丈夫か心配かどうかハラハラしている今日この頃

最新話でございますよ

 討伐クエスト。採取クエスト。護衛クエスト。冒険者にとってメジャーとも言える3つのクエストを優斗は体験し、クリアした。


 そして護衛クエストの戦闘後にレベル11になった優斗は習得可能スキルに新たなスキルが増えていた。

 その名も〈片手剣〉と〈危険感知〉だ。

 〈片手剣〉は読んで字のごとく剣の扱いが上手になるスキルだ。まあ大剣の扱いは上手くならないし、二刀流も上手くはならないが。

 〈危険感知〉は重要な感知系スキルだ。習得しておいて損は無い。


 さて、そんな優斗だが、悩みはある。

 それから冒険者を続けると考えると、優斗に圧倒的に足りないのは火力と耐久力だろう。

 攻撃手段は剣のみであり、その剣に関しても漸くスキルを習得したばかり。

 耐久も耐性スキルは〈自然影響耐性〉だけであり、他の防御系のスキルも無い。

 ちなみに〈逃走〉や〈縮地〉の様な素早いスキルも持っていないので素早さも足りない。


「スキルそのものは習得してきてるんだけどな………」


 ギルドカードを見ながら思わず愚痴を言ってしまう。


「まあ、悩んでもしょうがないか」


 3日連続でクエストをした事だし、今日は休みにしようとライナーに言われていた優斗だが、自身の強化のためのアドバイスを貰うために冒険者ギルドに向かうことにした。


「えっと、ライナーたちは………」


「ライナーたちは今日は王都のギルドの方に顔出してるよ?」


 と、ギルドに着いた優斗に声をかけてきたのはエレンだった。


「あ、エレン。王都のギルド?」


「うん。冒険者ギルドの総本部があるのはこの国じゃないんだけど、一応このディスペニア王国の冒険者ギルドを管理してるのは王都のギルドだからね。ユウトくんの指導の経過も含めて色々としに行ったの」


 この国の名前、ディスペニア王国って言うのか。初めて知った国の名前と一緒にエレンがいることに疑問を覚える。


「エレンは行かなくてもいいのか?」


「私は大丈夫。ライナーはリーダーだから行かなくちゃいけないけど、報告に行くのは1人でも大丈夫だしね。キースはついて行っただけ。私は行く必要も無いから残ったの」


 エレンが王都に行ってない理由はわかった。それに、エレンも冒険者としては大先輩だ。エレンに聞いても損はあるまい。


「それで、ライナーを探してどうしたの?」


「いや、俺が強くなるためのアドバイスをもらおうと思ったんだけど、エレンから見てなにか無いかな?」


「ユウトくんが強くなる為に?」


「そう。ほら、俺ってレベルも上がってスキルも増えてきたけど、火力は決定打にかけるし、耐久も無いからさ、もし強敵が現れた時はどうしようかなって思って」


「え?逃げればいいと思うよ?」


 と、優斗の悩みをエレンは一瞬で解決してしまった。


「いや、それでも………」


「そもそもだよ?レベルが高い低い関係なく、強敵とは本来戦わない方がいいの。特にユウトくんは新人冒険者なんだから逃げるのが正解。戦おうとしちゃだめなの」


 エレンは、優斗が嬉々として強敵に挑もうとしていると思ってるのだろうか。


「いや、そんな格上に挑む気は無いよ?でも、昨日のコボルトでもそうだったし、その前のアースモモンガも一撃で倒せない場面があった。油断する気は無いけど、この近辺に出る弱いモンスター位は一撃で倒す火力が欲しいんだよ」


 今はライナーたちが近くにいるからいい。だけど、もしライナーたちが居なくなったら。もし、その時にパーティメンバーを集められず、1人でクエストに行くことになったら。一撃で倒せなかった。その隙を狙われてしまう。


「最低限弱いモンスターを倒す火力、ね。レベルも上がったら杞憂な気もするけど………」


 エレンもわかっている。レベルが上がって倒すモンスターの水準も上がればまたその悩みにぶつかるのだと。その時に無理をしてはいけないから、エレンも真剣に悩んでくれてる。


