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幕間 頼み事


 白い大理石の床を、白いローブで身を包む一人の人物が歩く。空虚な廊下を歩くその者の足音は一切鳴っていない。彼は迷いなく突き当りの扉を開けて、部屋の中に入る。


「ボス、僕に何の用?」


 教会というのに適したこの部屋に青年の声が響く。祭壇の前に立った、司教の服を身にまとう長身の人物は、ゆっくりと後ろを向いた。その目は閉じられたままだが、まっすぐと彼に顔を向けている。


「……貴方に頼みたいことがあります」


 聞く者が思わず膝をつきたくなるような厳かな声でそう言われ、青年は紅い瞳を瞬かせて首を傾げた。


「何をすればいい?」

「アルテアラの王城に『愛姫』がいると、神からの思し召しがありました。貴方にその所在を確かめてもらいたい」


 愛姫、と復唱しながら、青年は色のない髪を揺らす。感情の籠らないその瞳を下に向け、何かを考えるように人差し指を顎に添えた。


「王城にいるの? 不思議だね」

「アルテアラの王太子が『愛姫』を捕らえているのではないでしょうか。奴は神に対する冒涜者です。我々の目的を阻むため、そのようなことを行っていても疑問ではありません」

「王太子……『月華の王子』が」


 再び考え込んだ青年は、一瞬だけその瞳に感情を灯した。歓喜、憎悪、哀愁、未練、焦燥といった感情が巡って、しかし一瞬でそれらは消える。彼は微笑んで、彼の上司である妙齢の男性を見た。


「分かった。元々アルテアラに行くつもりだったし、ついでに愛姫がいるかどうか見てくるよ。でも、いるかどうか確かめるだけでいいの? いたら連れてくることもできるけど」

「まだその時ではありません。準備が整っていない」


 そう言って、祭壇を見上げる上司の隣に並び、白髪の青年も同じように壮大な神像を見上げる。神像は窓から差し込む月の光に照らされ、淡く輝いている。そして、神像が手に持っている水晶には、膨大な魔力が込められていた。この魔力が暴発した時には、国一つでも吹き飛んでしまうだろう。


「……もうすぐだ。もうすぐ、この荒れた世界を創り変えることができる」


 上司の言葉に、青年は何も反応しない。水晶を見つめるその紅い瞳には、何の感情も込められていなかった。

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