幕間
汗で濡れた銀の髪をかき上げ、獣のように鋭く紅い目を細め、青年は大きく息を吐いた。表情を消していた彼は、眼前で乱れた姿の少女が眠っているのを見て、ふっと目元を和らげた。
「……シェルミカ」
ユイナートは優しい声で彼女の名を呼び、彼女の頭を撫でた。深い意識の底に飲まれた彼女は目を覚ます気配がない。彼は先程までの彼女の様子を思い出し、思わず笑みをこぼす。
彼は準備しておいた服にさっと着替え、眠るシェルミカの身体の汗をタオルで拭く。途中、彼女の華奢な腕を取り、手首に痣ができているのを見つける。彼は強く抑えすぎたかと反省し、冷たいタオルで手首を冷やす。
彼女の全身を拭き終え、ユイナートは立ち上がる。そして軽い服を彼女に着せ、手錠を付け直し、寒くないように毛布をかける。最後に彼女に口付けをし、彼は部屋を出た。
ユイナートは自室に戻る途中、シェルミカの監視のトアと合流する。
「本日もご苦労様です、トア。シェルミカの様子はどうでしたか?」
自室に戻り椅子に座ったユイナートは、足を組んで机に肘をつきながらトアに尋ねる。その顔に笑みはない。トアやアルビー、カイト等の近しい者にのみに見せる彼の姿である。トアは定期報告を行う。
「そうですか。……魔導騎士大会が気になったのですね。確かに大会の日は監視の目が少なくなりますし。トアがいれば心配はありませんけど」
「必ずシェルミカ様から目を離すことは致しません」
トアの言葉にユイナートは満足そうに頷き、背もたれにもたれかかる。
「騎士達はトアが参加することを望んでいるようですけど、代わりに僕が参加すると言うと反論はなくなりました」
「御迷惑をおかけします」
ユイナートは首を振り、椅子のすぐそばに置かれている剣に手を触れる。
「久しぶりに動きたい気分なのですよ。それに、シェンドも来ますしね。彼を打ち倒すチャンスですよ」
彼は好戦的に笑み、立ち上がる。それを合図にトアは一礼して部屋を出て行った。ユイナートは寝室に入り、ベッドに腰掛けて右手で片目を抑える。
「……僕のシェルミカ」
ほとんど声にならないような声で、彼はぼそりと呟く。そして彼は眠りについた。




