第二話「とりあえず転生のはずなのに!」
目を覚ますと、俺は草の上に寝転がっていた。
「……転生、したはずだよな?」
体は痛くない。視界もクリア。周囲には木々が広がっていて、鳥の鳴き声がやけにリアルに響いている。空は青く、風は涼やか。間違いなく――異世界。
だが。
「……なんで俺、死んだ時と同じ服着てんの?」
黒と白を基調にした和装、長めの袖、紋入りの帯。これは俺が自前で誂えた、陰陽師スタイルの服――死んだ時に着ていたやつそのまんまだ。
「せっかくなら、異世界用に着替えたかったな……」
文句を言いながらも、まずはスキル確認と現状把握だ。
「そういえば、式神は?」
試しに印を結び、霊力を集中させると――
ボフン!
煙が弾けるように広がり、その中から一人の女性型の式神が現れた。
「……おはようございます、ご主人様」
「出た! 出たな!? ろくろ首!」
煙の中から現れたのは、白い着物姿の妖艶な美女……ただし首が異様に長い。
俺の式神第一号――**ろくろ首の“ヨツユ”**だ。
「ちゃんと呼び出せたか。よかった……」
式神が使えるということは、霊力や技能もちゃんと転生前の状態を引き継いでいるらしい。
「とりあえず、一安心だな」
俺は立ち上がり、周囲を見渡した。森の中、ただし道はある。人の気配はまだ感じられない。
「……さて、まずは現状の確認からだな」
異世界の空気を胸いっぱいに吸い込んで――俺の冒険が、本格的に始まった。