3-4.水の都
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一ヶ月後・・・
ロランたちは海運都市アークァーリにいた。
南方随一の美しい都として知られるアークァーリは水の都とも呼ばれ、沿岸には巨大な港があり、数多くの船が寄港している。都市内での主な交通手段は張り巡らされた水路を使った水上交通になる。海面上昇により海水に沈んだ建物の間が水路として使われている。
彼らも例にもれず、ゴンドラと呼ばれるアークァーリの他ではあまり見られない種類のボートに乗って水路を進んでいた。時々すれ違うほかのゴンドラにはあらゆる積み荷が積まれている。それは果物であったり、きらびやかな布であったり、はたまた美しい細工の施された金属製の食器類であった。
「先生、美しい街ですねここは。先生は何度か来たことがあるんですか?」
アルヴィンがテンション高めに言った。確かにこの街は大人でもはしゃいでしまうほど美しくユニークだ。
「何度かね。三度…いや、四度だったかな」
実はロランがこの街に来るのは五度目だった。それもそのはずで、ロランも記憶にないほど過去、両親に連れられて旅をしていた時に一度立ち寄ったことがあった。その時彼は十歳だった。彼の記憶にある一番古い訪問は十八歳の時。その時彼は学生だった。ハロルドとの発掘旅行の時に立ち寄った。"古い友"とはその時に出会った。ロランはその後も数度にわたってアークァーリを訪れ、彼らは若い時代をともに過ごした。
「もう少しでつくよ。あの水路を曲がった先だ」
細い水路を曲がった路地裏、うす暗い通りだ。頭上には建物から建物に渡される形で洗濯物がいくつも干されている。その中でもひときわ日当たりの悪い建物の前でロランはゴンドラを止めた。小さな船着き場がドアのすぐ前に作られている。木製で今にも崩れ落ちそうなボロさだ。三人が降り立つとギシギシと音を立てた。
「おい、シリーン、いるか」
ドンドンとドアを叩いてロランが呼んだのはシリーンという女性。しかし音沙汰がない。
二度、三度とドアを叩いて呼び出すが相変わらず返事は無しだ。出直すか、と考えたその時ようやくドアが開いた。開いたドアから長身の女性が姿を見せた。
すらっと長く透き通るように白い肌の脚が、タイトスカートの深いスリットから艶めかしく覗いている。豊満な胸の長い谷間を隠すこともせず、胸元が大きく開いたワンピースを着ていた。三人の誰よりも身長の高いその妖艶な女こそロランの古い友人、シリーンだ。
「あら、だれかと思ったらロランじゃない、久しぶりねぇ。十年ぶりくらいかしら?ずいぶん老け込んだわね。後ろのお若いお二人はどなたかしら?紹介してくれる?」
ロラン以外の二人は圧倒されていた。推定で身長190cmはありそうだ。
「とりあえず中に入れてくれないか?この桟橋、今にも崩れ落ちそうでな」
そういうとロランは多少強引にずかずかと家に上がり込んだ。レディの家にそんなに強引に上がり込まないでよ。とかぶつぶつシリーンは文句を言っているが、ロランはそれもスルーした。アルヴィンとミハイはおずおずと上がり込んだ。




