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責任


 白銀の髪を風に揺らしながら、ユイナートは剣に魔力を込める。月の下でまるで舞を踊るように剣を振るうその姿は、傍から見ると月の精霊のように美しい。


「お前の剣技は、いつ見ても剣舞のようだな。流石、『月華の王子』の名は伊達ではない」


 声をかけられ、彼は紅い瞳をその人物に向ける。月光を反射して明るく輝く金髪を持ったシェンドは、憎らしいほどに明るい笑みを浮かべている。


「貴方こそ、『陽光の王子』の名に恥じない良い笑みを浮かべていますね」

「ははっ、俺にとっては誉め言葉だよ。お前と違って、俺の笑みは温かいからな」


 裏のない笑みを浮かべるシェンドを一瞥し、ユイナートは剣を鞘に戻す。そして彼はシェンドに対抗するように、にこりと微笑んだ。


「わざわざ来てくださり、ありがとうございます。貴方にお願いしたいことがあったので」

「……そんなに胡散臭い顔で、どんな面倒なお願いをされることやら」


 ジト目で見られ、ユイナートは大きくため息を吐いて笑みを消した。そして、鋭い眼差しでシェンドを見た。


「面倒なお願いなことは否定しません。これから僕は、『神の使徒』の本拠地に乗り込みます。ですから、貴方にノースリッジへの対応をお任せしたい」

「お前一人で乗り込むのか?」


 探るようにシェンドが問いかけたので、ユイナートは首を振りながら否定する。


「初めは一人行くつもりだったのですが、トアとカイト、アルビーもついてくると言っているので、連れていきます」


 シェルミカが攫われたと聞いたトアとカイトは、ユイナートについてくることに真っ先に名乗りを上げた。アルビーに関しては、ついていくことが当然だという態度であった。


「俺もついていきたいくらいだが、流石に一国の王太子が二人も国を離れるわけにはいかないからな。その『神の使徒』の本拠地は、ノースリッジにあるのだろう?」

「ええ。敵国に乗り込むなんて、愚か者がする所業だとは分かっています。ですが、このまま奴らの元にシェルミカを置いておくわけにはいかない。一刻も早く、取り戻さないと」


 ユイナートは紅い瞳を細め、彼女の姿を思い浮かべる。彼女の声を思い出すと、彼女を奪った奴に対し、目の前が真っ赤になるほどの怒りが彼を支配する。シェルミカ、と口の中で呟いた彼は、じっと見つめてくるシェンドに気が付いて強く睨みつけた。


「何ですか?」

「……てっきり堪えていると思っていたのに。お前は強いんだな」


 やけに生暖かい視線を不快に思ったが、彼が自分を案じていることが伝わってきたので、ため息を吐きながらも、ユイナートはその気持ちを受け入れた。


「堪えるほど、僕はやわじゃありません。ただ……あいつは僕のことを強く恨んでいるでしょうね」

「お前に似て、いやお前以上に残酷で強欲だったよな。シェルミカに酷い対応をしていなければいいのだが」


 シェンドの言葉に、ユイナートは怒りを滲ませながら手に持った剣を強く握った。


「そんなことをしていたら、僕は迷いなくあいつを殺します。こうなったのは、過去の僕の不手際でもあります。僕は絶対に、あいつを止める」

「まあ、あまり気負いすぎるな。あれはお前だけの責任ではなかった」


 慰めようとするシェンドの優しさに感謝しながらも、ユイナートは首を振った。


「いいえ、僕の責任です。今度こそは、間違えない」

「……そうか。俺はお前の味方だ。アルテアラの事は、俺に任せておけ。お前は、俺の大事なシェルミカを救ってこい」

「シェルミカは僕のものです」


 今までで一番強く睨まれたシェンドは、苦笑しながらもユイナートの肩を強く叩いた。

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