Chapter.36 ーGAMEー
中弛みしていた物語もいよいよヒートアップしそうな予感、、、
更新に時間がかかった分、通常の1.5倍のボリュームです。当社比←社?
精鋭部隊のNINE'zがようやく全員お見えしました。
筆頭である一条以外の全員がキャラ濃過ぎますが、次回はそんな彼らの活躍が期待できる…かも!?
19:40ーー総本部から駆け付けた嵐とNINE'zの面々が幕張旧本部の地上ゲート前に到着した。JACKAL内の犯罪行為を取り締まるNINE'zは、本来ならエージェント達からは敬遠される存在であるが、この日ばかりは違っていた。SECONDのエージェントたちはJACKALにおける最高戦力であるNINE'zの到着に沸いている。
「京極、お待たせした。嵐から聞いたが、よもや右京が生きていたとは…あの男に振り回されるのも、そろそろ遠慮したいところだな。さっさと片付けるとしよう」
NINE'z筆頭の一条は京極に挨拶をし、作戦の概要を確認した。SAT突入の後に嵐と京極とNINE'zが個別に潜入して深草を救出する手筈であったが、NINE'zの9名全員を救出に充てるのも戦力的に偏りが出るということで、一条からの提案もありNINE'zからは一条、三条、四条、五条、八条、九条の白兵戦を得意とする6名を内部監査部へ向かわせることにした。スナイパーである七条は本部内で最も高い建物である本庁舎の屋上で待機。万が一、右京やレインメーカーが逃走した際に備えての狙撃による最終防衛ラインを任された。科学兵器に明るい二条はスズメバチ程度の大きさの小型ドローン複数体を駆使し、本部内の他のどこかに敵戦力が潜伏していないかの探索、毒ガスなどの広域制圧を得意とする十条は二条が敵を発見した場合、そして敵戦力が多数存在した場合の殲滅役として市街地を巡回することになった。
京極と話し終えた一条はNINE'zの面々に指示を出しに行った。それを見計らって嵐が京極の元へやって来た。
「京極、ちょっと話が…」
嵐の様子からあまり良い話ではないと判断した京極は人のいない裏の方へ移動した。
「総本部に戻った時までは一緒にいたんだよ…爆弾を無効化させる作業に地下に降りて、こっちに向かう時にはもう美波の姿が見えなくなってて…」
「ん…それがどうしかしたのか?美波ちゃん1人欠けたくらいでは本作戦に支障はないが」
「そうじゃない。兵庫県警の鞍馬巡査長ってやつが銃で撃たれて死亡したって話は聞いてるよな?その銃がジラフの物だったということも。でも、鞍馬が亡くなってから、どうにも美波の動きが怪しい気がするんだよな…なんとなくなんだけどさ。その鞍馬は美波の元恋人で、鞍馬から暴行も受けていた。動機としては十分だろ?証拠はないんだけど…」
「美波ちゃんがその鞍馬を殺した…と?あのな、嵐。もし仮にそうだったとしても、今はそれどころじゃない。痴話喧嘩のもつれで起きた殺人事件なら、それこそ刑事の真似事などせずに警察に任せておけばいいだろ」
「いやだって、ジラフの拳銃を使ってるんだぞ。もしかして、美波はジラフと繋がりがあるんじゃ…」
今、ジラフはこの幕張の旧本部にいる。鞍馬が殺害された時、このジラフはおそらくレインメーカー脱獄させたジラフで間違いないだろう。他にもジラフが存在しているかもしれないが、大きな動きがない為、別の人物がジラフの拳銃を使った可能性が高い。自宅で殺害されている以上、通り魔や無差別殺人でもない。ジラフとの関わりが判明していて、アリバイがないのは右京のみ。右京が鞍馬を殺害するメリットは?考えれば考えるほど、嵐の中で美波への疑惑が深まっていた。
「……もしそうだとしたら、美波ちゃんはスパイだった…ってことになるな。だが、今更どうしようもない。もし遭遇したら"撃つ"のみだ」
「……ああ、そう、だな…」
煮え切らない嵐の態度に京極は一抹の不安を感じながらも、もう作戦決行時刻が迫っている。ここで作戦内容を変える訳にもいかない。地上からの指示伝達は鴉に再び引き継ぎ、京極は号令をとって、総員でゲートを降り始めた。
