金魚すくいのポイの穴
「第5回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」への応募作品です。
ようやくお祭りに誘えた彼女は
白地に椿柄の浴衣
お団子ポニテを揺らして……
遠くから見ると
まるでキャリコの金魚
僕は心に
真白なポイを持って
幼子の様に駆け寄った
ねえ、何する?
あれ美味しそう!
花火も見ようね!二人並んで
これ買って!
手を繋ぎたいけど
指先で揺れる巾着や
綿菓子や
うちわや
リンゴ飴で
通せんぼされてしまう
でもキラキラ笑う彼女に
僕の目は釘付けで
そおっとポイを近付けると
ゆらゆらとその上を滑って
あちらへ行ってしまう
きっと僕は今
みっともない金魚のふん
それでもふと立ち止まってくれた彼女に
追いついて見たら
白いうなじに
ポニテのおくれ毛に隠れていた
ぴんくの模様
そして彼女の釘付けの視線の先は
大人のくせにベッタリくっ付いたカップル
「あーいうの!イヤラシイ!!」と
誰にともなく呟いて
ソッポを向いた
僕はそれで
全てが分かってしまって
涙で濡れて
開いてしまったポイの穴から
彼女のちぎれてしまった
ポイの穴を
なすすべなく
眺めていた
「なんだか胸がキューンとして……この男の子を抱きしめたい!!」
と口走ったら
黒姉から「病んでる!」と言われてしまった……(*_*;
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