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『名無し』の魔女のものがたり  作者: ソーカンノ
第2部 クラウス編
19/26

第19話 『レッドドラゴンとの戦い その3』

 勝敗は、一瞬で決まる。


 完全に、力を使い果たしていた。私も、セルヴィも、シェーンも床に倒れたまま、もはや立ち上がるほどの余力もない。ここから先、なんの戦力にもなれない私たちの眼前で、すべてが決まる最終局面が訪れようとしている。


 低い位置からは、部屋の全景が窺えた。


 ゾラの大槌は当初、石像と化したレッドドラゴンの足元にあった。そこからシェーンが走って持ち出し、私とセルヴィが助力し、全力でここまで引いてきた。気づけばかなりの距離を移動している。それでも、階段前までには届いていない。


 このロジックを埋める事実は、ゾラが歩いたということ。

 身体に負荷を掛けない歩速で、血を流す私たちに向かって。


 駆け寄りたかったろう。急ぎたかったろう。

 しかしそれは許されなかった。ゾラには役目があったからだ。


 ゾラの存在は、私たちの要だ。一撃でレッドドラゴンを殺しきるほどの火力を出力できるのは、この中で彼女以外にいない。通常ならすぐさま施療院に駆け込むほどの大怪我を負い、碌に動けない状態に陥ってなお、私たちは彼女の助力を乞わねば事態を動かすことができない。


 削るわけにはいかなかった。これ以上。

 その身から血の一滴すら、零させるわけにはいかなかった。


 今、そのゾラが私たちの正面に立つ。


 凝視するものは、私たちと同じ。両翼を開いたレッドドラゴン。

 部屋というにはあまりに広い空間の最奥、扉の前に立ち塞がる番人。


 創造主に圧倒的な強者としてデザインされた巨躯が、これだけの距離を置いてなお、視界に大きく映る。羽ばたきの一瞬前のような体勢で、両翼を微細に震わせ、間断なく見えない斬撃を放ち続けている。


 その瞳に、未だ怯えが走って見えるのは、きっと私だけではない。


 レッドドラゴンから見て前方に2人。至近距離にはバリー、中距離にはエテルナがいる。ともに翼から放たれる見えない斬撃を、バリーは大剣で弾き、エテルナは防御魔法で防いでいる。


 両者とも、もはや攻撃のすべてを凌ぐ力は残っていない。翼から見えない斬撃が繰り出される度、彼らの身体に新たな生傷が増えてゆく。


 肉体の限界などとうに通り越している。

 そのはずなのに、それでも彼らは倒れない。


 双璧。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

 彼らはまさしく壁のようだった。


 圧倒しているのはレッドドラゴンの方だ。彼我の戦力差など計算するまでもない。見えない斬撃の正体は魔法ではなく、ドラゴン種として持って生まれた膂力を用いて放たれる空気の刃だ。無尽蔵のタフネスを誇るレッドドラゴンであれば、いくらだって放ち続けられるに違いない。


 しかし、そんなレッドドラゴンをもってしても、削り切れない。

 不可解。不気味。焦燥……そして、それらに起因する、怯懦きょうだ


 圧倒的な強者だった。弱者を撃退するためにここにいた。レッドドラゴンの中で己の存在意義が問われる。その回復のために躍起になっている。眼の前の敵を倒せ。背後の扉を守れ。誰も通すな。決して誰もだ。


 だから気づくことができない。

 眼前の2人しか見ていないから。


 本当に警戒すべき、己を屠るためだけにここにいる冒険者の存在に――。


「……行きます」


 その言葉はなにより、自身に言い聞かせているように聞こえた。

 深く息を吸って、吐くと、ゾラは両腕で大槌を振り上げて構える。


 未だレッドドラゴンはゾラを視認していない。その注意はバリーとエテルナにのみ注がれている。とうの昔に限界を迎えながらも決して倒れない人間たちに。その根拠を彼らの身の内に探すように、ひたすら攻撃を放ち続ける。


 絶対にわかるものか、と私は思う。

 彼らが倒れないのは、背後に私たちを背負っているからだ。


 仲間がいる。自分が倒れれば、失ってしまう大切な仲間が。

 それを守るためなら、命が尽きようと惜しくはない。


 その覚悟と意志が、彼らの精神に肉体を凌駕させている。

 惜しい、と心から思う。絶対に死なせてはいけない。だから――。


「ゾラ、頼む」


 搾り出した蚊の鳴くような声は、届いたか疑わしい。

 ゾラは構えたまま振り返り、私に微笑を送って寄越す。


「はい、わかりました」


 ゾラは走れない。

 チャンスはただの1度きり。


 レッドドラゴンとの間には依然として数十メートルの距離が存在している。完全にゾラの間合いの外側だ。ここで大槌を振り上げることの意味は――。


「行け」


 掠れた声が私の咽喉から出た瞬間、ゾラが大槌を石床に叩きつけた。


 轟音なんてレベルじゃない。大槌の一撃は石床を広範囲にわたって破壊し、拡散した衝撃の余波は部屋全体を縦方向に震撼させた。さながら直下で大地震が起こったような揺れが収まったとき、その場にゾラの姿はなかった。


