表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロラン・ヘディンと運命の聖女  作者: K.S.
第三章 イストリア渓谷の戦い
36/56

3-7.中央近衛聖兵団

モエナ・ローザ・セントディリッヒはまさに今イストリア渓谷に差し掛かろうというところだった。


「イルーカ、このままイストリア渓谷に進軍してよいものでしょうか?なにか嫌な予感がします…」


モエナはなんとなく胸の中のもやもやしたものを抱えていた。確かに軍議でも決定した通り、イストリア渓谷で正面以外から襲撃される恐れは無いとの結論は明白だ。数百メートルの断崖絶壁が左右から覆いかぶさり、日照時間も短く霧の立ち込めた不気味な土地であるイストリア渓谷は、敵にとって最も攻撃しにくい場所の一つであった。


「モエナ様、このイストリア渓谷を抜ければ大陸中心部の防衛線へはあと一息です。この渓谷であれば敵からの横撃の心配もありません。会敵する可能性があるとすれば正面からになりますが、真正面からぶつかってくれるほど敵もバカではないでしょう。後方からの挟撃も、このイストリア渓谷へはファストラッシュ城の見張りをすり抜けて到達することは不可能です。ファストラッシュ城のバルツァー侯は我々の後に教皇庁の軍が現れたら通さぬ旨、承諾を頂いています。彼らも教皇庁には決して協力的ではありませんからね」


さすがイルーカだ。考えうる攻撃には先んじて対策を打っている。イストリア渓谷では崖上も軍が待機できるような整地は無く危険もない。考えすぎかとモエナは自分で自分をなだめた。





渓谷の中は薄暗く地面もじとっと湿っている。湿度が非常に高く、兵士たちの着用する鎧にも結露した雫が付着している。そしてなにより不気味なほど静かだった。兵士たちの足音や鎧のぶつかるガチャガチャといった音以外は何も聞こえなかった。そんな静寂を破ったのは、後方の兵士の悲鳴であった。


「敵襲だ!」


しんがりからの突然のその声は渓谷内に警報のように響き渡った。霧が深くてその現場は見えないが、悲鳴だけが聞こえてくる。


「後方から襲撃!?いったいなぜ!?いえ、今は理由はいい、とにかくヴォルデルネ騎士団の主力で迎え撃ちます!コーネリアス隊、パールバラ隊は反転して私の隊と共に後ろの敵を迎撃!ほかの兵士は全速力で前方へ走りなさい!」


ヴォルデルネ騎士団の練度は並ではなく、モエナの指示からあっという間に後方迎撃の陣を組んだ。


「いきますよコーネリアス、パールバラ!後方の敵は何者か不明ですが、私たちの仲間を攻撃しているのだから敵です!殲滅しますよ!」


仲間の海をかき分けて三隊が突き進むなか、もう一隊そこに加わった。ワンヂェンの隊だ。

モエナとワンヂェンは目で合図して迎撃に向かった。


そして目の前に現れた敵を見て彼女らは目を疑った。


「教皇直属、中央近衛聖兵団…なぜこんなところに…」


中央近衛聖兵団、彼らは教皇を"守護"する目的で編成された部隊だ。


モエナのヴォルデルネ騎士団は私兵団の色合いが強いが、彼らはれっきとした教皇庁の組織の一つであり、教皇のためなら命を差し出してでも任務を全うする強い意志を持った兵団である。一人一人の武力は並みの軍隊では幹部クラスに当たる。しかしあくまで"守護"を目的とした兵団であるため、これまで戦場に姿を見せることはなかった。はずだった。


「ヴォルデルネ騎士団長、モエナ・ローザ・セントディリッヒか?我々は中央近衛聖兵団だ。貴様を反逆の咎で連行する。ほかのものは全員殺すよう教皇様より指示が出ている。おとなしく投降しろ」


「そのとおりです。私がモエナ・ローザ・セントディリッヒです。あなた方中央近衛聖兵団ともあろう方々が、教皇様がそのような指示が出ると本当にお思いですか?教皇庁は現在イグノスタスによって乗っ取られている。教皇様の言として彼が思い通りに教皇庁を動かしているのです。それでも私を捕らえますか?」


返答はなかった。その代わりにモエナに向かって刃が振り下ろされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