 エレンは暫く考えると


「じゃあさ、ちょっと私に付き合ってくれない?」


 エレンは優斗の手を掴んで誘ってきた。

 優斗が答えられないでいるとエレンはそのまま手を引いて街へと繰り出していく。


「付き合ってって、どこに行くんだ?」


「それはお楽しみだよ」


 強くなる為の秘策。なにかあるのかと思ったが、着いたのはカフェだった。


「このお店、外見もオシャレだけど中もオシャレなんだよね」


「そ、そうか」


 どう見てもカフェにしか見えないし、エレンの発言からして本当にカフェに来ただけなのだろう。だけど、何故カフェに来たのかわからない優斗は曖昧な回答しか出せなかった。


 中に入り、メニューを見る。


(メニューそのものは日本とそんなに変わらないんだな)


 ケーキみたいな甘味と、珈琲がメニューにはある。他にも軽食もあるみたいだ。


「そう言えばユウトくんは朝ご飯食べてきたの?」


「いや?今日はまだ食べてないけど………」


「それじゃダメだよ。冒険者は身体が大事。栄養第一なんだから。ご飯はしっかり食べて、栄養をしっかりとって、身体をつくらないと」


 エレンの言うことも最もだったので、一先ずサンドイッチと珈琲を頼む。

 エレンもケーキもどきを頼んでいた。


「それで、なんでこの店に?」


「え?普通にお茶しに来ただけだよ?ユウトくんとお茶する機会なんて無かったからね」


 どうやら本当にお茶に来ただけらしい。


「そうか。それにしても、こういう店ってキースは来なさそうだよな。ライナーはなんやかんや来そうなイメージはあるけど」


「そうだよね。でも実際は2人ともこういうお店には付き合ってくれないの。キースは自分が来たら店の雰囲気が潰れるとかなんとか言って」


「存外周りの目を気にするんだな」


「そうそう。あとライナーは普段の態度こそ巫山戯てるけど、実は内心は少し荒れてるの」


「そうなのか?」


 それは初耳だった。あれは少しでも親しみやすくしてるのだと思ってたからだ。


「キースはなんとなく察してるみたいだけどね。ライナーは、昔なにかあったみたいで。明るく振舞っているけど、中身は全然そんなことないの」


 なにかがあった。それが人為的なものなのか、それともモンスターからのものなのか。それが何かはわからないが、


「きっと、新人育成に言ってる言葉も、半分は自分に向かって言ってるんだと思うよ?」


「覚悟とかの話しもか?」


「うん。戒め、なのかな。ライナーの目的は遠すぎるから」


 そう言えば、ライナーやキース。エレンがどうして冒険者をしてるのかは聞いたことが無かった。


「ライナーの目的って?」


 それを口に出してしまった!と思った。そんなに軽々しく聞く話題でも無かったからだ。

 だが、エレンはそんな優斗の内面を読んだのか


「大丈夫だよ。ライナーにも、聞けば答えてくれると思うし」


 エレンは窓の外を見ると、ゆっくりと教えてくれた。


「ライナーの目的は、ここから遥か北にあるまだ人類が未踏と言われてる領域。絶海の孤島とも呼ばれてる場所に住んでる世界最強の生物を倒すことなの」


「世界最強の生物………魔王とかじゃなくて?」


「ううん。全く違う存在。その生物は、魔王をも容易に打ち破る力を持っているのに、こちらには干渉してこない存在なの。私も存在を聞いたことがあるだけだけど、人なのか、モンスターなのか。それとも実在するのかもわからないの」


「そんな存在が………」


 まだまだ、優斗はこの世界について知らなすぎる。


「うん。定期的にディスペニア王国の大賢者が探知魔法で存命なのか調べてるみたいだけど、それが嘘か本当かはわからないの。わかるのは、あそこには強すぎるモンスターが大量に住んでいて、あの島に挑戦した人は、一人残らず生きて帰ってくることはないということだけ」