20:00ーー地下の本部ゲート前に到着。京極がゲートを開き、SECONDのエージェント11名はプラスティック爆弾を携行して一斉に本庁舎へと向かった。
「では、予定通りNINE'zの二条・十条チームは本部内の市街地を巡回。何か発見し次第すぐに連絡を」
「了解じゃ。もし敵を発見したら殺してしもうても良いのだな?」
年寄り口調で答えたのは十条ーー通称"魔女"と呼ばれる17歳。現役女子高生でありながら身長148cmで黒髪のツインテールという一部のコアな男性諸君にウケが良さそうなNINE'zのロリ枠である。
「あ、えーっと…殺す前に連絡はほしいです。雑魚そうな感じなら連絡無しでもオッケーです」
「うむ、先日完成した全身の血管が裂けて血が噴き出す毒を使ってみるのじゃ!任せておくがよい!」
「じゅ、じゅっちゃん。ぼ、僕を巻き込まないでね…」
オドオドした態度で控えめにお願いしているのは二条。23歳、ハッキングから科学兵装のプログラミングまでこなし、常にタブレットを携帯しているオタク気質ではあるが、非常に頭のキレる男である。
「二条!そのチャンネルみたいな呼び方はやめよ!妾のイメージが崩れるであろう。そもそもお主は男なのじゃから、もっとシャキッとしてだな…」
(この2人、キャラ濃すぎるんだよなぁ…2人だけで行かせて大丈夫かな…)
京極の心配を他所に、十条からガミガミと小言を言われながら二条たちは歩いて行ってしまった。
「俺たちもそろそろ移動するか。SATもすでに内部監査部に向かったようだしな」
嵐と京極とNINE'zの6名も歩いて内部監査部へ歩き出した。
「九条さん。君って、彼氏とかいるのかい?」
京極が道中声をかけたのはNINE'zでも1、2を争う実力者、九条。彼女は25歳、身長168cmというモデル体型に日本刀を使いこなす黒髪でセンターパートのロングヘア、色白の美剣士だった。
「任務中だ。黙れ」
「なるほど。JACKALでも随一の美貌を誇るそのルックスと冷淡さ。踏み付けられてみたいランキングNo.1なだけはあるな」
「な、何なんだそのランキングは!!貴様、斬り捨てるぞ!」
JACKALの総戦力をぶつけると言っても過言ではない決死の作戦中とは思えない京極の締まりのない顔を、後列から見ていたのは身長191cm、筋骨隆々の男、八条だった。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つミックスの彼は恵まれたフィジカルを活かしたマーシャルアーツを得意とするエージェントである。
「京極、九条が困ってる。ナンパよくない」
そして、いいヤツだった。その八条の後ろを不満そうな顔で歩いているのは三条(32)。彼は17歳で大阪の最恐の暴走族といわれる"生野連合"の総長にまで昇り詰めた、異色の経歴の持ち主である。
「オイ、嵐ぃ。テメェとあそこのチャラついてるゴミ。おめぇら2人NINE'zからのスカウト蹴ったらしいじゃねぇか。NINE'zナメてんのか、おお?」
「いや、別に。俺らはただ、身内より凶悪犯の方をボコりたかったんで断っただけですよ」
30を過ぎてもノリは全盛期のままであった。それに怯むことなく受け流す嵐もたいがい肝が座っていた。
「ちょ、ランちゃんまぢ塩対応ぢゃん。三平、肩透かし食らってんのウケる〜」
「汚ギャルてめぇコラ!!三平って呼ぶなっつってんだろーが!!」
嵐が兵庫県警の留置所での囮作戦の際にジラフを特殊警棒で圧倒した四条も相変わらず騒がしかった。
「汚ギャルとか言うなし〜。ちょ、ゴリ姉、三平まぢありえなくない?」
「ん〜そうねぇ。とりあえずぅ…作戦中だからお前ら全員黙ろうか」
ゴリ姉と呼ばれたオネエ口調から急にドスの効いた低い声でその場の緩い空気を引き締めたのは、五条だった。39歳男性、小麦色の肌にピンク色の立派なモヒカン、逞しい口髭をたくわえ、ボディビルダーのような体格に白のタンクトップというアクの強すぎるルックスをしている。オネエであるにも関わらず、髭を生やしていたり、キレると素の漢っぷりが全面に出てしまうNINE'zーーもといJACKALでも突出した個性の持ち主であった。
