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ロラン・ヘディンと運命の聖女  作者: K.S.
第二章 キスタミア要塞攻防戦
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2-2.キスタミア要塞

「2人とも、あれ、キスタミアじゃない??」


地平線からポツンと、城塞が顔を出している。


「あぁ、ようやくついたか、あれがキスタミアだ。戦時中だが、昔来た時と変わらないな」


近づくにつれ、その街、もとい要塞はさらに大きさを増していく。すでに両側は海岸線見えており、地峡というにふさわしい、まさに海にかかった橋のような地形になっている。たしかにこの要塞が落ちない限り、地峡を渡りきることは不可能だろう。


しかもこのキスタミア要塞は南部きっての難攻不落の要塞、反乱軍の対応をしながら貫通できるほど生易しいものではなかった。城壁にはヴォルデルネ騎士団の旗がはためいてる。


「エレンディラに負けるとも劣らない、巨大な城壁ですね…」


エレンディラの城壁も相当なものだったが、ここキスタミアは要塞都市だ。都市の規模は小さいが防衛に特化している。


「この要塞は数百年落とされていない。まさしく難攻不落の大要塞ってわけだ」


キスタミア要塞が落とされた記録は、今から600年前のエルゴス独立戦争が最後になっている。エルゴス独立政権軍がシビエラ地方全土を占領し、エレンディラの喉元までその刃を突き付け、エルゴスの圧倒的勝利に終わった戦争である。現在は自治政権が支配しているが、エルゴスは実質独立した国家として認められている。


「ねぇ、前から土煙が上がってるけど、戦闘かな?一応警戒しておいたほうがよさそうだね」


ロランとアルヴィンも荷車から身を乗り出して前方を確認した。


「ミハイ、一旦馬を止めてくれ」


荷車の揺れが止まった。ロランは遠眼鏡を取り出して土煙が上がる方に向けた。


「五騎、いや十騎だな。こっちに向かってくる。ヴォルデルネ騎士団の紋章を掲げているし、人数差もある。急に攻撃してくるということもなかろう。下手に動かずにここで彼らの到着を待とう」


十騎の甲冑騎士が猛然と突進してくる。攻撃されないだろうというだけで、確約ではないのだ。ロランとアルヴィンは慣れているから落ち着いていたが、ミハイは、正直心臓が焼き付くほどに脈打っていた。嫌な汗がこめかみの辺りににじみ出てくる。やがて十騎の騎士はそれぞれの表情が視認できるところまで近付いてきた。


「我々はヴォルデルネ騎士団、キスタミア要塞を守っている!貴公ら、斯様な戦時に何用でキスタミアに近づくか!」


1人の騎士が前に進み出て言った。ロランも返答する。


「私はロラン・ヘディン。考古学者だ。ここより南の戦火に包まれる地域には、貴重な遺跡が多数存在する。我々はその遺跡に残された先人たちの知恵を後世に伝える義務がある。貴公らの敵ではない。キスタミア要塞に入城すること、お許しいただきたい」


「そういうことであれば承った。入場を許可しよう。ただし入場の際に検問は受けていただく。よろしいか」


わかってもらえたらしい。ロランは心底ホッとした。何せ相手は誇り高き本物の騎士だ。兵士ではない。ちょっとした言葉が彼らのプライドを傷つけようものなら許可は下りなかっただろう。


「検問を受けるのは当然の道理、そちらのやり方にお任せしよう。心遣い感謝する」


こうしてキスタミア要塞への入城が暫定的にではあるが許可された。ともあれ、ロランたちが何か怪しいものを持っているわけではないし、検閲で入城が拒否されるもいうこともなかろう。大人しく騎士たちについていくと、さらに城門の前で待機する六名の騎士がいた。そのうち1人は他の騎士と甲冑の細工が若干違う。階級が高い騎士のようだ。


「止まれ!入城許可はまだ下りていない!検問を受けてもらう!」


「承知している。指示どうりにするゆえ、案内してくれ」


検問を行う部屋に案内された。彼らはプライドゆえに強い言葉を使うが、決して乱暴であったり失礼であることはない。


検問ではあらゆることを問われた。どこの出身か、どこに住まいを持つか、何の目的で南に行くのか、荷は何か、等。さらに、荷物にあったヴァンデダインにもらった二本の槍を没収された。それに関してはロランが激しく抗議し、出立の時に返還するという条件を取り付けた。検問をなんとか通り抜け、三人はいよいよキスタミア要塞に入城することができた。


「さすがに戦時であるだけあって、賑わってるってわけではないね」


商店街の店はことごとく営業時間外の札がかかったままになっており、一般人の姿は見えない。数人の騎士が巡回している。ようやく三人にも、戦時の影が現実として近づきつつあった。


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