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ロラン・ヘディンと運命の聖女  作者: K.S.
第三章 イストリア渓谷の戦い
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3-12.ロラン、帰還


ロラン達が視界にアンカーソンヒルを捉えたのはよく晴れた日の黄昏時だった。

城壁は夕焼けを反射して金色に染まり、丘をそよぐ風がまるで草原を海のように波立たせていた。

教皇庁はまだ攻めてきていない。





「先輩、ただいま戻りました」


ハロルドは信じられないとばかりに大口を開けて驚いていた。

ハロルドが驚いた理由は二つある。一つはこの最高のタイミングでロランが戻ってきたこと。もう一つはシリーンとの再会だ。それもまさかこのアンカーソンヒルで。


「ロラン、お前、本当にいいタイミングで帰ってきてくれたな…またお前の力を貸してくれ。それに、シリーン…だよな?あのころと変わらないな、本当に…」


「ハロルド、久しぶりね。あなたのことは時々耳に入っていたわ。良い統治、しているみたいね」


ハロルドが心底驚いていたのに対して、シリーンの方は意外にもあっさりしていたのがロランには何となく印象的だった。


「あんなに町を離れたくないって言っていたのに、なんだってこんな北の地にやってきたんだ?」


「私だって嫌だったわよ。でもロランがどうしても一緒に来てほしいっていうから…」


シリーンはまた頬を膨らませてむくれて見せた。


「それより先輩、教皇庁はまだ攻めてきていないんですよね?状況はどうなっているんですか?」


「一時的に連中は撤退したが、状況は芳しくない。またいつ攻めてくるか分からないし、攻撃されたら我々ではひとたまりもない。そこでだ、実はすでに手は打ってあるんだ。東国に使者を送った。流人連合国に協力を請おうと思っている」


確かに悪くない手だ。教皇庁の昨今の暴挙と比較すれば、東方諸国のどこかに救援を依頼して傘下に入った方が幾分かマシだろう。

しかし問題点は彼らがそれを承諾してくれるかどうかだ。


東方諸国とはあまりにも文化が違い過ぎる。彼らは「刀」と呼ばれる独自の剣を使って戦う。また人間性も謙虚で物静かであり、我々とは根本的に考え方が違う。

そんな彼らがはるばる西の国に来て教皇庁と戦ってくれるかどうかはある意味賭けであった。


「流人連合国なら確かに望みはあるかもしれない。あの国は我々西の国々とは戦争をしたことがありませんからね」


そもそも流人連合国はその名前の通り、世界各地から様々な理由で国を追われたり飛び出してきた者たちを受け入れている稀有な国だ。

彼らを、もともとは大盗賊の首領だった者が代表として治めている。


「すでに使節を送ってから一カ月経った。もうじき着く頃だろう。ランドルフは優秀な男だ。必ず交渉を成功させてくれると信じている」





「それで?わしらにその教皇庁とかいう輩から守ってほしいわけじゃな?」


「左様でございます、紅傘様」


使節として派遣されたミケ・ランドルフは流人連合国首長、紅傘蝶華べにがさちょうかとの謁見に成功していた。

突然現れて会うことが叶っただけでもまずは僥倖。交渉を次のステップに進めることが出来る。


「教皇庁は今や西国諸侯皆の敵でございます。表立って反抗することのできる勢力もおらず、日に日にその権力を太らせています。流人連合国に庇護して頂ければ、今後アンカーソンヒルは傘下に入ることをお約束致しましょう」


蝶華はううむと小さく唸った。

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