冒涜者(5)
「それより……僕はいつまでここに閉じ込められるのですか?」
「いつまでだろうね。僕としては、お前がここで衰弱して死ぬ姿を見たいのだけど、僕の一存では決められないから。何日かしたら、ボスから呼び出されると思う。そこで、お前の処遇が決まって、全てが完成する」
「僕の処遇……どうせ処刑でしょう」
「あはは、死ぬのが怖くなった? 自分の過去の行いを省みて、あの時のお前の判断を、血反吐を吐くまで後悔するといい」
喧嘩をするほど仲が良いという話を聞いたことがあるが、それはこの二人には当てはまらないだろう。言葉に含まれる棘が多すぎる。彼らは白達がこの場にいることを忘れ、彼らしか正確に理解できない会話を行ってる。
上司は苛立っているのか、常に多量の魔力を放出しており、肌がピリピリする。気を抜くと腰が抜けてしまいそうだ。この魔力を直に受けても平然とした顔をしている冒涜者は、やはり彼と並ぶくらいの実力を持っているのだろうか。
「……お前の顔を見ていると気分が悪くなってきたよ」
大きなため息を吐いて、上司は急に白の方を見た。認知されていたことに驚きを感じると共に、何を言われるのかと恐怖した。
「さっき言ったことを訂正するよ。囚われているのがこいつである限り、面白いものなんて見られるはずもない」
白はフードの下で瞬いて、深々と頭を下げた。確かに面白いものは見られていない。強大な魔力にあてられてお腹が痛くなっただけだった。
「はぁ……疲れた」
上司は再び大きな息を吐いて、白達の隣を抜けて階段の方に向かっていった。転移魔法を使わずに自らの足でここから離れるようだ。珍しい。
白は目を隠す少女と思わず顔を合わせた。白は無言でここから離れようということを伝えようとするが、彼女は首を振って冒涜者の牢の前に立った。
「……貴方に、お尋ねしたいことがあります」
「何ですか?」
冒涜者は興味深そうに笑みを浮かべ、紅い瞳を彼女に向ける。彼が笑みを浮かべていることは、目が見えない彼女には分からないだろう。
「何故、貴方は冒涜者と呼ばれているのですか?」
その彼女の問いかけに、白ははっとして息を飲んだ。上司が彼を毛嫌いし、教皇様も彼を冒涜者だと述べているので、何の疑問もなく彼を冒涜者だと言ってきた。教皇様の言う事は全て正しいと思っているし、実際全て正しい。しかし、どうして彼が冒涜者と呼ばれているのか、その理由は知らなかった。
姫を強引に手籠めにしていたのは冒涜行為にあたるが、それだけでは異端処分されるほどの罪にはならない。もし彼が、ただ上司の悪感情により処罰されるのならば、それは正しいことなのか違和感を覚える。
「理由は単純ですよ。僕は、アルテアラの教会を燃やしたのです」
……ちゃんと、冒涜者と呼ばれるには正確な理由があったらしい。教会を燃やすなど、神に対する冒涜も行き過ぎている。
「で、では。枢機卿様と貴方は、どのようなご関係なのですか?」
白は彼女を止めたほうがいいか本気で考えた。こんなに踏み込んだ質問を行えるなんて、彼女の精神はかなり強いのかもしれない。
冒涜者は目を瞬いて、ふっと笑みを零した。
「——直接、あいつに聞くといいですよ」
彼の笑みは恐ろしいほど美しく、その瞳は目を奪われるほど冷たかった。




