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ロラン・ヘディンと運命の聖女  作者: K.S.
第一章 南へ
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1-11.ミハイの体術

ガァン!!ゴングが響き渡ると同時に殴りかかったのはアルヴィンの方だった。鋭いシャブがミハイを襲う。しかしミハイも負けてはいない。素早いスウェーで全てのジャブを紙一重で見切っている。


アルヴィンは一度少し距離を取った。お互いに牽制しあう。空気がピリピリと張り詰めていく。


「ミハイ姉さんがすげぇのは知ってたが、あのアルヴィンて兄ちゃんもすげぇな…」


「あぁ、あんな速いジャブ見たことねぇぜ」


今度はミハイの方から詰め寄った。低い姿勢からアルヴィンの顎に向かってまっすぐ掌底が飛ぶ。


「ッ!」


掌底はアルヴィン頬と耳を掠めた。掠ったところが火傷した時のように赤くなっている。この掌底が耳をかすめる瞬間、アルヴィンは確かにボッ!という風切り音を聞いた。


(とんでもねぇもんもってるじゃねぇか…あんなもん、まともに食らったら一撃で意識持っていかれちまう…)


ミハイは余裕の表情でアルヴィンの出方を伺っている。打とうと思えば右の掌底で避けたところに左の掌底なり蹴りなり入れられたはずだ。アルヴィンに焦りが見え始めた。さらにミハイは、人差し指を立ててかかってこいと手前に2、3度曲げて挑発した。


「くそったれがぁ!」


アルヴィンはミハイの足を払う形で高速の蹴りを繰り出した。かなり低い位置、地面すれすれをアルヴィンの脚が這う。ミハイはこんなもん、と呟いてトンッと地面を蹴る。ミハイの体がふわりと浮き上がり、アルヴィンの脚は空を切る、はずだった。


ミハイが立っていたほんの手前でアルヴィンの脚は地面を捉え、その反動で今度は反対の足が回し蹴りのようにミハイに向かって飛ぶ。空中で体制は変えられない。当たる。両の手をクッションにしてミハイは衝撃を柔らげたが、壁際まで吹き飛ばされた。


「なかなかやるじゃないの、体術としての洗練度もかなりのものね。でもまだ、練度じゃ私の方が上よ」


またアルヴィンを煽る一言。


頭に血が上り、視野はさらに狭くなる。もはやミハイ以外全く見えていない。


ミハイは壁際からゆっくりと歩いてくる。アルヴィンはミハイの一挙手一投足に集中した。


どこから攻撃が来る、どう動く、彼女をじっと見つめる。


しかし、彼女の姿はミハイの視界から突然消えた。それとほぼ同時に耳元で、終わりだな、と声が聞こえ、彼は意識を失った。


「…ヴィン、アルヴィン、アルヴィン!」


程なくして意識を取り戻したアルヴィンの視界には、心配そうに自分の名前を呼ぶロランが映っていた。周りには酒場の客たちがいる。


「先生、俺は…」


「全く、お前は周りが見えてなさすぎだ。集中しすぎだぞ。無事だったからいいものの、ミハイのハイキックが直撃したんだからな」


そうだ、ミハイ、ミハイだ。ようやくアルヴィンも状況を飲み込めてきたらしい。


「負けたん、ですね…俺は…」


「完敗だったな。途中入った蹴りは良かったが、そのあとあっという間に意識奪われたからな」


「お、目が覚めたみたいだね。よかったよかった、あんまり綺麗に入っちゃったから、心配してたんだよ」


ミハイが悪戯っぽい顔で駆け寄ってきた。ニヤニヤが止まらないといった顔をしている。


「あんた、強いな。誰に習ったんだ?その武術、腕っ節だけじゃないはずだ」


確かにミハイの体術は非常に洗練されており、攻守ともに鋭さとしなやかさを兼ね備えていた。特に最初の掌底、あれは滅多にお目にかかれるものではない。


その後のアルヴィンの蹴りを受け止めた両手での受けも地味だがなかなかできるものではない。それに最後、突然視界から消えたあれはなんだったのか。アルヴィンにはわからないことだらけだ。


「私の体術、どこかで似たようなのを見たことない?西の方に行ったことがあったらもしかしたら…」


西、西…頭の中で考えを巡らせる。西の方には何度か行ったことがあるが、現地で戦ったことはない。


「ロラン先生、何かご存知ですか?」


自分にはわからないと踏んだ彼は、世界中を旅してきたロランに答えを求めた。少し考え込む様子を見せたが、すぐにロランは答える。


「西洋諸侯の使う武術はかなり特徴的だと聞いたことがある。もしかしてそれのことかな?」


すぐに答えたロランに、彼女は驚いた様子を見せた。


「あんた、博識だね。その通り、西洋諸侯の武術さ。私はミハイ・ブランデンブルク。西国の生まれだよ」

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