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ロラン・ヘディンと運命の聖女  作者: K.S.
第四章 七人の頭目
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4-10.ストロングトン河畔の戦い②


「お前たち、背後に伏兵だ!味方が現れたことで対岸からの矢での攻撃も止んでいる!全体反転、伏兵を受け止めるぞ!」


聖兵たちが隠れていた壁の陰から立ち上がって反転する。


弽の目はそれを見逃さなかった。


ドンッという音がしてマグネイアの近くにいた部隊長の頭部の右半分が吹き飛んだ。


およそ弓矢の攻撃とは思えないその威力に思わずまた壁の陰に隠れる。


マグネイアの心臓は猛烈に早鐘を打っていた。一歩間違えれば死んでいたのは彼だった。


「なんだあの威力は…今までの攻撃とは全く違う…あれか、まさかあの女隊長の矢か。あの威力と精度では下手に頭も出せない…ジル!頭を出すな!敵の矢を食らうぞ!」


「副団長、あれは危険すぎます。ですが今の我々にはどうしようもない。ある程度の犠牲は諦めて伏兵を抜いて一人でも多く本隊と合流すべきです。このままでは伏兵と対岸の弓隊に挟まれてここの精鋭たちが全滅します、決断を」


「ジルの言う通りにしよう。全員伏兵を抜いて本隊に合流を目指せ!対岸の弓隊に一人精鋭がいる、立ち止まると狙われるぞ!とにかく伏兵を抜いて本隊と合流だ!馬がある分足はこっちの方が早い!いけ!」


マグネイアの指示が出てからの聖兵たちの動きは、流石に精鋭たちなだけあって見事なものがあった。


包囲している紫電の部隊を、細かい指示が無くとも包囲網の一か所に集中的に攻撃してその包囲が薄くなってきている。


しかし紫電の部隊もこれを簡単に逃がすほど甘くはない。


まるで俯瞰しているかのような紫電の的確な指示通りに兵たちは迅速に動き、的確にその薄くなっている部分をカバーしてほつれを繕っていく。


「なかなかやるが、この私の部隊を簡単に抜けると思ったら大違いだぞ、聖兵どもよ!私の奇襲攻撃に耐えられたのは蝶華の部隊くらいだったからな!」


紫電の部隊の鉄札は前面を固めるの盾兵の陰から変幻自在に飛んでくる。


鋭い鉄札の一撃は首や目などに当たらなければ致命傷にはならないが、甲冑で覆えないひじ、ひざの内側や脇の下を的確に攻撃してじわじわと聖兵たちの動きを鈍らせてきていた。


「どけ、俺が行く!」


マグネイアが先陣に立って巨大なハルバートを振るう。


通常のハルバートはおよそ2.5メートルから3メートルほど、彼のハルバートの長さは4.5メートルと通常よりかなり長く、斧部分の刃長も長くなっている。


身長2メートルにも達しようというマグネイアの巨躯から振り下ろされるこのハルバートは、敵から見たらまさに真上から刃が降ってくるように感じるだろう。


「俺に続け!俺があの盾兵をどうにかする!一気に突っ込んで厄介な鉄札部隊を叩け!」


振り下ろされたマグネイアのハルバートはまさに文字通り、盾兵の一人を両断した。


いかに実戦をいくつもくぐり抜けてきた紫電の部隊の盾兵と言えども、周囲の盾兵たちは盾ごと一太刀で両断された仲間を目にするのは初めてだった。


一瞬、盾兵たちがあっけに取られて動きが止まった瞬間を聖兵たちは見逃さなかった。


マグネイアが次の盾兵に武器を振り下ろすのと同時に残った聖兵がその穴に殺到、鉄札部隊の中にまで迫った。


鉄札部隊は盾兵部隊と連携して敵から一定の距離を保つことでその真価を発揮する。盾兵が抜かれた今鉄札部隊は近距離での戦いでは不利になった。


こういう事態はもちろん初めてではなく鉄札部隊の動きは見事で、状況が不利と見るや柔軟に隊の形を変えて牽制しながら敵から致命的な攻撃を受けないよう立ち回った。


聖兵たちの目的は包囲網の突破、一か所穴が開いたことでそこから聖兵たちは街道を一路退却していくことになった。


マグネイア、ジルともに無事で、聖兵たちは傷を負いながらもおよそ九割が撤退することに成功した。


紫電の部隊も大いに背を追ったが、聖兵たちの足は速くわずかな兵を討ったに留まった。


あまり深追いしなかったのは本隊に近づきすぎることで今度はこちらが背後を討たれることを懸念したからだ。


実際にこの時、聖兵は早馬を出して本隊へ状況を報告していた。


本隊はこの報告を受け取ってすぐに騎兵隊を出し、紫電が深追いしていたら騎兵隊と反転した精鋭部隊に全滅させられていただろう。


その点の嗅覚はさすがと言える。


「阿迅、どう思う?今回の敵は」


「正直、思っていたよりずっと強いですね。まぁ精鋭部隊がこの程度だってんなら本隊の兵たちは大したことないんでしょうが、そこは数でカバーしてくるはず。問題はこれだけ上手く弽姉さんと姐御の挟撃が決まったのにほとんど削れてないことですね。敵兵の死体が少なすぎる」


「やはりそう思うか。私の意見も同じだ。この戦争、厳しいものになるぞ」


紫電が阿迅と呼んだこの人物は、紫電の一番の側近の男だ。


豪快な紫電を冷静にうまくコントロールしたり、弽との間を取り持ってスムーズに連携が取れるようサポートしている、彼女の部隊には無くてはならない存在だ。


その阿迅が、紫電と同じく想定より敵が強いことに言及した。


これも踏まえて、敵と直接やりあった感触を報告しなければならない。


「全隊、船で川を渡るぞ!一度アンカーソンヒルまで後退だ!」


紫電と弽の部隊はストロングトン川を渡り一時、城へと後退した。

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