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7部  やさしすぎたんだね おたがいに

携帯のアラームが6時を報せる、また同じ様な1日が始まる、シャワーを浴びタバコを吸いながら髪の毛をセットし、慌ただしくドアを締めた。

 こんな生き方を望んだ訳ないのに、受け入れている自分がいる。今夜、違う街に行って見ようつまらない事を忘れていい出逢いがある事を信じて。

 夏も終わりに近付いたある夜、少し前から通う様になった店で一人の女の子に出会った。タイプの娘だったが素っ気ない印象で、この娘は随分損をしていると思ったから

次も指名してこの娘の良いところを見つけようと思った。

 風俗は色々な女の子に入って楽しむのが一般的なイメージだが、毎回違う女の子を選んでいると僕はどんどん飽きてきて、風俗に行く回数も減っていた。最初はあんなにつれと二人でウキウキしていたのに、その風俗離れの原因は腐れ縁の連れの別れて実家に帰っていた少し病気味の彼女が腐れ縁の部屋に戻ってきて、やつの家に行けなくなった事だった。だから僕は一人でしばらく街をうろうろしたのだがなんか虚しさを感じて来ていた。だからあえて素っ気ない娘でも通っていれば心は通じるのかな? それともやはり金の(つなが)りだけなんかな? とまたどうでもよい妄想をした。



  いつまでも 変わらぬ 想いでいたいと


  思ってみるけれど  時の流れの中じゃ


  変わってゆく  僕が  目の前にある


 同年代の大学生達が三回生で来年、四回生になり、俺達の世代も世間の荒波に揉まれる時が迫ってきた。同じアトラクションの数少ない女の子の一人は短大で来年の4月から内定を貰っている企業で働くらしい、その娘は正社員で働くのに付き合っている彼氏がまだフリーターで早く正社員の仕事をして欲しいと思っているらしく、ほんま女は勝手な生き物だと思う! それならおのずと今の様な状況も考慮して付き合う事を考えればよかったのではないか? その時の二人には盛り上がり過ぎてそんな事考えなかったんだろか? その彼氏は優しいだけの男らしいからあの娘は同情で付き合っているんだとか! そんな事を言っている(うわさ)好きな奴の話しを聞いた事があった。どうでもええねんけどその娘は彼氏がいるのをわかっていて誘ってくる男と普通にデートしたりするらしい、暇やから今度確かめてみようと思っていた。悪い娘ではないし、わりと綺麗だし。



  季節は目まぐるしく巡り、あの(ひと)の心も


       目まぐるしく 移り変わる


     僕だけがあの場所に置き去りのまま


     君が違う誰かと腕を組み通りすぎる


     盛りのついた雌猫、やってらんない


 ホテルを出て駅までの道を彼女の手を握りながら歩いた

この娘は今、俺の事をどう思っているのだろうか? 好きだとも言わない俺をどう思ってるのかな? 君はどうなんだ? 彼氏がいるのに違う男とこんな事になり、君はどう思っているのかな? でもこの時の二人は二人にしか理解出来ない世界にいたんだ。

 その後数週間、彼女はバイトに来なかった、来た時のよそよそしさが凄く気になってバイト終わりに彼女のよそよそしさの理由が解った! 彼氏が車でド派手に迎えに来ていた! こいつは俺の女やねん! 誰や俺の女奪おうとする奴は!と言わんばかりの彼女の迎え方に誰もが失笑する位の待ち伏せお迎えであった。俺はそれを見て馬鹿にしたとか、勝ったとか思っていたわけではなく、ただただ彼女の心を思っていた。君の思う通りに考えてくれ、俺は君を選べる立場ではない、立派な奴でもない、仕事もちゃんとしてない、大学も行ってない、音楽の専門学校を出た才能もない音楽が好きなだけの男やから。だから彼女が彼氏の車に乗り込むのをそっと立橋の上から見送った。あの娘の彼氏はそれから毎回の様に迎えに来た。気のせいかもしれないが俺はその冷たそうな雰囲気の男に見られている様な気がしていた。将来有望な奴と彼女はいたほうが幸せなんや、俺は自分の事すら満足に説明できない奴だから、彼女は俺を選ぶわけがないのがわかっていた。彼女の彼氏はあの日を境に凄く優しく接するらしくそれをされると大概の女の人はその人の事が嫌いじゃない限り、受け入れてしまうと思う。女の子の方が現実的やからな、将来有望な男と、夢を追いかけている男、どちらを選ぶかはそんなもん決まっているやん。

 彼女が俺と話すために、彼氏の迎えを(さえぎ)ってまで

来てくれたレコード屋までのその数週間の時間、俺、いや僕はそんな自分に都合のよい理屈ばかりを自分で言い訳してすごしていた。CDを探しに来たら彼女がいて、いつも彼氏が迎えにきていてなかなか僕と会えないからと、俺の後を付けてきたのだと言う、女の子に後をつけられるなんてなんと嬉しい事なんだと言ったら爆笑していた。僕が避けていると思ったらしいし、彼女は彼氏が迎えに来るあの状況を作ってしまった自分への反省を僕にし、謝ってきた。だから俺も素直に思っている事を伝えた。自分が何もない事

良い会社に就職も出来ないし、頭もよくない、きっと君はこの先俺に失望するだけなんだと言う事をまるで小説家の如く台詞まで考えて説明したら、また爆笑していた。

 私をここまで笑わせれるのは僕だけなんだとだから大切なんだとこのまま終わりにしたくはないんだと彼女は言ってくれた。だから俺もこう言った! 彼氏と別れるなんて事しないでしばらくこのままでいられるかと! いられると返事が帰ってきたので、彼女の細い手を握って穏やかに行こうぜと言ってやった。しばらくの間、彼女が残りの学生生活を愉しく過ごせたらそれだけで良いではないかと思った


 いつかその時が来ても 笑いあった想い出だけを 


      あの暑い季節に焼き付けて


   あのそよ風が駆け抜けてゆく丘の上で


        君を待っているから

      いつか いつかその 時まで


 彼女が大学を卒業するまで僕との関係は良好に継続して

彼女が就職してからもちょくちょく逢っていたんだ。彼氏とは会ったり会わなかったりを続けていたみたいだけれど、ある日呼び出されたんだ。東京に行くと!彼氏と婚約すると!子供ができたと言う事も、僕の子供ではないときっぱり言ったけど、彼女は優しいから、俺の未来を奪いたくなくて、夢を諦めて欲しくなくて嘘をついたのかな?

 もうあれから会っていないなー、子供は何歳になったのかな?元気でやっているかな?僕は君のとの約束を守れなかったよ!ごめんな!なっ!俺を選らばなくてよかったやろ?選んでたら貧乏まっしぐらで君の白い美人の顔を台無しにさせるところだったぜっ。だから君の選択は間違いではなかったんだよ。いつか笑って会えるといいね。




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