4-5.ミハイ、二度目の出立
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忍との手合わせから数日、ミハイは出立することにした。教皇庁に単独でゲリラ戦を仕掛けるつもりだった。
あわよくばヴォルデルネ騎士団や南部諸侯の残党を見つけ出して協力を仰ごうと考えていた。
「ミハイ、本当に行くのか?なにも一人で戦わなくたってこれから全面戦争になるんだ。その時お前の力が必要になる。無理することはない」
アルヴィンは心から彼女のことを心配していた。短い間とはいえ、寝食を共にした仲間だ。おいそれと行って来いと背中を押す気にはなれなかった。
「ありがと。でもあたしは決めたから。あたしはあたしの人生にケリをつける。私からなにもかも、すべてを奪い去った帝国に必ず復讐してやるんだ、刺し違えてでも…」
「ミハイ、俺も行くぞ」
ミハイにとって思いもよらない申し出だった。申し出たのはあの白拳の忍だった。
「忍さん、ダメだよ。あなたを巻き込むわけにはいかない。それにあなたを慕ってついてきてくれた部下たちにはどう説明するの?」
「そんな危険なところなら尚更だな。俺はお前の拳法に惚れたんだ。みすみす死なせられるか。部下たちにはもう伝えてある。なに、もともと俺が一番強いから首領やってただけでみんなを率いてるのは若頭の迅だ。そもそも俺は首領とかそういうのは向いてねえんだよ」
忍の意思は固いようだった。ミハイがどれだけ説得したところできっとついてくるだろう。それに部下たちがそれで納得してしまっているのだから尚更だ。
「忍さん頑固そうだもんね。わかった、ついてきてくれるなら百人力だよ。ありがとう」
「ミハイ、アルヴィンも言ってた通りだから、気を付けて行けよ。君はもう仲間だ。君が死んだら悲しい思いをする者がいることを忘れないでくれ」
ロランも心配していたが、あえて止めることはしなかった。ミハイの固い意志の前にはどんな説得も無意味だということがわかっていたからだ。
アンカーソンヒルのみんなも出てきていた。到着してからまだ日は浅いが、ミハイはその人柄と料理の腕で人々と交流を深めていた。ミハイが旅立つというので見送りに来てくれたのだった。
「それじゃあみんな、今までありがとう。元気でね。私たちも必ずやり遂げるから、みんなも絶対死なないで。私たちがただいまって帰ってこられるように」
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ミハイと忍の背が小さくなっていくのをロランとアルヴィンは城壁の上から眺めていた。
「行ってしまいましたね…。ミハイは強い。そう簡単には死なないとは思いますが、何せ今回は相手が悪い。無茶をしなければいいですが…」
「大丈夫だ。それにあの瑠璃忍がついているんだ。そう簡単に死んだりはしないさ。何としても生きて帰ってきてほしいものだな」
朝日が二人の女傑を照らし出し、草原を金色に染める中でのミハイ二度目の出立だった。