 反射的に視線を上げる。足を使えないゾラのこれでまで培ってきた力と技が、8年前よりなお高く、彼女自身を天井近くまで跳躍させていた。


 レッドドラゴンの眼球が動く。初めて正面からゾラを捉える。


 遠眼にも、彼女の姿は戦力として映っていなかったはずだ。その身から漂う血の芳香に、ややもすれば死の気配すら嗅ぎつけていたのかもしれない。


 反射的に繰り出された、魔法防壁の多重展開。

 それは人類の魔法体系では決してなし得ない神業。


 果たして、必要十分な守りであるはずだった。

 並の戦士ならその1枚すら破壊できずに終わる。


 だが、ゾラだ。その油断は致命傷になり得る。


 己にとっての最大の脅威を見誤り、最大の攻撃を見誤った。

 それが『名無し』の魔女の居室の守護者、レッドドラゴンの敗因だった。



「こ・れ・で・ト・ド・メ・だああああああああああああああああっ!!!」



 ポニーテイルを風に靡かせ、裂帛の気合いとともに大槌が振り下ろされる。


 跳躍の勢いと、大槌の巨大重量、そして己自身の全体重を乗せた、文字通り渾身の一撃。


 展開した魔法障壁が、ガラスのように爆ぜ割れる。たった一撃で5枚もの魔法障壁を貫通し、レッドドラゴンの生身の額へと迫る。


 両翼は使えない。瀕死の人間たちに塞がれている。彼らは未だに見えない斬撃を耐え、隙あらばその身に反撃せんと闘志を滾らせている。



 逃げられない。



 唯一無二の真理を理解したであろうそのとき、ゾラの大槌がレッドドラゴンの額に突き刺さった。固い頭骨を砕いた勢いそのままに、頭ごと石床に向かって叩きつける。


 レッドドラゴンの下顎が、派手に石床を砕くのを見た。

 耳をつんざく大音とともに、室内が再び大地震のように振動する。


 大槌の一撃はおそらく、脳にまで達しているだろう。ドラゴン種という翼持つ巨大生物であっても、頭部は最優先で守るべき肉体の急所のはずだ。


「やった、のか……?」


 決まっていてくれ、そう願いながら上体を起こした。


 巻き起こった土煙がゆっくりと霧散して、私の近くの床まで吹き飛ばされてきたゾラの姿が眼に入る。


「ゾラ!!」

「大丈夫、です。傷口は開いてしまいましたが……」


 うつ伏せのゾラから石床へと、血溜りが広がってゆく。

 意識はまだ残っているようだが、危険な状態だ。


「動かなくていい。今からそちらに行く」

「ご迷惑を、お掛けして……」

「違うよ。君がいなければ、私たちは助かっていない」


 訂正を入れて、片膝を立てる。ゾラの傍に寄ると、腕を肩に掛けて、彼女の身体の支えとなった。


「立てるか? セルヴィたちのところまで行こう」


 正直、実感らしきものがない。

 私たちは本当にレッドドラゴンに勝てたのだろうか。


 セルヴィの元へ向かう。力尽きて転倒した際、片腕と片足を痛めたようだ。かろうじて起き上がってはいるものの、痛む患部を気にする素振りを見せる。


「……本当に、終わったの?」

「たぶん」

「そうでなきゃ困るってえの」


 ぶっきら棒な声の聞こえる方に眼を遣ると、シェーンがいる。手も足を床に投げ出して、完全に脱力した状態で天井を見ていた。


「見てたぜ。すげえ一撃だったな。まさに『必殺の一撃』」

「シェーン、君は大丈夫なのか」

「平気だ、って言いたいとこだけど、あと2か月は歩けねえな」


 その口ぶりから命に別状はないらしく、ほっと胸を撫で下ろす。


「ゾラの状態を見せて。エテルナほどじゃないけど、治癒の心得はあるから」

「頼むよ」


 セルヴィにゾラを預ける。座り込んだ姿勢のまま裂傷に杖を翳し、癒しの光を放出させる。ゾラは痛みに眉を歪めるが、今すぐどうなるという状態ではない様子だ。


 立ち上がり、激戦の場に視線を移す。石床にめり込んだレッドドラゴンの頭部が半壊していた。割れた頭蓋の下からは様々なものがこぼれ出し、本体は微動だにしていない。生きとし生けるものの避けられぬ宿命。死がその身を襲ったのか。確信は徐々に私の心に染み入ろうとしている。


