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MIRAGE SONG  作者: やさぐれた中年
Wandering Justice
47/58

Chapter.47 ーOccupationー

めちゃ長くなっちゃいました。

ドラマで話題?の占拠シリーズにちなんだ訳ではないですが、サブタイは占拠です。

そういえば、ちょっと前に選挙もありましたね〜みなさん、投票には行かれましたか?←いまさら

 点滴を終えた嵐は、痛み止めと抗生物質が処方されるのを待つため、処方窓口の待合席に座ってテレビを眺めていた。議員が失言によって辞意を表明したことや、太平洋沖で台風が同時に3つ発生し、来週は雷雨の日が続く見込みなど、いつも通りのニュースが流れている。


"え、あ、はい。たった今入ったニュースです。本日午後3時頃から大阪湾の沖合に停泊していた米軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦ですが、先ほど突然、爆発が起きた模様です。こちらの映像をご覧ください"


 画面には沿岸部に設置された監視カメラの映像のようで、地平線に小さく艦影が見える。そして、ヘリから撮影されたと思われる上空からのアングルがワイプに表示されていた。

 1分ほど何の変哲もないただの映像が映っているだったが、一瞬空が眩く光った直後に艦影から煙が昇り始めた。上空からのワイプ内の映像には巡洋艦の甲板に穴が空き、その奥から火が立ち昇っているのが見える。

 嵐は思わず立ち上がり、固唾を呑んだ。


(こ、これは…まさかオービタル・レイの!?右京も二条も捕えた…それがどうして…)




 ーー今より15分ほど前


 小型艇で夢洲から巡洋艦に戻ってきたダッジ大尉たちは右京の身柄を艦内の捕虜室に入れた後、神奈川県の横須賀基地に戻る準備を進めていた。そんな中、艦橋で哨戒中だった兵が空の異変に気付いたのも束の間だった。雷のように空が光った瞬間、雲間から巡洋艦の艦首あたりに光の筋が突き抜けたのだ。

 艦内で一斉に鳴り出す警報。成層圏の彼方から光の速さで迫る攻撃には、高い防空能力を誇るさすがのイージスシステムでも捉えることが出来なかった。いや、捉えた瞬間にはすでに攻撃が終わっていた。

 機関部に甚大な被害を被り、爆発による火災と艦底の損傷による浸水。敵影のない攻撃に慌てながらも兵たちはまず艦を維持させるため消火班と浸水の修復班に分かれ持ち場へと向かっていく。


「敵影はあるか!?被害状況の報告を!!」


 防空指揮所で無線に怒号を上げているのは、米国海軍大佐のゾンダ・パガーニ。この艦の指揮官である。


"敵影はありません!"


「あの光…大佐、あれはおそらく…」


 パガーニ大佐に耳打ちするように呟いたのは、冷静に状況を分析していたライカン中佐だった。

 姿の見えない敵、雲の彼方から注がれた光線。米国の一部の上級軍人なら、それが何なのかはおおよその検討がつく。


「……オービタル・レイ…か。くっ、ラングラーめ!どこまで我々をコケにすれば気が済むのだ!」


"報告!機関部から発生した火災の鎮火、完了しました!"


"報告!浸水箇所の修復および第3ハッチの封鎖、完了しました!"


 一般兵曹よりも優れた能力を有する特殊部隊のシールズが乗艦していた影響もあってか、被害は迅速に最小限で食い止められた。


"こちら、ダッジ大尉。捕虜室に入れていたウキョウの姿が見当たりません。混乱に乗じて逃走したものかと…艦内の捜索にあたります"


「これが狙いか…いや、ラングラーがあんないつでも足切りできる小者のためにアレを使う訳がない。であれば、命惜しさに逃げ出しただけか。それはまぁいい。ライカン!第2射が来るかもしれん、急ぎ本国へ連絡し、ステーションの暴走を止めさせろ」



 その頃、捕虜室から上手く脱出できた右京は艦内を走り回る兵を警戒しながら物陰に隠れていた。


(脱出できたのは幸いだが、ここは海の上。僕1人のチカラでは到底、陸に戻ることは出来ない…シェルビーを失って再び失敗した僕をラングラー副長官は許さないだろう。せめてこの憎たらしいマスタングの犬たちの船を沈めれば、少しは慈悲を与えてもらえるだろうか…)


