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昔の彼ら(1)


 その後も、ユイナート様達は話を進める。わたしは基本的に話に参加できないので、ぼーっと聞いていたり、時折ユイナート様に恥ずかしいことをされたりするくらいだ。


「元の世界に戻る方法も分からないことですし、普通に過ごしてみるとしますか」

「そうだな。ユイト、お前、この頃はずっと無表情で世界全てがつまらないみたいな顔をしていたよな。そんなお前が急に笑ったら、皆が戸惑うぞ」

「……そんな問題もありましたね。困りました」

「その話し方もそうだ。だがまあ、ここが現実とは限らないし、実際と齟齬があっても大丈夫かもしれないな」


 ユイナート様とシェンド様が話している。ユイナート様がどんな方なのかまだよく理解しきれていないが、優しく微笑んでいて紳士的な人だということは分かる。後ろから抱きしめられているので彼の表情をずっと見ているわけではないけど、そう予想できる。少し意地悪で腹黒そうということも伝わってきた。


「シェミ。何か変なことを考えませんでした?」


 そしてこのように、わたしが考えていることを読んでいるかと思うほどに聡い。体に回されたユイナート様の腕に力が込められて、わたしはぶんぶんと首を横に振った。彼に隠し事はできないのだろうな、ということがよく分かる。


「ふーん……。ねえ、僕はどんな感じだったの?」

「セオは、いつも笑っていたな。話し方は今と同じ感じだ」

「僕、昔と変わっていないってこと?」


 セシリオ様が首を傾げ、眉を顰める。わたしに記憶がないように、彼にも記憶がないらしい。


 ユイナート様とシェンド様に関する記憶はセシリオ様が魔法で封じたということは彼らの話の中で大まかに把握している。どうりで、あの部屋にいた以前のことを思い出そうとしても全く思い出せなかったわけだ。


 あの白い部屋にいる間、わたしはずっとセシリオ様のことを考えていた。というよりも、彼のことしか考えられないような状態だった。今となっては不思議に思う。あれも、何らかの魔法なのだろうか。


「僕の話し方はもう染み付いているようなものなので、このままでいきます。表情については……そうですね、その時の気分で決めます」


 気分で表情が変わることは普通ではないのだろうか。彼にとっては、微笑が素の状態なのかもしれない。


「とりあえず数日様子を見てみて、方針を決めよう。ここで過ごした時間が現実と同じであるなら、できるだけ早く戻りたいがな……。二国の王子が国を空けているということになる。最悪な状態じゃないか」

「なるべく早く、この世界を破壊してでも戻りたいものですね」


 そうして、わたし達は不思議なこの世界で過ごすことになった。この世界が実際の過去を参考につくられているのであれば、わたしの子ども時代についても知ることができるかもしれない。同時に、セシリオ様達のことも知りたい。





 ユイナート様に手を引かれて部屋を出た時、部屋の前には一人の青年が立っていた。緑がかった黄土色の髪を持ち、中性的で美麗な人だ。


「おや、ユイナート殿下にセシリオ殿下。それに、シェンド王子とシェルミカ様まで。何をされていたのですか?」


 彼はにこりと穏やかに微笑んでそう尋ねた。彼を見て、ユイナート様は少し目を丸くする。


「ミハイル……貴方、若いですね……」

「若い? ユイナート殿下の方がお若いですよ」


 彼はミハイル様と言うらしい。王城にいらっしゃるのなら、ユイナート様と顔見知りでも疑問ではない。この頃のわたしも、彼と会ったことがあるようだ。ミハイル様は、一目見ただけでユイナート様とセシリオ様の区別をした。観察眼のある人なのだろう。


「ミハイル! お前、瑞々しいな」

「シェンド王子まで。どうなされたのですか。貴方様達はもう若さを気にするようになられたのですか? まだまだお若い、いや幼いという方が適している年齢ですのに……」


 ミハイル様は呆れたような顔を見せた。セシリオ様は彼の顔をじっと見て、首を傾げている。


「シェルミカ様を連れ出したこと、また怒られますよ」

「問題はありません。逆に、あちら側に渡してたまるものですか」


 ユイナート様はわたしの手を握る力を強め、笑みを深める。それを見て、ミハイル様は驚いたように目を丸くした。


「ユイナート殿下が……笑っている……それに、敬語?」


 彼の反応からも、ユイナート様がこの頃は滅多に笑っていなかったのだろうということがよく伝わってくる。今のユイナート様は少年の姿だから良いとしても、青年姿……セシリオ様と同じくらいの彼が無表情だった場合、かなり圧がありそうだ。氷の王子様、と呼ばれいそう。微笑んでいらっしゃっても恐怖を感じそうではあるが。


「ちょっと、色々ありましてね。僕は今日からこれでいくので、慣れてください。シェルミカがいない場所では、元に戻るかもしれません」


 ミハイル様は目を丸くしたまま、視線をユイナート様に繋がれているわたしの手に落とした。そして、納得がいったという風に頷く。


「ああ、なるほど……わかりました。年頃、というわけですね。私は応援しますよ」

「違います。変な勘違いをしないでください」


 その後もユイナート様とミハイル様は何度か言葉を交わし、彼は別の人に呼ばれてその場を離れた。

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