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冒涜者(2)


「貴方達『神の使徒』が拠点にしているノースリッジの下町は、肥えた王族と貴族のせいで劣悪な環境となっているのですね」

「否定はしません。ですが、矜持を保つためにも言っておきます。我々はノースリッジの王族に忠誠を誓っているわけではありません。下町の民を救うために、我々は行動しています」

「立派な心意気ですね。貴方達の目的は、確か神を降臨させて荒廃した世界を創り変えることでしたっけ。結局、貴方達は神に頼らないと何もできないのですか」


 わざと煽るような言葉を選ぶと、騎士達の手で眠らされていない使徒達は怒りを滲ませている。しかし、目の前の男は全く動じた様子はなく、じっと彼の様子を静かに見ている。


「馬鹿にして……」


 先程の少年の兄は、怒りを隠さずに魔力を纏う。それを片手で制止して、白いローブの男は小さく首を振る。そして、彼は恭しく頭を下げて一礼した。


「アルテアラの王太子殿下。貴方様を、我々の聖教会にご招待します」


 わざとらしい動きと態度に苛立ちながらも、ユイナートは余裕げに笑みを浮かべた。


「……招待? 強制的に連れて行くの間違いではないのですか? 僕を邪魔者、異端として処分しようとしているのでしょう?」

「さあ、どうでしょう」


 白いローブの男は、常に余裕そうな態度を保っている。しかし、彼が纏っている魔力は他の使徒よりも桁違いに多い。気を抜いたら、転移魔法で遠くに飛ばされたり精神魔法で精神攻撃を受けたりする危険性がある。

 ユイナートは少し考え、構えていた剣を下ろした。そして、鞘に戻しながら口を開く。


「その招待に乗りましょう。それ以外、シェルミカに近づく手段が見つかっていませんから」

「……ふふ。今の愛姫の姿を見て、貴方はどう反応するのか」


 小さく呟かれた声に、ユイナートは彼女に何をしたのか問い詰めたくなった。しかし、今は彼女の無事を確認することが第一。彼は後方で控える騎士を振り向いた。


「僕はこの者についていきます。貴方達は、先に帰っておいてください」

「ですが、殿下をお一人にするなど……」

「安心してください。僕は絶対に、生きて帰りますから。シェルミカも連れて帰ることを約束しましょう。ですから、貴方達は、アルテアラを守ってください」


 三人の優秀な騎士は最後まで渋っていたが、ユイナートがまっすぐと伝えると、彼らは首を垂れて了承した。当然、戻れない可能性はある。しかし、この場でそれを言う必要はない。忠義のある騎士達は、ユイナートの言葉を信じ、彼の王国を守ってくれるだろう。万が一戻ることがなかったら、次の国王はまだ産まれていない彼の子供になるのだろうか。その場合、父にはもう少し頑張ってもらう必要がある。


 ユイナートは剣の柄から手を放して、何も持っていないことを示すために両手を上げた。


「おや。素直についてきてくださるとは」

「無駄な問答と抵抗は面倒なだけですからね。わざわざ誘うということは、すぐに殺されるということはないでしょうし」


 白いローブの男は、指を一度鳴らした。すると、ユイナートの体に魔力の紐が絡みつく。以前、転移魔法で突然現れた『神の使徒』を拘束したのと同じ魔法である。強く押さえつける紐が首元にもまとわりつき、ユイナートは小さく咳き込んだ。


「失礼。拘束はさせていただきます」

「普通、言ってから行うものではないのですか?」

「以前私が貴方の前に姿を現わした時、問答無用で拘束してきたではありませんか。それと同じです」


 この男は以前拘束魔法で強く抑えつけたことを、かなり根に持っているようだ。骨がきしむほど強く抑えつけれれ、ユイナートは小さく息を吐いた。


「それでは、行きましょう」


 白いローブの男が転移魔法を発動させる。強大な魔力がユイナートの周囲を包み込み、一瞬のうちに座標が移動して別の場所にたどりついた。彼の周囲には真っ白な装束に身を包んだ集団が並んでおり、その全員が彼を睨みつけている。


「これは、冒涜者相手に結構な出迎えですね」

「そんな態度だったら、いつか後ろから刺されて死にますよ。ここにいる者達は、神の敵である貴方を嫌っていますから」


 言われなくても、彼らの視線を見ていたら分かる。ユイナートはいつものように笑みを浮かべ、それらの視線を受け止めた。

 一人の使徒が白いローブの男に近づいて、声をかけている。


「枢機卿様。この冒涜者をいかがなさるおつもりですか?」

「とりあえず地下牢に入れておいて。ここは教会だから、いくら腹が立っても乱暴はだめだよ。ボスに怒られるから。僕がすべきことは……まずはボスに連絡、それが終わったらシェルミカに会いに行こう。早く会いたいな」


 わざとユイナートにも聞こえる声量で話している。シェルミカの名が出て、彼は憎悪にも似た怒りに全てを支配されそうになったが、それを微笑みの下で抑えつけた。


「じゃあまたね、冒涜者。君は地下牢でじっくりと人生を省みるといいよ」


 あのような仰々しい態度をとるのは外だけなのだろうか。この男は、急に雰囲気を変えている。奴は手をひらひらと振りながら、その姿を消した。残されたユイナートは、その他大勢の使徒達を見て大きくため息を吐いた。


 更新が止まってしまい、本当に本当に申し訳ありません。

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