 右京は兵たちが通り過ぎたのを見計らって、通路に出た。機関室を破壊するのが最も手っ取り早いのだが、機関室では火災が起きた直後のため、まだ兵たちがいるはず。内側から戦艦を沈めるとなるとロケットランチャー級の武器が必要になる。そんな物が簡単に出入りできる場所に置いてあるはずもない。

 右京は考えた結果、搭載しているミサイルの砲弾庫を誘爆させて大爆発を起こすことにした。艦首の方へ身を隠しながら進んでいくが、逃走したことがバレたのか、兵たちが探し回っていてなかなか先に進めずにいた。


(くっ…このままだと見つかるのは時間の問題か…ん?この振動と音は……)



 右京が聞いたのは、イージスシステムのレーダーが所属不明の敵影を捉え、それに追従して対空砲が発砲された音だった。


「10時の方向より敵影!イージスが迎撃しましたが回避されました!敵影は戦闘機並みの速さでこちらに向かってきていますが、こ、この大きさは…?」


「なんだ?今度はアベンジャーズのヘリキャリアーでも飛んできたか?」


「い、いえ…人です!!」


 水平線と沈みゆく太陽が触れ合う直前の黄金色の空を突き進んできていたのは、人型をした"何か"だった。


"ハハハ!アベンジャーズか!パガーニ大佐、惜しいな…近からず遠からずといったところだ"


 迫り来る敵からの通信がブリッジに流れた。


「な、何者だ…あれは……っ!?」


 迎撃のための対空砲もミサイルも射出されたが、全て掻い潜って、ブリッジから目視で確認が取れる距離まで敵の接近を許してしまった。


"お前ら、人間相手に対空砲とか容赦ないな。俺はJACKALのエージェント"二条"だ。野暮用があるんで、ちょっとばかし艦に穴を開けさせてもらう"


 ブリッジの前で黒いボディに足の裏からジェット気流を発生させて滞空しているその姿は、二条の相棒であり特殊兵器でもある"ガレリア"に酷似していた。

 二条はガレリアを開発するにあたって、3パターンの設計を考えていた。

 1つ目は人間の身体をベースとしたサイボーグタイプ。2つ目はマシンのみとなるアンドロイドタイプ。そして、3つ目が今、米海軍の前に現れた人間の身体に纏わせるアーマードタイプのマークⅢである。


「JACKALだと!?とにかくヤツに攻撃させるな!!機関砲で迎撃!!」


 戦闘機や戦艦を相手にするのが想定されている為、大砲やミサイルなど仰々しい武装がほとんどで、人型のサイズとなると、巡洋艦クラスではどうしても小回りの効いた攻撃が出来ない。サイズ感で言えば、ゾウに集るハエのようなものだ。

 攻撃を難なく交わして二条は巡洋艦の側面から両腕の機銃を円を描くように連射した。そして、ミシン目のように切り込みが入った状態の外壁にそのまま一気に突撃した。外壁は簡単に破れ、艦内の潜入に成功した二条は飛行からホバーモードに切り替え、通路を進み出した。


「右京!!どこだ!!迎えに来てやったぞ。早く出て来い!!」


 進行を阻止しようと兵が応戦するが、銃弾を通さないボディを持つガレリア・マークⅢには無意味だった。

 誰かが遠くから自分の名を呼ぶ声。声の主が敵か味方かもわからないが、手ぶらの右京にはここから脱出するため選択の余地はなかった。声のする方へやってきた右京はその主を見て青ざめた。


「ガレリアだと!?どうしてJACKALがこんなところまで!!」


「ん?おお、右京じゃねえか。やっと出てきたか。ああ…俺、敵じゃねえから。ここじゃ説明してる時間がねえ。さっさとこんな鉄臭いところ出ようぜ。さあ捕まれ!舌噛むなよ」


