詳しい話(4)
セシリオ様とユイナート様は双子である。そう彼らから明言されてはいないが、確実だと思う。兄弟にしては顔がそっくりすぎるし、言動は違えど所々の所作や少々の表情変化もそっくりなのだから。
そして、二人の間には何らかの確執がある。初めはセシリオ様が一方的にユイナート様を恨んでいると思っていたが、ユイナート様もセシリオ様のことを好いていないのではないか、と徐々に考えるようになった。恨まれているから嫌だ、という単純なものではない気がする。
直接二人に話を聞こうとする勇気はわたしにはない。けど、このまま二人がギスギスしたままで、互いに嫌い合っているを見るのは辛い。彼らの関係が少しでも良好になってほしいと願うのは、わたしの自己満足なのだろうか。
「……ユイト様」
「どうしました?」
ユイナート様は微笑み、わたしの髪を撫でながらわたしを見る。
怖がっていても、何にもならない。この世界がもし高次の存在によってつくられたものであるのなら、もし誰かにとって望む世界であるのならば。少しぐらい、わたしの望むように行動しても良いのではないだろうか。
「先ほど、わたしの傍にいた女性たちが、わたしとユイト様たちの身分は違う、と仰いました。もちろん、わたしと貴方様の身分がつりあうとは思っていませんが、なんだか別の意味も含まれているような気がして……」
わたしはユイナート様の目をまっすぐと見ながら問いかけた。彼は紅い瞳を僅かに細め、わたしの目を見返す。
「……貴女にそのようなことを言う輩はすぐに解雇しましょう。この世界が過去を参照しているのであれば、この頃の貴女はそういった話を何度も聞かされていたのでしょうか」
過去のことは分からないが、あの女性たちが常にわたしの身の回りを整えてくれていた場合、わたしはずっとあの視線に晒されていたということになる。
「実は、貴女は孤児だったのです。神の声を聞けることが分かってから教会で保護されるようになりましたが、貴女をよく思わない者も多くいたのです」
「そんな奴ら、消したらいいじゃん」
ユイナート様から離れた位置にいるセシリオ様の言葉に、彼はゆっくりと首を横に振った。
「そう簡単にはいかないのですよ。身分が高い者ほど、そういった固まった考えを持つものなのです」
彼の話を聞きながら、わたしは驚くと同時に納得した。親の権威が強く関わってくる世の中において、孤児という存在は広く受け入れられにくい。両親に関する記憶が全くないというのも、これが原因なのだろう。セシリオ様に記憶を封じられているから、という可能性も考えられるけど。
「身分なんてどうでも良いのです。大切なのは、貴女が僕の傍にいるかどうか、僕が貴女に触れられるかどうか、です。愛しいシェルミカは、ただ一人なのですから」
ユイナート様は、わたしを優しく抱きしめた。彼の言葉が頭に入ってくると、一気に体が熱くなる。そして、嬉しいという感情が湧き上がってきた。彼はきっと、民思いでとても優しい王子様なのだろう。
しばらく彼はわたしを抱きしめていたが、セシリオ様がわざとらしく喉を鳴らしたことで彼の体はわたしから離れた。
「後ろをがら空きにしてたら、刺すよ」
「それはそれは、わざわざ教えてくださりありがとうございます」
ユイナート様はにこりと良い笑みを浮かべ、セシリオ様はすぐ彼から目を逸らした。
「他に聞きたいことはありますか? 今なら答えられるかもしれません」
「……えっと」
彼の言葉にわたしは視線を下げ、考える。この機に聞きたいことをたくさん聞いておきたい。今の彼は機嫌がよさそうなので、彼の気に障ることでなければ答えてもらえる可能性が高いから。
正直、一番知りたいのは、ユイナート様とセシリオ様の関係だ。でもこれは、地雷を踏んでしまう危険もある。先ほどみたいに二人が対立したら、またわたしは吹き飛んでしまうかもしれない。
とりあえず、彼の様子を見るためにも身近なところから……。
「あの、シェンド様についてですが……」
と言いかけた時、ユイナート様の笑みが深められた。紅い瞳がよくない光を発している。彼と親しそうなシェンド様の話題から入ったら平気かと思ったが、全くそんなことはなかったようだ。逆効果だった。