 いや、それより優先して確かめるべきものがあったはずだ。

 レッドドラゴンの繰り出す猛攻に耐えきった、双璧の姿だ。


 バリーもエテルナも、その場に蹲っている。バリーは大剣を地に突き立ててしゃがみ込み、エテルナは腰から砕けた感じで尻餅を突いている。しかし最も重要なことは、ともに健在であるということだ。


 彼らは首のみを捻り、未だ動ける私を見た。


 バリーは白い歯を覗かせてサムズアップし、エテルナは微笑して何故か投げキッスなどを寄越している。


 緊張を解いた彼らの姿を見て、私の身にさらなる実感が呼び起こされた。勝ったのだ、私たちは。この8年にわたる事業の集大成として、遂に『名無し』の魔女の居室へ続く扉の守護者を除くに至った。


 万感の思いが込み上げる。長かった。本当に。

 これでやっと、私たちは歴史の真相に辿り着ける。


 だが、その前にだ。私にはやるべきことがある。今この室内にいる仲間たちの中で、かろうじてまともに動けるのは私だけだ。外に助けを呼びに行く役は、私を置いて他の誰にも果たすことはできない。


「みんな! その場で待機だ! 私が助けを呼んでくるから、それまで……」


 鼻先に、雪片。

 外でもないのに。


 気のせいではなかった。鼻の上に乗った雪の欠片は、体温では溶けずにその存在を誇示し続ける。


「なんだ?」


 伝達の途中にもかかわらず、私は思わず言葉を切る。

 眼を寄せて確認すると、その雪片は仄かに光を帯びていた。


 反射的に首を巡らせた。私の鼻に載ったものと同じような物体が、空中を無数に浮遊している。それも、ただ浮遊しているだけではない。重力に逆行し、地から天へと立ち昇っているように見える。


 この不可思議な現象の正体には、即座に行き当たった。


「魔素……どうして……?」


 無意識の呟きが疲れた脳を覚醒する。


 この部屋は、ひとつの閉じた循環系だった。レッドドラゴン。扉。階段。侵入者と会敵したレッドドラゴンはドラゴンブレスを吐く。その被害は階段の上には及ばない。それ故に私たちは、地下へと続く階段を安全地帯として活用してきた。


 レッドドラゴンにドラゴンブレスを吐かせ、その身から魔力を奪い、枯渇する瞬間をずっと待ちわびてきた。それに8年もの月日を費やさざるを得なかった理由。それはこの部屋自体に、ある種の結界が張られていたことだ。レッドドラゴンの吐いたドラゴンブレスはこの室内を滞留し、魔素に還元されていずれはその身へと再吸収される。私たちはずっと、いたちごっこをしてきた。


「……ドラゴンブレス」


 言って、口元を押さえる。間違いない。

 レッドドラゴンの肉体はまだ死に絶えていない。


 周囲を見渡す。最優先で仲間の正確な配置をたしかめる。

 その途中、双眸を丸く見開いたセルヴィと視線が交錯した。


「やめて」


 セルヴィが告げる。私に向かって。

 才媛と呼ばれた彼女も、同じ結論に行きついたのか。


「クラウス、お願い。あなただけでも……」


 懇願する妻の声が、逆説的に私のなすべきことを示してくれた。


 理解している。これが最後なのだと。

 レッドドラゴンは死に瀕し、余力のすべてを使って魔素を搔き集めている。


 ドラゴンブレスを撃てば必ず絶命する。だから、私の夢はもう眼の前にある。


 しかし、これは秤に掛けるまでもない天秤だ。

 躊躇はない。私だけ助かったところで意味なんてない。


 真相に行きついたところで、私の心には後悔が残るだけだ。

 死ぬまで消えない、辛く苦しい後悔が、心を苛み続けるだけだ。


 だから――。


 視線を切った。これが最後になるかもしれない。

 私は再び視線を巡らせ、室内を照らす松明へと走り寄る。


 燃える松明を片手で持ち、利き腕で抜剣する。魔素の放つ柔らかな光で満ちる室内を、レッドドラゴンに向かって全速力で駆けた。


「エテルナ!!」


 駆けながら、叫んだ。信じがたい周囲の光景を目の当たりにし、エテルナは座り込んだまま絶句している。名を呼ばれて弾けたようにこちらを見る彼女に詳細を説明している余裕はない。