 宿敵JACKALのエージェントの言葉を鵜呑みには出来ないが、今は頼るほかここを脱出する術はない。右京は藁にもすがる思いで二条の手を掴んだ。ガレリアの足の裏から一気に気流が噴射される。高速で艦内を突っ切っていき、自分で開けた穴から外に飛び出した。


「お、おま!あんな速度であの細い通路を突き進むなんて僕を殺す気か!」


「堅いこと言うなよ。無事に出られたんだ、御の字じゃねえか。口閉じてろ。舌噛むって言ってんだろ」


 巡洋艦を出たのも束の間、すぐに対空砲とミサイルで追撃されそうになる。二条はさらに加速して巡洋艦から一気に距離を離した。ひとまずどこか人のいない場所で落ち着こうと、二条は人口密度の少ない淡路島の山岳地帯へと降りた。


「やれやれ、さすがに1人で海軍相手にするのは骨が折れたぜ」


「どういうことなんだ…わかるように説明してくれ」


 腕のスイッチを暗号のようにいくつか押すと、装着していたガレリアのアーマーが蒸気と共に一気にパージされ、二条の姿が現れた。二条は煙草に火をつけ、自分がラングラーの送り込んだJACKALのもう1人のスパイであることを明かし、夢洲から出発した後、嵐と戦闘になったことや病院内で拘束されたこと、そこから京都府警の拘束を抜け出して右京を迎えに来たことを淡々と話した。


「お前がスパイ…にわかには信じられないな。それに、ラングラー副長官はシェルビーを与えられながらも失敗した僕を消すつもりなんじゃないのか?」


「ん?そうなのか?そんなこと俺が知る訳ねーだろ。まぁ、助けちまったもんはしょうがねえ。ここから挽回すりゃいいんじゃねえのか?」


「……挽回…僕にはもう何も残ってないんだが」


 二条は面倒くさそうに頭を掻きながら、吸い終えた煙草を投げ捨て踏みつけた。


「見たまんまの暗ぇヤツだな。シェルビーなんて、俺のガレリアの贋作だ。あんなもん無くても頭を使えば何とでもなる。お前、頭いいんだろうが。合衆国が敵なんだ…ラングラーもそのうち捕まる。俺は米国を相手取るつもりはないが、それでも負けっぱなしは気に食わねえ。ここからは俺たちだけでJACKALの撲滅に向けてリベンジマッチだ」




 ガレリアが米海軍の巡洋艦から右京を連れ出すところまでの一部始終をテレビで見ていた嵐は拳を強く握り締めた。


(二条…あいつどこまで俺らを振り回せば気が済むんだよ。もう、消すしかないのかよ…)


 同じ頃、京極たちも病室で同じ報道を目にしていた。大怪我をした患者とは思えない声量で思い思いの言葉を口にしていた。


「二条…だいぶ好き勝手してくれているようだな。我々もここで寝てはいられない。おそらく再びJACKALを狙って攻撃を仕掛けてくるだろう」


「ああ、JACKALの立て直しと俺たち残った者たち一人一人の強化が必要だと思う…」


 掠れた声の京極は誰の耳にも届いていなかったが、皆、気持ちは同じようであった。


「一条!!リハビリも兼ねた強化合宿すんぞ!!二条みてぇなヘナチョコに馬鹿にされたまま黙ってられっか!!ぜってーブッ殺す!!」


「あらぁん、合宿とか面白そうねぇん!三ぺいにしてはいいアイディアじゃなぁい!!」


 そして、女性陣の病室でもーー


「うっわ!ニーチェ、やることエグすぎ!ウチら、寝てる場合じゃなくない!?」


「ああ、私も自らの未熟さを恥じている。二条の偽りの姿を見抜けなかったこともそうだが、ロボ如きに後れをとったことが悔やまれる」


「妾も二条にずっと騙されておったのが許せん!!あやつには全身の血管から血が噴き出す毒でお仕置きじゃ!」


「そ、それ、お仕置きじゃ済まないのではなくて…?わたくしも次こそアキラ(一条)様を必ずお守りしてみせますわ!」


 NINE'zの女性陣が盛り上がっている中、美波は1人ベッドに潜って想いを馳せていた。


(仁くん…生きててよかった……)