五条の注意で一気に静かになった一行はようやく緊張感を持ったのか、無言のまま進み内部監査部の建物の前に到着した。
すでにSATが突入しているはずだが、中から銃撃音などは聞こえない。15分ほど突入時間をずらしているが、まだ戦闘が起きていないのは不自然だとその場の全員が感じていた。しかし、この場で立ち尽くしていても仕方がないので、京極はNINE'zの面々に警戒を怠らないようお願いして突入することにした。
NINE'zの6名は個別に走っていき、1階の隅々へと散開していく。
「俺たちは2階に行くか」
嵐と京極は玄関の正面にある階段を一段一段、慎重に登り2階を歩き回ってみるが、人の気配がしない。続いて3階にも上がってみるが、同じような雰囲気であった。
「深草さんや右京は本当にここにいるのか…静かすぎるだろ」
「一度下に戻ってNINE'zと合流しよう。爆弾を仕掛けられていたら事だ」
階段を駆け下り1階に着くと、NINE'zの面々も玄関に集まっていた。
「京極、1階は無人だ。どうにも様子がおかしい。SATはどこへ行ったんだ」
右京たちはおろか、先に突入しているはずのSATの姿も気配もない。京極は無線で二条に確認をとってみた。
「京極です。二条さん、市街地のほうはどうですか?何か不審な点は?」
"い、いや…こ、こっちは何もな…おおーう!京極!!妾をこのような暇を持て余す場所に充てるとは不敬だとは思わぬのか!何も出て来ぬではないか!"
二条が話している横から十条が割り込んできた。まだ作戦開始から20分ほどーー本部全域を全て回るには1時間弱は要するはずだが、何事もなさ過ぎて十条はすでに飽き始めているようだ。
「すまん、じゅっちゃん。でも、じゅっちゃんの身を案ずればこその采配だということは分かってくれないだろうか?」
"じっちゃんみたいに言うでない!だ、だが仕方ないのう…お主がそういう風に考えてくれている気持ちだけは受け取っておく。お主も励むのじゃぞ!"
(フッ…チョロい)
京極に上手く言いくるめられたとも知らずに十条はご機嫌な様子で通信を切った。
「市街地でも今のところ何もないようですね。本庁舎のほうを確認してみます」
京極は本庁舎に向かったSECONDのエージェントたち。そのまとめ役に選んだコードネーム"向日"に連絡した。
"こちら向日。何かありましたか?"
「いえ、そちらの進捗を確認させてもらえますか?」
"こちら今しがた丁度、設置を終えたところです。今から5分後に爆破しますが、それで問題ないですか?"
「5分…すみません。少しだけ待ってもらってもいいですか?」
内部監査部、市街地ともに誰もいない。どこからの反撃もない。今現在、唯一内部を調べていない本庁舎に深草も含めて右京たちが居るとしたらーー今すぐ建物ごと爆破するのは悪手かもしれない。念のため、本庁舎の内部も確認しておく必要があると踏んだ京極は一条と嵐の2人に確認をお願いすることにした。
狡猾な右京にしてはあまりに無防備すぎる上、どこに潜伏しているかも分からない。こうなると、こちらの守りが手薄にはなるが人海戦術により、ローラー作戦で市街地を徹底的に調べるしかないと判断した京極は、本庁舎に爆弾を仕掛けたSECONDのエージェントたちと残りのNINE'zに2人1組で市街地の捜索にあたるよう指示を出した。
NINE'zは三条と五条、八条と九条、四条と京極という組み合わせで一同は市街地を分担して捜索することにした。
本庁舎前に到着した一条と嵐。京極の話によれば、宇治たちSECONDのエージェント3名はおそらく爆破によって死亡したという。密室になるような場所は最も警戒し、爆破のタイミングを悟らせない為に本庁舎内の監視カメラも破壊しつつ動いた方がいいという方針で2人は本庁舎に入っていった。
1階を見て回った際に、宇治たちの死因が判明した。エレベーターホールの3基ある内の1基が扉が吹き飛んで焼け焦げており、扉があった場所の奥からは黒煙が立ち昇っている。口元を塞いで下を覗くとケージらしきものが底で今もまだ燃えていた。宇治たちはエレベーターに乗った際、爆破されたのだろう。2人は宇治たちの無念を晴らすことを胸に誓い、駆け足で1階、また1階と階層を上っていく。やはり本庁舎も人の気配が感じられない。しかし、先ほどの爆破の跡からして、レインメーカーはまだ本部の敷地内にいるはず。12階の長官執務室に到着し、扉を開けた。
