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反省(1)


 入浴は、夕食の三十分後。王城の浴場は、とても広い。わたしのような者が使っていいようなお風呂ではないと思う。それでも、ユイナート様はここを使うように言っている。このお風呂を使っているのは、彼だけらしい。他のご家族はどこのお風呂を使っているのだろうか。

 

 そのため、わたしがお風呂に入っている間に誰か別の人が入って来て鉢合わせ、ということはない。その点は安心だ。お風呂でもわたしの世話をしてくれる侍女の方がいる。

 髪や体を洗ってもらったり、服の着替えを手伝ってくれたり。至れり尽くせりでいつまでも落ち着かない。始めは恥ずかしさを感じていたが、今では慣れてしまった。慣れても落ち着かないけど。ちなみに、入浴の間はカイト様、トア様は流石に監視につかない。侍女の方々がいるので、監視面ではほとんど変わらないけど。

 今日はわたしの体が思う様に動かないので、ニーナ様達がわたしを支えながら入浴の介助をしてくれる。服を脱いで、わたしがお湯に浸かっている間に髪の毛が洗われ、気が付いたら体を洗うのも終わっている、というのが日課だ。わたしの体を綺麗にすることはユイナート様が強く命じていることらしい。お風呂に入れさせてもらえることはありがたい。

 ……彼の第一の理由は、わたしを抱くためだろうけど。


 お湯に浸かり、体を洗った後には、脱衣所でネグリジェを着る。そしてわたしが長椅子に座ると、ニーナ様達により化粧水等でわたしの肌ケアが行われる。わたしはこの間もされるがままだ。

 ユイナート様に見せることだけが目的のわたしの顔や身体だが、丁寧にケアをされる。これもユイナート様の指示らしい。流石に肌荒れが酷い相手を抱きたくはないのだろう。仮にも彼は王子様なので、わたしも最低限の姿を維持する必要がある。


「……シェルミカ様の髪とお肌はいつ見てもお綺麗ですね」


 ニーナ様がわたしの髪にオイルを塗りながらそう呟いた。わたしは彼女達の邪魔をしないように顔を動かさないようにしているので、正面の鏡を通して彼女を見る。


「ユイナート様が用意してくださる化粧品の質が良いのですね」

「それもあるでしょうが、それだけが理由ではないと思いますよ」


 ニーナ様が微笑むが、その言葉の意味を問うてもはぐらかされてしまった。




 入浴を終えると部屋に戻る。わたしは再びベッドに入り、ユイナート様が訪れるのを待つ間、本を読む。

 数ページ読んだ時に、部屋の扉が叩かれた。寝室から扉は見えないが、カイト様が扉を開け、中に誰かが入って来た。恐らくユイナート様だろう。そう思ったすぐ、寝室にユイナート様が顔を覗かせる。


「シェルミカ。体調はどうですか?」

「久しぶりだな、シェルミカ。逢いたかったよ」


 ユイナート様の声の後、別の低い声が聞こえた。まさか、と思って見ると、思った通りの金髪がちらりと見えた。シェンド様だ。


「……大丈夫です、ユイト様。お久しぶりです、シド様」


 二人に同時に返事をして、わたしは本を机に置く。ユイナート様は微笑み、シェンド様もにこりと笑いながら寝室に入り、わたしに近づいてきた。二人はベッドの横の椅子に腰かける。ユイナート様はわたしの手を握った。


「昨晩は貴女に無理をさせてしまいすみませんでした。ミハイルにこっぴどく叱れらてしまい……。僕も反省したのです」

「お前が反省? 明日は暴風雨になるな」


 ユイナート様は笑みを深めてシェンド様を見た。正直わたしもシェンド様に同意する。ユイナート様が反省をする姿が思い浮かばない。


「シェミ。今変なことを考えませんでした?」

「……いいえ。昨晩は醜態をお見せしてしまい、大変申し訳ありませんでした。ユイト様のお陰で、助かりました」


 ユイナート様がシェンド様からわたしに顔を向け、にこりと良い笑みを浮かべたので、わたしは身の危険を感じてすぐ話を逸らした。わたしの言葉にユイナート様だけでなくシェンド様も驚いたようにわたしの顔を見た。何か変なことを言ってしまっただろうか。


「貴女は本当に……」


 ユイナート様は瞳に熱を灯してわたしの顎に手を添えた。そして彼の顔が近づいてきて、わたしは思わず目を瞑る。……深い口づけを覚悟して待っていたが、いつまでたっても彼の唇が触れることはなかった。

 恐る恐る目を開けると、ユイナート様は眉を顰めて動きを止めていた。わたしに何か気に入らないことでもあったのだろうか。


「ユイト様?」

「……ああ、ごめんなさい。今日は……貴女に口付けることはできません」


 シェンド様とわたしは同時に驚きから目を丸くした。ユイナート様は少し困ったように微笑み、わたしの顎から手を離した。しかし手は握られたままである。


「ミハイルと約束したのです。今日はシェミに触れることを自重すると。残念ながら、今日は貴女の傍にいることしかできません」


 わたしはミハイル様に感謝した。それと同時に、ユイナート様に少しだけ申し訳ない気分になった。昨晩は媚薬のせいでわたしがユイナート様を散々誘惑してしまったので、彼だけが悪いわけではない。それに、こんな落ち込んだ様子のユイナート様を始めて見た。


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