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2. ふたりのお泊まり会


俺たちには、

4人しか入ることのできない離宮がある。

豪華な秘密基地といったところだ。


使用人などをいれることもなく、

ただ4人で遊ぶためだけの場所だ。



3ヶ月に1度の12日間、

俺とライは2人で離宮に泊まり込む


というのも、

発情期(ヒート)の度に領地の邸宅に帰り、

長めに籠るサラシャと、従者としてそれについていくルルマルが離宮にこないからだ。


最初はそのことに気づいた俺が、

もしライがきたら二人きりになれるこの機会を

逃すまいと、泊まり込みでライを待機することを決め込みお泊まりセットを持ち込んだのだが、

なんと初日すぐにやってきて、お泊まりセットに気付いたライの提案によって、毎回お泊まり会を開催するはこびとなったのだ。

あの行動をとった俺を褒めちぎりたい。





13歳の頃から続くお泊まり会は、

もう5年目になるが、“ そういった ” 甘い時間を過ごしたことは1度もない。

友人以上の距離感で触れられることがないという事実は、俺の心を容赦なく傷つける。


どうせ今回のお泊まり会も何もないだろうな。

というか、サラシャの発情期(ヒート)をライがどうにかするようになったら、お泊まり会が終わってしまうのでは…?

もしかしたら、これが最後かもしれない……



そんなことを考えて、ベッドにはいり、

夢の中へ意識を飛ばしかけた、そのとき



「……ツェリ」


天井の方向から聞こえる、

聞こえるはずのない愛おしいその声に、

すぐさま呼び戻され、視線を向ける



「ら、ライ?!…な、なにしてっ…!」



俺が押し倒されているような構図で、

ライに見つめられ、息の仕方を忘れてしまう


え……?!

な、なにこれ……?

夢でもありえねぇ展開だろ


自惚れたくなんかないのに、

どうしても熱っぽくみえてしまうライの視線に

溶かされてしまいそうになる



「…ツェリ、俺ね」


そういうながら、片手で俺の耳と頬を包み、

親指でやさしく頬をなぞる



「ツェリに俺のこと、好きなってほしい。」




…………ぇえ??


え、すきに、って……

え、どういう意味…………え、なに……

なにこれ、なんだこれ



上手く思考なんて出来るはずないくらいに

顔を火照ってらせ、頭を熱くする

心臓が高鳴りすぎて、あまりの速さと大きさに、

余計に困惑が強まる



「俺は好きだよ」



そういうと、ライは俺の顎をくいっと支え、




ちゅっ




と、あまりにも甘くて、あまりにも熱い、

やさしい口付けをおとし、



「 こういう意味で 」



と付け足し、ふにゃりと微笑んだ




氷のような冷たさの中に色気がある。

圧倒的な強さと恐ろしいほどの威厳。

そう称えられるライがみせる、


甘く、熱っぽく、天使のように柔らかい笑顔



それが意味するものを、理解してしまった


「……っ!」



……俺のことが、すき…………?

……ライは、俺のことが、特別…………?


信じられるわけがないのに、

信じたいし、信じるしかないこの状況に、

胸がいっぱいすぎて、気持ちが溢れてしまって、

涙がぽろぽろと零れていく



「……っすき、ずっと、っ……」



でも、



「……俺にそんな顔してくれるの、すごい、

嬉しいっ……のに、っ……」


だけど、



「…ツェリ?」



心配そうに俺を覗き込むライ



「……っけど、それぇ、サラシャにもしてたっ……」



うぅ…っと必死に涙を止めようと拭いながら、

みっともないヤキモチをぶつけてしまう


つまりこの尊い表情が、

俺を好きだからというのなら、

それはつまり、サラシャのことも同じように好きということだ。そんなの、耐えられるわけがないのだ。



「……え。

……ツェリの話してたから、

としか思えないな、それ。

俺、ツェリのことでしか笑えないし。」



あたりまえでしょ?とでもいうかのように

真剣に語るライのたった一言で、

長年の俺の重すぎる足枷が外された。



「…………なにそれ、すき。」


か細い声で、きゅううううっと締め付けられる胸から、必死に絞り出した言葉だった。



それをきいたライが、

あまりに嬉しそうに、子供のように笑うものだから、

そのあざとさと愛おしさに、

心を奪われてしまう。


そんな俺を色っぽくて熱い瞳で溶かしながら、

「俺のツェリ」

と幸せそうに抱きしめ、俺の唇を甘く奪うライ


先程から、脳を焼きつくすほど、

甘く 強く 熱く香る俺とライのフェロモンは、

絡み合い混ざり合い、溶け合ってふたりを包む。


「……っんん、」


重なる唇が溶け合うのと同時に、

激しい発情期(ヒート)がはじまる


強すぎるくらいの抑制剤、飲んでたのにー…


ライとの触れ合いをまえにして、

抑制剤は無力とかすことが、どうしようもなく、

嬉しい。


俺の発情期(ヒート)にあてられ、

強い欲情を必死に抑え、抗おうとするライ



本能で、わかってしまった


これは、ラットだ



S級同士とはいえ、

S級の者が、発情期(ヒート)もラットも、

誰かに誘発されることなんてない

しかも抑制剤を飲んでいるのだ


そんなの、運命の番でもない限りー……





……運命の、番だ。




俺がそう確信したことを気づいたライが、

苦しそうににこっと笑顔をつくる


あぁ、そうか。ライは、知っていたのか。



それでも俺を大切にするためか、

必死に自分を諌めようとするライが

愛おしくてたまらない


そんなライを、俺も愛したくて、

愛してほしくて、たまらない。


朦朧とする意識と甘い熱さの中で、

その愛おしさはとどまることをしらないというように溢れる



「……ライ、ちょーだい。…ぜんぶ、あげる。」


「…っ俺も、だよ。ツェリ。」




この日、俺とライは、

身も心も番となった。

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