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幕間 とある王国にて


「あんの若造が!」


 グラスが割れる音が響き、割った本人である年を取った男は手に持っていた手紙を握りつぶした。


「こちらが下手に出てやったというのに……偉そうにしやがって」


 男の傍に控えていた者達はガラスの破片を片付け、水分をふき取る。


「ああ、忌々しい……」


 男は手紙を机の上に放り投げる。手紙はそのまま床の上に落ちた。男の後ろに立っていた顔を隠した青年は男に声をかける。


「陛下。我々がお手伝い致します。その者を殺せばよいのですね?」

「……殺せるものなら、だがな。あいつの実力だけは本物だ。そう簡単には殺せない」

「大丈夫です。我々には、『月華の王子』と相手する道があります。またこれは序の口。貴方様は戦争に勝利し、アルテアラ王国をも併合し、大国の王となることができるのです」


 男は青年に目を向け、ふんと鼻を鳴らした。


「お前達の思う通りに動くことは癪だが、あいつに一泡吹かせるためには仕方がない」

「ご協力ありがとうございます」


 青年は頭を下げ、指を一度鳴らした。すると音もなく男と青年の前にローブを着た三人が姿を現した。三人は膝をついて男に頭を下げる。


「私はアルテアラに参ります。お前達は陛下のお傍で護衛をしなさい」

「承知しました」


 三人は深々と頭を下げ、一人が男の後ろに、一人は扉の前に立ち、一人は気配を消して潜んだ。


「……お前らのような信用できない者達を傍に置いておきたくはない」

「これは我らのボスの命令です。陛下を刺客から守るように、と言われております」


 男は再び鼻を鳴らして、まだ残っていた酒を仰ぎ飲んだ。


「お前は何をする気だ」

「私はアルテアラに赴き、情報を集めます。アルテアラにいた一人の者と連絡が取れなくなったので、それの確認も」


 青年は男の前に立って、恭しく頭を下げる。そして彼が背を向けると、その姿がかき消えた。


「ふん。読めない男だ」


 男は不機嫌そうに眉を顰めていたが、何やら考え込むと、口角を上げた。


「まあいい。あいつの命乞いを聞くのが楽しみだ」


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