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ロラン・ヘディンと運命の聖女  作者: K.S.
第三章 イストリア渓谷の戦い
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3-11.黒幕




ロランは北へ向かっていた。


モエナが拘束されたことで教皇庁は周辺都市への攻撃を開始した。

遺跡群の調査は後回しだ。カーティンキーロック城が陥落した情報を入手したロランはハロルドの救援に向かうべく街道をひた走っていた。


「まったく、どうして私まで行かなくちゃいけないのよ」


シリーンもぶつぶつ言いながら同行している。情報屋としての腕だけでなく彼女は抜群に頭が切れる。同行してもらって損はない人材だ。


「つべこべ言うな、今はとにかくアンカーソンヒルに急ぐぞ。あのあたりにも教皇庁からの攻撃が加えられていてもおかしくない。無事でいてくれ、ハロルド・・・」


すでにエレンディラは通過している。あと一週間ほどあればアンカーソンヒルに到着するだろう。

現時点では教皇庁が都市を攻撃している様子は見て取れない。


ただそれでも街道を往く人々の数は明らかに減ってきている。直接被害を目にすることは無くても、攻撃の有無は明確であった。


「ロラン先生、クローナさんは無事でしょうか?アンカーソンヒルまで攻撃が及んでいなければ大丈夫だとは思いますが・・・」


この時、教皇庁の軍隊は実はすでに撤退したところであったがロラン達には知る由はない。

教皇庁にしてみれば圧倒的優位に立っているために別段急いで攻勢を仕掛ける必要もない。

兵站線を無理に伸ばしてまで進軍することはしなかったのである。


「あいつなら大丈夫だ。上手くやり過ごしているさ。それよりハロルドだ。アンカーソンヒルが攻撃されたらひとたまりもないぞ」


「教皇庁もずいぶん強硬な手段に出たね。モエナさんを拘束したからって兵士やお金が沸いて出てくるわけじゃないのに・・・」


「教皇庁のパトロンには帝国がついているわ。政治と宗教が癒着しているってわけ。金も兵士も、普通の都市が対抗できるレベルじゃないわ」


それを聞いてミハイは全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。

邪悪な帝国が邪悪な教皇庁に手を貸している。それだけでミハイにとってはその強大な敵を相手取ってでも十分に戦う理由になった。


「じゃあ、皇帝が教皇庁を支援しているってこと?」


ミハイの声は怒りに震えている。アルヴィンは大気の震えとすら感じた。それほどまでにミハイの怒りは強く、そして深かった。


「そういうことになるわね」


シリーンもそれが分かっていながらあえてつづけた。ロランはこれを黙って聞いていた。


「ロラン、今私が教皇庁と戦う理由が出来た。皇帝がバックについているんなら、教皇庁も私が倒さなきゃいけない敵だよ。拘束されたモエナは私が救い出す。どんな手を使ってでもね」


正直、モエナの救出は不可能だとロランは思っていた。聖都ベルベディアに拘置されているということは、ヴォルデルネ騎士団を壊滅させた聖兵の本体が固く守っているということだ。正面からぶつかっても必ず粉砕される。


だが・・・


「わかった、ミハイ。だが君の本当の敵は教皇庁じゃないだろう?教皇庁を倒したその先に、皇帝への復讐は本当にあるのか?」


「わからない…でも、手掛かりにはなると思う。それに私一人の力ではどうやっても皇帝を打倒することなんてできないし、手を貸してくれそうなモエナに今のうちに恩を売っとこうと思ってね」


決意を決めたミハイの表情からは怒りは消え、いたずらっぽく笑って見せた。



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