「これは僥倖だね。みんな大好き嵐くんが来てくれたよ。爆破するのを踏み止まってくれてよかったよ。危うく君たちに会う事なく爆死していたかもしれないと思うと、こんな間抜けなテロリストもいないよな」
長官のデスクに右京が座わり自虐して笑っている。そして、その左隣にはジラフとその腕の中に銃を突き付けられた深草の姿が。その奥にはレインメーカーまでいる。
「こ、これは予想外だな…まさか全員集合しているとは。京極の読みが少し甘かったか…。嵐、いけるか?」
「あ、ああ…いや、つーかよ…お前……どうしてここにいるんだよ!なあ!!美波!!」
右京の右隣には美波が立っていた。共にいた時に見せていた弾けるような笑顔が嘘のように、無表情に近い冷めた顔でこちらを見ている。
「あれだけ人数がいて嵐が来るとか、仁くん"持ってる"ね〜」
嵐の呼びかけを無視して、右京の方を見て笑いかけている。一条はいまいち状況が飲み込めず怪訝そうな顔で嵐に尋ねた。
「あの女は知り合いか?何者だ?」
「SECONDのエージェントだよ…たぶん、兵庫県警の鞍馬って刑事をジラフの銃で殺したのもアイツだ…」
「なるほど…スパイだったという訳か」
最悪の状況に嵐と一条の顔には緊張が色濃く現れていた。人質を取られている上に数的にも不利。2人は銃のトリガーに指をかけているものの、簡単には動けずにいた。
「まぁ、そう怖い顔をしないでくれ。ここであっさり君たちを消してしまっても面白みに欠けるし、君たちのことだ…タダでは転ばないだろう?ジラフあたりと相討ちでも、と考えているかもしれない。僕たちは少人数だからね…1人でも欠けると大変なんだよ。そこでゲームをしよう」
絶体絶命のピンチに思わぬ提案が飛び出し、嵐たちの顔は更に険しくなった。右京たちは揃いも揃ってニヤニヤと不気味に笑みを浮かべている。
「……なんだよ、ゲームって」
「君たちのお仲間は今、市街地をお散歩中だろ?今からレインメーカーが本部内のある場所に仕掛けた5つの爆弾を1つずつ起動させる起動すると3分後に爆発する。解除方法はスイッチが付いているから、それをOFFにするだけ。1つが爆発か解除されれば、次…という風に順を追って起動させていく。それらを全て解除出来れば、君たちの勝ち。無傷で人質を解放するよ。そして特別ボーナスとして、僕たちを拘束なり処刑なりするといい。もちろんその場合、抵抗はさせてもらうけどね。でも逆に1つ爆発するごとにこの深草くんの身体の一部をこのナイフで刺す。両腕、両脚、頭の順かな。どうだろう?起死回生のビッグチャンス到来だと思わないか?」
嵐と一条は右京の不条理な提案を聞いて我慢の限界を超えた。
「ふざけんな!!3分で爆発?そんなもの止められる訳ないだろ!」
「いやしかし、今よりこの状況を覆せる可能性があるのも事実だ…嵐、ここは乗るしか…」
「一条!お前本気かよ!?3分だぞ、3分!もし仮に爆弾を見つけて止めようとしたら、ルールを無視してレインメーカーが爆破すりゃ、止めに来た誰かも巻き込まれるかもしれないんだぞ!?」
「失敬な。そんなことはしない」
レインメーカーが無表情で反論するが、嵐は拳を強く握り締めジレンマに苛まれている。
「あー!わかった!!じゃあ、人質は俺になる!深草さんは放せ!それが無理ならそのゲームは無しだ!」
「おやおや、カッコイイね。まぁいいだろう。それでは、その内容で5分後にゲーム開始だ。お仲間に連絡して、必死に探してもらうといい」
嵐と一条はすぐに京極やNINE'zの面々に連絡を取った。今の本庁舎の状況とゲームの内容を伝え、急ぎ爆弾を探すよう指示を出すが、先ほどの嵐と同じく皆一様に無謀なチャレンジだと反論し、なかなか意見が纏まらない。だが結局、残されている道は1つしかなく、皆は不承不承ながら
その指示に従うことで合意した。
「準備は整ったようだね。それではゲーム、スタートだ!!」