 処方された薬を受け取った嵐は、再び京極たちの病室へ様子を見に行くことにした。


「みんな!!右京と二条が…って、え?」


 つい先程まで入院着だった京極たちはすでに着替えている途中だった。三条、五条、八条の3名はいずれも胴体を負傷したためサラシを巻いて固定しており、その姿はどこかの組の極道のようだった。一条は腰を保護するコルセットを強く縛り、京極は左目に眼帯をしている。


「嵐か。お前もニュースを見たようだな。ひとまず本部に戻るぞ」


「あー、そ、そうだな。ちょっと隣も見てくるわ」


 どう考えても1ヶ月以上入院が必要そうな負傷者ばかりのはずなのに、平気そうな顔をしている。嵐は少しばかり引き気味で一旦を部屋を出て、隣の女性陣の部屋の扉をノックして訪ねた。


「あ!ランちゃーん!元気そーぢゃーん!見て見て!ウチ、頬骨が砕けたからさ、人工骨格手術受けて顔面包帯ぐるぐるなワケ!これミイラみたいぢゃね?ハロウィンいっとく?」


「テンションたけぇな…つーか、その状態でよくそれだけ喋れるな…」


 九条は1番危なかった。一時は脈がなく絶望的に思われたが、京極の咄嗟の処置が功を奏して命を取り留めた。


「九条ももう退院するのか?大丈夫なのかよ?」


「ああ、問題ない。少し川を渡りかけたがバタフライで戻ってきた」


(え、なに、九条ってこんなこと言うキャラだっけ…一度死にかけてキャラ変したのか!?)


 皆、先の戦いで負傷し、アームホルダーや松葉杖を身に付けている状態にも関わらず、俄然やる気だった。


「美波?お前は…ここで休んどけよな。右京のことは……必ず生きて罪を償わせるから」


 美波からの返事はなかった。美波以外が全員病室を出ると、看護師たちが慌てて走ってきた。


「ちょ、ちょっと皆さん!どこへ行くんですか!!」


「ああ、看護師さん。すまない。俺たちは少し特殊な事情があってもう行かねばならないんだ。世話になった礼に今度、祇園に寿司でも…」


「聞こえません!ちゃんと説明してください!」


 京極の声はやはり届かなかった。見かねた嵐が適当に誤魔化して何とか納得してもらうことが出来た。


「嵐、すまないが我々は見ての通りまだ万全ではない。運転を頼めるか?」


 たしかに痣と裂傷だけで済んでる嵐がこの中では最も軽傷である。もし、この中の誰かに運転を任せて途中で血が足りなくて気でも失われたら大事だ。嵐は仕方なく駐車場に停めてあるトレーラーへと向かった。

 エントランス前のロータリーにトレーラーを回し、全員を乗せると、一行は滋賀県の総本部に向けて出発した。


「まずは状況を整理しよう。米軍が管理する宇宙ステーション"オービタル・レイ"だが、俺たちが戦ったシェルビーと呼ばれるアンドロイドを投下してきた軍事工場でもあり、嵐の話と先ほどのニュースでも見た通り衛星兵器としての機能も備えている」


「そして、嵐さんのお話によりますと、夢洲から病院への移動中にスパイだった二条さんがその衛星兵器を起動させ、本部を攻撃したとのことですわ」


「その後、病院で二条を捕らえ京都府警に引き渡したが、逃走。そのまま大阪湾の米海軍の巡洋艦に侵入して右京を連れ出した…その様子はニュースで放送されていたが、二条が巡洋艦に到着する前に再び衛星兵器が起動し巡洋艦を攻撃している。これも二条の仕業と考えられる」


「米国防総省のラングラー副長官が謀反を起こしていることは国防総省内でも判明しており、おそらく行方を追っているものと思われますわ」


 一条が話している席のすぐ隣を陣取り、七条も追従するように説明を付け加える。

 叶わぬ恋というのは、側から見ていると実に切ない気持ちになる。彫像のように整った目鼻立ちと美しいブロンドの髪。モデルさながらの高身長とメリハリのあるスタイルに加え上流階級という家柄。そして、特筆すべきは"一途"ということ。そんな完全無欠と言っても過言ではない彼女であれば、男性事情に困ることなどまずないだろう。それなのにも関わらず、彼女は未だ幸せにはなれないでいた。

