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MIRAGE SONG  作者: やさぐれた中年
Revenge of Diva
14/52

Chapter.14 ーTRAITORー

Traitorは売国奴って意味です〜こんなきわきわなワード記載しても大丈夫なのかな、、、

ま、下ネタじゃないし、いっか!←判断基準おかしい

 玄武の襲撃を退けた京極であったが、当然のことながら病院敷地内で銃まで発砲したのだから、病院関係者が通報していない訳などなく、まもなく捜査一課と鑑識の面々が現場に到着したのであった。


「あのさぁ、京極サン?私、ゆっくり休んでおきなさいって言ったわよね?病室を出る時にそう言ったわよね?」


「あ、は、はい…聞いたような…気がします」


「は?ような?気がします?」


「あ、いえあの、聞きました。しかとバッチリ耳タコな勢いで聞きました」


「耳タコって私、一回しか言ってないのだけれど?貴方の耳は一回聞いただけでタコが出来るほどお粗末なものなのかしら?」


「あ、いえお粗末じゃありません!タコも出来てません!すいません!」


 大の大人が病院の中央玄関口の前の広場で地べたに正座をさせられて、こっ酷く叱られている。身長186cmでJACKALの"黒い巨塔"という異名すらあるはずの京極がとても小さく見えた。入院中で絶対安静の人間が暗殺者を一人で片付けたのだ。怒られるのも無理はない。医師や看護師たちだって怒っているくらいだ。


「そして、嵐くぅん。私、貴方にも体をしっかり休めておきなさいって言ったわよね?冤罪の件は私に調べるようお願いしたわよね?」


「え、俺!?あ、えっとお願いはしてない気が…真希さんがそっちは私に任せとけ的なことを自分から言ってたような…」


「あのさぁ、嵐くぅん。そんなことはどちらでもいいのよ。私、忙しいの。今朝の文京区の件の報告書もあるし、これから貴方の冤罪の件も調べなきゃだし忙しいの。分かるかしら?忙しいの」


「はい!すみません!!大変お忙しい中、真希さんの手を煩わせてしまい申し訳ありません!!」


 そして嵐も、もれなくお叱りを受けた。


「どうして貴方がここにいて、こんなことになっているの?どういうことか、もう一度ちゃんと説明してもらえるかしら?」


 嵐は小一時間ほど前に時代葵からメッセージが来たことを話した。そしてそのメッセージの内容も。内容はともかく、時代葵の無事が確認できたことで張っていた気が緩み、京極のお見舞いに行こうと思いついたのでここに来た。そういうことだった。


「時代さんからメッセージが…なるほど。嵐君、"ホウレンソウ"って知っているかしら?」


「えっと、鉄分がたくさん含まれている緑黄色野菜の1つ…ですよね?はい、もちろん知ってます!おひたしにすると美味しいですよね!」


「"報"告!"連"絡!"相"談!のことよ!!」


(嵐のアホめ…天然ボケで火に油を注ぎよって…また俺の方に矛先が向いたらどうすんだよ…)


「あ、そ、そっち…はい……えっと、メッセージが来て葵の安否がわかった時点で報告しておけば、真希さんの仕事が1つ減らせたのに、すみませんでした!!」


「まあまあ、真希。こいつも悪気があった訳でもないし、反省もしてることだからさ、許してやれよ。そんな剣幕で怒ってたら、シワが増え…」


 正座をしていることで剥き出しになっている京極の裸足の裏を鴉はピンヒールの爪先のほうで思いきり踏みつけた。これはもちろん、踵のほうで踏みつけたら京極の足に穴が空くからである。とはいえ怪我人に対する行為とは思えないような苛烈な仕打ちに、京極は足裏を抱えて悶え苦しんでいる。そして、鴉は大きくため息をついて切り替えた。


「とにかく、時代さんの無事はわかったのね。ただ、それは十中八九、罠よ。でも、玄武という男がここで時代さんに関することを何も言わなかったということは、BEAST'sのメンバーが共謀して行なっている訳でもないのかしらね。京の話だと残るBEAST'sは青龍と麒麟の2人……であれば、実際に時代さんと会っていたというジラフが時代さんを拉致した可能性が高いわね。嵐君、それでも行くの?」


「はい、行きます。俺は彼女とケリをつけなければいけない。彼女がそれを望んでいるので」


 嵐の決意は固く、覚悟を決めた目をしている。その目を見れば、もう何を言っても彼を止めることは出来ないーー鴉は京極の腕を肩に回して立たせると、京極を一瞥して嵐を激励した。


「わかったわ。私達も最大限サポートする。怪我人のこの人も言うことを聞かないようだから、多少の無茶をさせても構わないわ。何でも言って頂戴」


「え、それお前が言うの?まぁ、そうだな。俺もしょーもない罠にかけられた借りをジラフとやらに返さねばならんし、嵐、お前はちゃんと4年前のケリをつけて来い」


「ありがとうございます。俺は明日の約束の時間までホテルで体力を温存します。真希さん、舞鶴長官暗殺の件、お願いします。きっとジラフの仕業だとは思うんですけど、俺ではどう頑張っても覆すことが難しそうなので」


