反省(2)
シェンド様はユイナート様とわたしを交互に見て、目を鋭くさせる。
「……おい待て。よりにもよってそんな約束をした日に俺を連れてきた? 俺もシェミに触れることができないじゃないか」
「シドは好きにしたらいいですよ。昨晩僕が無理させすぎて、今日は一日中立てない程のシェミの身体を蹂躙したいというのなら」
ユイナート様の言葉にシェンド様は嫌そうな顔をした。
「お前ですら我慢するのに、俺が手を出すわけにはいかない。はぁ、最悪だ」
シェンド様は顔を手で覆って大きくため息を吐いた。ユイナート様はそんな彼を見てにこりと笑んだ。
「残念でしたね」
「……お前、確信犯だろ」
ユイナート様は何も言わず、にこにこと微笑みながらわたしの手を持ち上げて頬にすり寄せた。そして手の甲に口付けが落とされる。
「このくらいならセーフでしょう」
そして彼はわたしの手の甲を指ですっとなぞった。ぞくりと鳥肌のようなものを感じ、くすぐったくて彼から逃れようと手を動かす。すると決して逃がさないとでも言わんばかりに両手で手を包み込まれる。
そして彼は立ち上がってわたしを抱き上げた。彼はそのままべッドに入り、わたしは彼に背後から抱きしめられる形で座ることになった。
「シェミ、遠慮なく僕にもたれかかってください。シド、帰りたくなったら勝手に帰ってくださいね。僕はシェミが眠るまで傍にいます」
「俺を追い出そうとするな」
ユイナート様とシェンド様は微笑みながら睨み合う。初めてシェンド様と出会ったときにもあったが、わたしを挟んで睨み合うのはやめてほしい。とても怖いのだから。
主にわたしの安眠のために二人の険悪な雰囲気をなんとかしたくて、わたしは言葉を発した。
「……わ、わたし、魔導騎士大会でのお二人の活躍を見たかったです」
二人はわたしに視線を移す。急に話が飛びすぎてしまい、不審に思われたかもしれないと思い、顔を伏せた。すると突然背後からユイナート様に耳の先を舐められ、不意を突かれたせいで恥ずかしい声が出てしまう。
「……ふふっ、可愛い。これも身体に負荷は与えないのでセーフでしょう。それにしても、魔導騎士大会ですか……確かに僕の雄姿をシェミに見てもらいたかったです。シドに圧勝した僕の姿を」
「圧勝ではない。雨が降ってなかったら俺が勝ってた」
「言い訳にしか聞こえませんね。ねえシェミ……どうして貴女は見たいと思ったのですか?」
耳元で笑われると彼の吐息が耳に触れてくすぐったく、低い声が響き、常に落ち着かない。しかもユイナート様がわたしに触れる手つきが普段の行為を思い出させるものなので、体が熱を発する。赤くなっているであろう耳を撫でられ、わたしは彼が変な気を起こさないように質問に答えた。
「……以前見たユイト様の剣技を忘れることができなくて。わたし、どうしてユイト様がそんなにもお強いのかが気になったのです」
「ユイトが強い理由は簡単だよ。こいつは……」
シェンド様が何かを言おうとする途中、ユイナート様の体が少し動いたと思った途端シェンド様の体が吹き飛んだ。何が起こったのかわからなくて、飛ばされた彼を見ていたが、彼はすぐに起き上がってユイナート様を強く睨んだ。
「お前、何をするんだ」
「貴方が勝手なことを言おうとするからですよ。それに……シェミが僕の剣技を褒めてくれたのが可愛すぎていたずらをしようと思っていたところでしたのに」
「だからって急に飛ばすなよな……」
「これからは一応言ってから飛ばしますね」
ユイナート様は魔法でシェンド様を吹き飛ばしたのだろうか。彼は今さっきシェンド様を吹き飛ばした人とは思えないような丁寧な手つきでわたしの頭を撫でている。わたしの頭も彼の力があれば簡単に飛ばされるのだろうと思うと、とても怖い。それに、彼の言ういたずらというものが恐ろしくて、わたしはこれから下手なことを言わないでおこうと思った。




