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白い部屋(2)


 隣で腰掛けるセシリオ様の胸に頭を預けると、彼は一瞬撫でる手の動きを止めた。しかし、彼はすぐに再開して、小さく笑みを零した。


「シェルミカ。疲れたの?」

「……はい。頭がぼーっとして、変な気分なのです」

「ふふ。難しいことは考えず、そのまま僕に身を預けておけばいい。そうしたら、僕が、君を幸せにしてあげる」


 セシリオ様はわたしの顎に手を添えて、紅い瞳が近づく。目を瞑ると、唇に柔らかい感触があった。

 そのまま、わたしはセシリオ様に肩を押されてベッドに押し倒される。仰向けになりながら、高い位置にある紅い瞳を見上げた。彼の瞳は、変わらず感情を感じ取れなく、冷たい。


「……流石にボスに怒られるか」


 彼はぼそりと呟いて、わたしを見下ろしながら微かに口角を上げた。


「君を乱したいなぁ。僕はね、教会に従事する身だけど、普通に欲はあるし、君みたいに純情な子を汚したくなる。僕が君を抱いたら、君はどんな顔をするのかな……?」


 冷たい紅い瞳に、燃えるような感情が灯っているような気がする。何だかその目が怖くて、わたしは体を震わせた。セシリオ様は、わたしを抱こうとしているのだろうか……?


「震えちゃって、可愛い。僕のことが怖い?」

「……怖い、です」


 正直に言うと、彼は笑って私の頭を撫でた。その瞳からは、さっきの激情はなくなっていた。


「そうだよね。このまま嫌がる君を抱いたら、『月華の王子』と同じになってしまう。僕は、彼とは違うからね。ちゃんと、君に心から求められてからにするよ。……無理やりするのも、好きだけど」


 無理やりがいいなんて、ユイナート様と一緒だ。彼は私が嫌がれば嫌がるほど、嬉しそうな顔をする。

 それにしても、セシリオ様はユイナート様と比べることにこだわっている気がする。彼とユイナート様は、知り合いなのだろうか。二人には何らかの因縁があるように思える。ただ、わたしはユイナート様から彼の過去について何も聞いたことがないので、詳しくは分からない。


 しばらくセシリオ様はじっとわたしを見下ろしていた。その手がわたしの身体をまさぐるので、ひやひやしながら彼の瞳を見つめる。


「……面倒だなぁ。僕の仕事はもう終わったでしょ? ——はいはい。分かりました。それ終わらせたら、シェルミカ抱いてもいい? ——え、いいの、ほんとに?」


 彼は誰かと魔法で連絡しているようだ。わたしからすると、彼がただ独り言を呟いているように聞こえる。その話の内容は、わたしにとって不利益なものだけど。

 セシリオ様は顔に微かな喜びの色を浮かべ、目を細めながらわたしに口付けた。


「ちょっとやるべきことができたから、終わらせてくるね」


 そう言って、彼はベッドから降りた。彼はフードを被り、ひらひらとわたしに手を振る。そして、瞬きをした一瞬の間に彼の姿が消えた。


 わたしは呆然としながら、セシリオ様がいた空間を見ていた。彼が仕事を終え戻ってきたら、わたしは彼に抱かれるの?


 不思議なことに、それほど嫌な気分はしない。どうしてだろう。わたしは、そういう行為がとても苦手なのに。体は嫌がっているのに、頭は喜んでいる。気味が悪い。わたしが、わたしでなくなっているような、そんな感覚がするのだ。


 ……疲れた。急激な眠気がわたしを襲う。

 気が付いたら、わたしの意識は深い闇に包まれた。

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