憧れのあの人に恋焦がれて
(好きだなぁ…)
心の中では、そう思うものの告白が出来ないでいる。
(でも、あの人は俺の憧れであって恋人になりたいわけじゃない…)
名前を何となく知っているだけで、本人のことはあまり知らない。
恐らく、向こうも同じだろう。
「あの」
「はい!」
「嫌じゃなければ、一緒にお昼食べない?」
「へ?」
思わず、間抜けな声が出てしまった。
まさか、好きな相手に誘われるとは思っていなかったからだ。
「…嫌だった?」
「いや、全然!是非!」
「じゃあ、屋上で食べようか。」
「はい!」
屋上へ移動中、緊張で手汗が止まらなかった。
「じゃ、食べようか。」
そう言われ、コクコクと頷いた。
「自己紹介がまだだったね。私は、薙野香織。君は?」
「えっと、狭霧琉偉…です。」
「琉偉くんか。私のことは香織って呼んでね。」
そんな他愛もない話をしていると、琉偉は今しかないと香織に告白を決意した。
「あの…」
「何?」
「俺、香織ちゃんのことが…好きです!俺で良ければ、付き合って…下さい…」
絞り出しながら、香織に告白をした。
「嬉しい…私で良ければ、よろしくお願いします!」
そう香織に返され、琉偉は思っていたことが声に出てしまう。
「俺も、嬉しい…だって、ずっと憧れていたから。そんな憧れていた人と恋人になれるなんて思ってもいなかったから。めちゃくちゃ嬉しい。」
琉偉は、ふにゃっと笑いながらそう言った。
それを見た、香織は顔を真っ赤にしていた。
「えっと…そうだったんだ。」
と少し、照れながら言った。
「それに…」
琉偉は、続ける。
「さっきも言ったけど、俺にとって香織さんは憧れの存在で…俺なんかにはもったいないくらい綺麗だから。そんな人と付き合えるなんて俺は幸せ者だなって。」
「綺麗だなんて…言い過ぎだよ…」
「言い過ぎなんかじゃない。事実だよ。」
「…」
香織は、思わず黙ってしまう。
そんな風に言われるのは、琉偉が初めてだからだ。
「琉偉くん…ありがとう」
香織がそう呟くと琉偉は、ニコッと笑った。
「もう、予鈴が鳴るから行こっか。」
「そうだね。」
「その前にしたいことがあって…」
「なに?」
「恋人になって、初めてのキス…したいなって。」
「えっ」
「…ダメ?」
子犬のような目をして、お願いをされてしまったので香織は断ることが出来なかった。
「…いいよ」
琉偉は、香織の唇にキスをした。
予鈴が鳴るギリギリで2人はそれぞれの教室に戻った。
別れ際に、「じゃあ、明日からよろしくね。」と言葉を交わしいつもの日常へと戻って行く。
琉偉にとっても、香織にとっても最高の日を過ごすことができたのであった。