「防御魔法だ!! バリーを頼む!!」

「やめてください!! 長年追い求めてきた夢なんでしょう!!」

「誰かを犠牲にして手に入れる夢に価値などあるものか!!」


 私はエテルナを一顧だにしない。

 未だ動きを見せないレッドドラゴンのみを凝視する。


「大将!! 俺はあんたを死なせるためにここにいるんじゃねえ!!」

「妻を、頼んだ」


 擦れ違いざまに、私のもっとも大切なものを託す。


 語るべきことがある。バリーからは多くを学んだ。頼りになる仲間だった。こんな結末を見るために力を貸してくれたんじゃないことも、重々承知している。


 今、私だけなら逃げられる。私だけなら真相に至れる。


 でも、ここにいる全員を犠牲にして夢を叶えても、それは私の叶えたかった夢ではない。何故ならそれは、後悔すると知っていて諦めたからだ。怖気づいて先に進む勇気を失ったからだ。私自身が、負け犬になってしまったからだ。


 だからこそ私は、レッドドラゴンと対峙しなければならない。


「私を見ろ!!」


 咽喉が裂けるほどの声量で、叫んだ。

 レッドドラゴンの鼻先がわずかに動く。


 私を脅威と認識していないのか、それとも最後の一撃のために余力を残しているのか、どちらにせよ私にこのままで済ます気はない。


 レッドドラゴンの頭部近くまで駆け寄り、露出した脳味噌に逆手に持った剣を突き入れる。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 絶叫が、間近で迸った。

 ドラゴン種の咆哮を受けて、私の全身がビリビリと震える。


 白濁した瞳が動き、今度こそ私を敵として視認した。そうだ、それでいい。私は不敵な笑みを浮かべている。今、私はこんなにもお前への殺意に満ち満ちている。捨て置けば、今すぐにでもその首を搔っ切ってやるぞ。


 瀕死の肉体が起きだす。その動きに連動して、私はレッドドラゴンから距離を取った。光を失い始めている眼でもわかるよう松明を揺らし、針路を誘導する。復讐の念に囚われたレッドドラゴンは素直に私に追従し、背を追うようにしてその巨体を走らせた。


「こっちだ!!」


 片脚を負傷しているため、針路を変更させるのには少し時間が要った。その間にも、室内には魔素の光がより濃く満ちている。レッドドラゴンの体躯に触れると取り込まれ、最後のドラゴンブレスへのカウントダウンを着々と進ませる。


 脚に続いて胴体が旋回する。それに伴って砲口となる大口の射線も変わる。私は自らの退路を確保していない。他の5人の配置から割り出した、もっとも彼らに被害の及ばない方向へとひたすらに駆けている。


 やがて、目的地が見えてきた。


 部屋最奥の隅、壁と壁が交わる袋小路へと、私は自らの身を滑らすようにして入り込んだ。


 殆どめしいたレッドドラゴンが松明の炎を頼りに突進し、私のことを焼き殺さんとばかりに大口を開く。


「セルヴィ……ごめん」


 最後に思い浮かんだのは、妻の笑顔。

 昔からうっすらと、予想していたことがある。


 人生の最期に、人は見たいものを見る。


 私にとってのそれは、8年間追い求めた謎の真相などではなく、しあわせそうな妻の姿だったのだろう。


 だが、それもまた私が壊す。他ならぬ私自身のわがままで。

 皆に生きてもらいたいと願ってしまった。それを一番の大切だと決めた。


 だからだろうか。不思議と恐怖はない。満足ですらある。大きく開かれた咢の最奥に、赤熱する魔力の光すら見えているのに穏やかな心地でいられる。


 きっとそれは、やり切った人間の心にのみ兆す心境だ。

 道半ばで失われることになっても、そこには納得がある。


 手を尽くし、全力を出しきったという証が、私自身に人生の終局すらも受け入れさせてくれる。


 私は、ゆっくりと瞼を閉じた。もうなにも怖いものなどない。

 人生を、その終局を受け入れた私の先に待つのは、凪のような平穏――。


「…………」


 の、はずだった。


 ゆっくりと眼を開ける。レッドドラゴンは依然としてそこにいた。白濁した眼球で睨みを利かせ、私の存在そのものを否定するかのように、ドラゴンブレスを吐くための前傾姿勢を取っていた。


 変化は、脚から訪れた。石床を穿つ爪先が、指が、脚全体から色が失われてゆく。それらは氷のように伝播し、下方から上方に向かってレッドドラゴンの全身を隈なく覆い尽くす。


 全身を真っ白に染め上げたレッドドラゴンが、四肢の末端から粉々になってゆく。さながら浜辺に固められた砂の像が、水気を失い崩壊していくように。


 やがてレッドドラゴンであったものは緩やかな風に溶け、完全に空気中に霧散した。


 私はその光景から眼を離せず、瞬きすら忘れて見入っていた。

 倒れるまでそうしていたかもしれない。もしも声が聞こえなかったら。


「……クラウスさん」


 エテルナがいた。

 力を振り絞ったのだろう。


 傷だらけの姿で、石床に杖を突いて立ち上がって、私の顔を見ていた。


「あなたの、勝ちです」

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