 ライナーは、そんなところに挑戦しようとしているのか。


「ちなみに推奨レベルとかってあるのか?」


「私が聞いた時は、推奨レベル200だったかな?今の私達じゃ到底無理な話しだよ」


 推奨レベル200。今の優斗の10倍以上のレベルだ。


「そんな高レベル………」


「ちなみに狙おうとしちゃダメだよ?人類史上最高レベルでも120って言われてるから、レベル200は現実的じゃない。正直、かなり無謀だしあの絶海の孤島は狙うだけ時間の無駄だよ」


 今の優斗には関係の無い話し、ということだろう。


「もう、ユウトくんまで物騒な話しないで。ほら、料理も来たからさ」


 見ると、店員さんがサンドイッチとケーキと珈琲を運んでいるところだった。


 運ばれた料理を受け取り、口に運ぶ。


(なんか、味は似てる気がするんだよなぁ)


 酒場で食べる料理も偶にだがある。

 日本で食べていた物と味が似ている料理が。

 今食べているサンドイッチは、卵とベーコン。そしてケチャップが入ったサンドイッチだ。


(なんでマヨネーズじゃないかは置いておくか)


 これはつまり、優斗以外にも転生者がいるという証拠なのだろう。


(まあ、普通に考えて1人につき世界を1つとかそんなことするはず無いもんな)


 転生させてもいい世界に何人か送り込む。女神転生ではよくある話なのだろう。


 サンドイッチを食べ終わり、ゆっくりと珈琲を飲む。エレンもケーキを食べながら少しづつ珈琲を飲んでいるようだ。


 エレンは相変わらず外を見ながら呟いた。


「いいね、こういうのって」


「………そうだな」


「なんでもない日々。戦いに身を置いてると、こういう瞬間が大事になってる気がするの」


 なんだか、わかる気がする。たったの3日間だけだったが、クエストをこなし、今こうしてゆったりしている。それが何よりも落ち着くのだ。


「冒険者なんてしていなければこういった感情も湧かなかったかもしれないの。でも、私は休みの日にこうしてゆったりとお茶して、読書する。この限られた時間が好きだから、失いたく無いから冒険者をしてるのかも」


「失いたくないから………」


 エレンのその言葉は、とても重く聞こえた。きっと、あるのだろうエレンには。大切な何かを失った瞬間が。


(もしかしたら冒険者は………)


 優斗みたいな転生者を除いて、戦いに身を置くものたちはそういった使命感に駆られているのかもしれない。


「ねえユウトくん。強くなるっていのは、やっぱり心からだと思う」


「………精神論?」


「そうかもしれないね。人は心が原動力だから、何かをしたい、やりたい。その気持ちが無ければ出来ることも出来なくなっちゃう。だから、ユウトくんには冒険者をする理由を探して欲しいなって思う」


「冒険者を、する理由………」


「直ぐにじゃなくてもいいよ。でも、いつか見つけて、それを私に教えて欲しいな」


 だから、それまで死なないでと。


「わかった。見つけたら、絶対に教えるから」


 ライナーはその使命感に駆られているのだろうか。なんにせよ、ライナーはそれを見つけてる。

 エレンは、失うことが怖いのだろう。だからそれを守ろうとしている。


「じゃあ、これあげるね」


 エレンから手渡されたのは〈転移の宝玉〉だった。


「これ、高いんじゃないのか?」


「いいの、もらって。私もユウトくんに死んで欲しくないし、まだ予備はあるからね」


「じゃあ、お言葉に甘えて………」


 〈転移の宝玉〉の値段は60万ブカ。今の優斗に払える金額じゃない。だから見送っていたのだが


(いつか、返さないとな)


 だからそれまで優斗は生きる。他の理由は見つかってないけど、今はそれを理由にして戦うことを決めたから。


「また、一緒にお茶しようね、ユウトくん。私、誰かとお茶する時間も好きだから」

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