 鴉は頷き、すぐに携帯電話で課長に連絡し、JACKALへの家宅捜索の手続きを要請した。本来ならばJACKALはほとんどの警察官も存在を知ることのない防衛省の秘匿部隊。JACKAL内の犯罪はこれまで内部監査部が取り仕切って断罪していたため、一介の警察が捜査に踏み込むのは前代未聞であり、手続きに時間がかかるのは明白であった。しかし、敏腕の鴉に任せておけば大丈夫ーー彼女にはそんな絶対的な安心感があった。


「京極も病院を出られるなら一度本部に戻って、他のエージェントたちの動向を探ってほしい。ジラフのことも任せてもいいか?」


「ああ、貸し1つな。だが、言われるまでもない。ジラフの奴は俺が必ず叩き潰す。"お気に"を使って俺のピュアハートを弄んだ罪は万死に値する!」


 最後の一言が余計だった。鴉に耳を強く引っ張られながら京極は苦笑いしながら親指を突き立てた。頼りになるこの2人を見ていて嵐は心の中で、この人たち早く結婚すればいいのにーーそんな風に思うのだった。

 ひとまず玄武の事後処理は警察に任せて、嵐は明日のためにホテルへ向かおうと病院を後にした。




 JACKAL本部、長官執務室ーー右京長官代理の元に内線電話が鳴り響く。


「はい、こちら右京」


"玄武が失敗しました。残りは青龍と……麒麟ですが、いかがいたしましょう?"


 右京の表情が険しくなる。これまで負け知らずのBEAST'sがすでに3人も失敗している。罪人を取り締まる側のBEAST'sがこれほどまでに役に立たないことに、右京は若干の苛立ちを感じていた。


「舞鶴長官を暗殺した逆賊が野放しになっている現状をもっと深刻に考えるよう青龍には死ぬ気で頑張れとでも伝えておいてくれ。麒麟には私から連絡しておく」


 受話器を置き、右京は携帯電話を取り出して電話をかけた。伝えるべきことを伝え電話を切ると、執務室の重厚な木製の戸棚からブランデーを取り出してコップに注ぎ飲み干した。


(京極と警視庁の鴉…面倒な邪魔者が予想以上に活躍してくれる。計画に横槍を入れてこないように手を打っておくか…)


 右京は2ヶ所、ある場所に連絡して京極と鴉への対応の指示を出すのだった。




 午後3時すぎーー東京府中刑務所から刑務官に連れられて1人の男が檻房から出され、着替えと手荷物を渡された。


「お前みたいな国賊が釈放とは、世も末だな」


「そんなご無体な。世間が再び俺を必要としてるってことでしょうよ」


 男の名は久嶋 悠策。元JACKALのエージェントでコードネームは"桂川"。彼はJACKALのエージェントでありながら、2001年米国にてワールドトレードセンタービルへの自爆テロを起こしたとされるイスラム強硬派の"アルカイダ"と内通し、次のターゲットであった日本でのグラウンド・ゼロを再現させようと暗躍していた男である。しかし、その謀略は内部監査部のBEAST'sにより未然に防がれ、桂川は拘束された。最終的には警察に身柄を引き渡し、懲役35年の刑に処されることとなり、東京府中刑務所に収監されていた。

 

「はあ〜久しぶりのシャバの空気は美味いって言うが、全然マズイじゃねーか。そもそも、東京の空気はくっせぇよ…ったく」


 釈放された桂川を刑務所前で待ち構えていたのは、JACKAL内部監査部の山城であった。


「よお、久しぶりじゃねーか、山城。相変わらず嫌われ者の内部監査やってるのか?」


「黙れ。まさかお前を出すことになるとはな…長官代理は何を考えているのか」


「つれないねぇ。で、その長官代理サマは俺に何の用があるんだ?」


 山城が待たせていたレクサスNX350hの後部座席に桂川は乗せられ、車内で山城は要件を伝えた。その要件とは、舞鶴長官を暗殺した嵐、その共犯者である京極というエージェントを"消す"ということ。この依頼を達成できたら、執行猶予を25年短縮するという内容だった。


「へぇ〜舞鶴のババア死んだのか。ザマあねぇな。つーか、なんだよ25年って。パッとしねぇな。ババーンと全部チャラにしてくれねーのかよ」


「交渉は任務を達成した後、長官代理にするんだな」


 右京が手配したのは、過去にBEAST'sが出動した唯一の前例となるコードネーム"桂川"の釈放による京極の抹殺だった。そして、別の場所でも右京の息がかかったもう一人の刺客が動き出そうとしていた。

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