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ロラン・ヘディンと運命の聖女  作者: K.S.
第四章 七人の頭目
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4-11.団長の男


「マグネイア、ジル、お前たちがいながらこうも上手くやられるとはな」


「申し訳ございません。弁明のしようもございません」


撤退した中央近衛聖兵団、副団長のマグネイアと参謀長のジルは面前の男に深々と頭を下げていた。


「構わん。失った兵は少ない。敵を叩けなかったことは確かに痛手ではあるが、お前たち精鋭部隊が生き残ったことの方が重要だ。それに交戦して敵の実力も少しは計れただろう」


二人を叱責するでもなく寛容な心で許すこの男こそ、中央近衛聖兵団団長、ゲルハルト・ハンネス・リーデルシュタイン、マグネイアとジルと比べると一回り体は小さく、端正な顔立ちだがどこか童顔だ。


「敵の実力は我々の想定を上回るかと思われます。今回交戦した敵は二部隊、ストロングトン川を挟んで対岸より弓を射かけてきた部隊と何やら金属製の札のようなもので攻撃してくる奇襲部隊です。特に危険なのは弓兵隊の方で、隊長と思しき女の弓はカーネルの頭部を吹き飛ばしました」


弽が頭部右半分を吹き飛ばした部隊長の名はカーネルというらしい。


「カーネルがやられたことは聞いた。しかしその弓使いの女は厄介だな。奇襲ならともかく、その部隊と正面からやりあうのはリスクが高すぎる。何か打開策はないか?」


これは簡単な問題ではなかった。


アンカーソンヒルは思いのほか天然の要害に守られた堅固な城だ。


ストロングトン川の存在は言うまでも無く、アンカーソンヒルがあるのは丘の上であり、常に優位な位置から戦いを進めることができるのだ。


城壁は高く分厚く、また城門も材質こそ木材であるものの金属で各所を補強された強い門だ。


つまり聖兵団がアンカーソンヒルを落とすには、①ストロングトン川を渡る、②アンカーソンヒルまで到達する、③城を落とす、の三つのプロセスを経る必要があるのだ。


城の堅固さもさることながら、川を渡ることも城下まで進軍することもそれを防ごうとする敵の妨害を受けることを考えると城を落とすことと同様に難しいだろう。


参謀たちは頭を悩ませたが、ジルがおもむろに口を開いた。


「ストロングトン川を我々が渡らなければならない以上、弓兵隊の存在は我々にとって重い足枷になります。それに敵は橋を落としているので、迂回するには一週間かかります。敵がこの迂回路を見落としているはずがありません。確実に今回と同様にどこかのタイミングで奇襲を仕掛けてくるはずです。しかし我々は大いに数で勝っております。兵站路も問題無く確保できている。数の利を十分に生かして奇襲の目を確実につぶしながら進んでいくのが良いかと。急ぐあまり敗戦しては元も子もありません」


確かにジルの作戦は理にかなっていた。


当初の想定より敵の存在が強力であったこと、それによって精鋭部隊による早期の前線押し上げに失敗したこと、さらにこれ以上敵の数が大幅に増えることは無いと見込まれること、これらを踏まえれば時間的制約の無い教皇軍の取る作戦はひとつ、確実に一歩ずつ、数で前線を押し込んでいく方法だった。


「ジルの作戦で行こう。斥候の数を三倍に増やせ。じっくり、歩兵の速度で前進するぞ。特別何もしないことで相手にも特別なことはさせない。純粋な数の力で押し切ろう」


団長の迅速な決断で三十万の兵の進むべき道が決まった。


この道は栄光につながる道か、それとも破滅へと続く道か、それは今の時点ではだれにも分からない。


ここで少しゲルハルトについて触れておこう。


ゲルハルトはその童顔と体の小ささから、パッと見た目では強烈な威厳を感じさせる人ではない。


しかし戦いとなるとその表情は全く一変する。


狂信的なまでの教皇庁への忠実さと、敵に対しては徹底した冷徹さを持ち合わせる彼は、その見た目とは裏腹に一切の容赦なく敵と認識した者を殺す。


彼の使う武器は二刀流の剣で、右手に長剣、左手に短剣を持って戦う。


そしていざ戦いになると血に飢える獣のように、獰猛に敵に襲い掛かるのだ。


彼と戦った者は口をそろえてこう言う。


神の怒りそのものだ、と。


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