『名無し』の魔女のものがたり

【第１部】

「今際の際だぞ」

治癒魔法士メリンダは、ダンジョンの最下層で勇者パーティであるバゼット一行に追放される。そのときの彼女の呟きを聞いた者はいない。

凶悪な魔物がひしめくダンジョンから脱出を果たしたメリンダの前には、暴力的なまでの自由があった。なにをしてもいいし、しなくてもいい。しかし運命の手は、彼女をそのまま放り置くことをしない。

生まれ故郷に館を構え、世俗を離れて長年にわたる隠遁生活を送る彼女の前に、ひとりの人間を遣わすのだった――。


【第２部】

公爵令息クラウスは、『名無し』の魔女の居室を目指す。

王宮内にて発見された光る石壁。それは、千年前に存在したとされる『名無し』の魔女の居室へと繋がる長い階段に続いていた。

クラウスは挑戦する。冒険者たちとともに。果たして彼らは立ち塞がる強大な番人を倒し、歴史の真実に至れるだろうか――。