 仕事一筋、正義に身も心も捧げ、色恋沙汰に全く興味を持たないJACKALの最高戦力NINE'z筆頭"一条"、本名"一之瀬 輝蘭(イチノセアキラ)"という男に心を奪われてしまったのが、彼女の終わりのない恋の旅路の始まりであった。

 一条の話がひと通り終わったところで、三条が顔に苛つきを露わにしながら挙手をした。


「つーかよぉ…二条のヤロォはいつから裏切ってやがったんだ?アイツが敵側に付いたってこたぁよぉ…こっちの情報が筒抜けな上に、システム関連ももう全部信用ならねーだろ」


「そうだな。シェルビーがガレリアの技術を応用したアンドロイドである可能性も高い。武装こそしていなかったものの、それを補って余りある機動力とパワーはガレリアのそれだった。もしそうだとしたら、こちらの武装技術関連も全てあちらに流れていると考えるべきだろう」


 一番裏切られると困る人物が裏切ったーーその事実を改めて思い知り、空気が重くなる。そんな重苦しくなった空気をものともせず、あっけらかんとした声色で口を開いた人物がいた。


「ところで、一条の。衛星兵器の脅威は妾たちでも避けられぬであろ?ならばいっそのこと、宇宙ステーションに長距離弾道ミサイルでも撃ち込んで破壊してしまえば、目の上のタンコブ…もとい天の上のタンコブは失くなると思わんか?」


「い、いや…それは少し破天荒すぎる。おそらく国防総省のマスタング長官の指示でオービタル・レイの稼働を停止させる動きはあるはずだ。ましてや、海軍の巡洋艦を攻撃したともなれば、いよいよ将校クラスの連中が黙っていないだろう。衛星兵器の脅威は俺たちにはどうしようもない…今は右京と二条が次にどう動くか、それに対処できるよう備えるべきだと思う」


 冴えたアイディアだと自信があったのか、それを否定されて十条は頬を膨らませそっぽ向いてしまった。結論が出ないまま、トレーラーはようやく総本部の敷地内に入った。

 入り口まではまだ距離があるが、初めて総本部を訪れた時は雲を突き抜けて聳え立っていた天辺が、今は雲よりもだいぶ下に見える。そして、未だに最上部は燃えているのか黒煙が立ち昇って煙突のようであった。200階より上が崩落したとはいえ、それでも消防車ではとても届きそうにない高さがある。もちろん、それを見越して下層に火が回らないように完全防火の隔壁が瞬時に作動する為、燃えている最上部は時間の経過とともにいずれは自然に鎮火されるのだろうが。


(それにしても静かだな…)


 敷地内の道を進んでいき、入り口が見え始めると、周囲に崩落した最上部の瓦礫があたり一面に散らばっていた。しかし、誰もいない。嵐はトレーラーを停めて荷台の扉を開けた。


「避難した者たちは一体どこに行ったんだろうな?」


「葵の話では居住区の人間は全員、安全な場所に避難出来たと聞いてる。ただ、どことは聞けてなかったな…」


 ひとまず、全員で周囲を見て回ったが誰もいない。一条は警戒しながら入り口へ行き、ゲートを潜ろうとした。


"認証エラー!部外者の立ち入りは固く禁じられております。お引き取りください"


「な、んだと…」


 JACKAL内でも高いポジションの一条の通行が、認証システムに拒否された。


「オイオイ、どーゆーことだぁ?バグってんのか?!」


 三条も続いてゲートに足を踏み入れる。


"認証エラー!部外者の立ち入りは固く禁じられております。お引き取りください"


「っっっざけんなっ!!なんだこれ!!ナメてんのか!!」


 拒絶され苛立った三条がゲートに向けてショットガンを構えると、音声放送が流れた。


"待て待て、落ち着けよ、兄弟。ここは俺が占拠した。下手に破壊しようとしたら迎撃システムが火を噴くことになるぜ?"


「な……その声は…二条!!」

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